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ウソを見破れ~Thin Lizzy, FightingのUKオリジナル [Thin Lizzy]

さて、考レコ学クイズ13の解答編である。

ウソに関連のある画像は次の二つだ。


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リム沿いが凸になっている特徴的なレーベル形状から、このレコードがフォノディスク(Phonodisc Ltd.)でプレスされたものであることがわかる。
しかし、それは、フォノディスクでカッティングされたことを意味しない。

フォノディスクは、外部のマスタリング・スタジオでカッティングされた盤をプレスすることが多いが、その場合には、マトの後に、どこでカッティングされたものであるかを、それぞれ特定の記号で刻印する。
二番目の画像で、マトの後に、Tと刻印されていることがわかるが、このTはトライデント・スタジオ(Trident Studios)を意味している。
つまり、このレコードは、トライデント・カッティングなのである。

誰がカッティングしたのかもわかる。
Side 2にこんなサインがあるからだ。


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"RAZEL"というのは、当時トライデントのエンジニアだったレイ・スタッフ(Ray Staff)が使っていた別名だ(レイさん、"RAYS"というサインを使うことが多いが、別名を使うのも好きだったようで、"RASIN"だの"RASPUTIN"だの"RAZEL"だのいろいろ別名がある)。
間違いなく、このレコードは、トライデント・カッティングだ。

ってことで、最初の画像の下の段の真ん中辺りにある"Cut at Phonodisc"がウソなのだ。


では、どうしてこんなことが起こったんだろう?

おそらく、最初はフォノディスクでカッティングが行われたのだろう。
ところが、満足できる仕上がりにならなかった。
そこで、急遽トライデントに依頼することになった。
そんなところじゃないかと思う。

"Fighting"のUKオリジナルのマトは、一番若くてもA4 / B4(送り溝に刻印されているのは、1Y//4 / 2Y//4だが、わかりやすさを優先させて、A4 /B4と表記する。)である。
A4 / B5、A5 / B4、A5 / B5といったバリエーションがあるが、いずれも初回マトだと思う。

というのも、うちの盤は、マトA4 / B5なのだが、スタンパーが1 1 3 / 1 1 2と非常に若く、しかも、あまり番号が離れていない。
これは、マト4とマト5がどちらも初回プレス時から使用されていたことを推測させる。

それはともかく、いずれにせよ、マト3まではボツになったわけで、それがフォノディスクでのカッティングだったんじゃないかと思うのである。

つまり、当初はフォノディスクでカッティングの予定だったので、ジャケットにはそのようにクレジットされたが、結果的には、トライデントでカッティングすることになったので、ジャケットにウソの表記をすることになってしまったと、そういうことなんじゃないかと思うのだ。


では、トライデント・カッティングで最終的には素晴らしい音に仕上がったのかといえば、ボクにはそうは思えない。
もともと、UK盤の場合、中低域が分厚いかわりにいまひとつヌケが良くないものがあったりするが、このレコードの音は、B面はともかく、A面(うちのはマト4)については度を越している。
アンプのトレブルを最大にあげて、ようやくまともな音になる感じだ。

まさか、うちの盤だけが変なわけじゃないよねぇ?

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考レコ学クイズ13~ウソを見破れ [考レコ学クイズ]

8月20日はフィル・ライノット(Phil Lynott)の誕生日でもある。
1日遅れだが、時差もあるし、なにせ彼はいま天国だから、世界のどこかがまだ20日なら遅れはないとも言える(そうか? 笑)。

シン・リジィ(Thin Lizzy)のレコードは、日常的に引っ張り出して聴くものも多いのだが、あえて、ふだんあまり聴かないこのレコードを引っ張り出して、お祝いすることにした。


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5作目のスタジオ・アルバム"Fighting"のUKオリジナルである。

ふだんあまり聴かないのは、内容が気に入らないからではない。
内容的にはとても良いアルバムだと思う。
気に入らないのは音である。

まぁ、でも、その話は解答編でするとして、さて、問題です。

次の4枚の画像を見て、"Fighting"のウソを見破ってください。
(ウソに関係のある画像は2枚で、他の2枚の画像はウソとは無関係です。カムフラージュのために混ぜました。)


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解答編は下記をご覧ください。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-08-22


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Robert Plant, Pictures at ElevenのUS盤 [STERLINGの仕事]

8月20日は、ロバート・プラント(Robert Plant)の誕生日である。

レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)はなにかと日常的に聴くことが多いので、しばらく聴いていなかったこのレコードを引っ張り出してお祝いしていた。


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ファースト・ソロ・アルバム"Pictures at Eleven"のUS盤(Swan Song SS 8512)である。

あまりターンテーブルに載せることのないレコードだが、なかなかどうして良いアルバムだ。
レッド・ツェッペリンぽかったり、そうでもなかったり、バラエティに富んでいる。
コージー・パウエル(Cozy Powell)がたたいているA4"Slow Dancer"とB3"Like I've Never Been Gone"が特に好きだなぁ。

この手のバンド・サウンドは、アナログのぶっとい音で聴くのが良いよね。
カッティングはSTERLINGで行われていて、そのあたりを心得たマスタリングが施されている。

録音はウェールズのロックフィールド・スタジオで行われているが、UK盤もカッティングはSTERLINGなので、手に入りにくいUK盤をわざわざ探さなくても、US盤で十分なんじゃないかと思う。

そういう意味では、日本盤(タイトルは『11時の肖像』だった。)も輸入マザー使用でSTERLINGカッティングだから、プレス品質を考えると日本盤が一番いいか。

タグ:Robert Plant
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Deep Purple, Live in Japanの真実 [ George Peckhamの仕事]

「何故、Side 4だけ輸入ラッカーが使用されなかったのか?」について、すろはん先輩が、当時の内部事情を知っている方に取材してTwitter(現X)で報告してくださったツイートを、転載させていただきました。(2024年2月10日追記)

8月19日は、イアン・ギラン(Ian Gillan)の誕生日ということで、このレコードを引っ張り出して聴いていた。


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1972年8月に行われた来日公演の模様をおさめたロック史上屈指の傑作ライブ・アルバム、ディープ・パープル(Deep Purple)"Live in Japan"(ワーナー・パイオニア P-5066~7W)である。
アルバム・タイトルは、日本盤のみ"Live in Japan"で、ほかはすべて"Made in Japan"だ。

このライブ・アルバム、もともと日本のみでリリースの予定だったらしいが、あまりにも出来が良かったために、UK本国でも間髪おかずに日本と同じ1972年12月に、アメリカでも翌月の1973年1月にリリースされた。

そんな経緯なので、来日公演をおさめたものでもあるし、日本盤には特別な意味がある。
おまけに日本盤には、UK盤と同じくジョージ・ペカム(George Peckham)がカッティングした輸入ラッカーが使用されている。
もう日本盤だけ持っていれば良さそうである。
幸いうちの盤は、グリーン・レーベルの初回盤というだけでなく、発売前月の1972年11月プレスだ。


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送り溝のPM2―Yがそれを証明している。
(一枚目をターンテーブルに載せていたので、二枚目のSide 3のPMだが、Side 1ももちろん同じである。)
日本盤だけ持っていればいいなら、それに越したことはない。

しかし、やはりそういうわけにはいかないのである。
そういうわけにはいかない決定的な事実があるのだ。

あんまり語られていない気はするが、仲間内では昔から話題になっていたことなので、おそらく多くの人が気づいているんじゃないかと思う。

さきほど、日本盤もペカムがカッティングした輸入ラッカーを使用していると書いた。
しかし、ペカムのカッティングであることを示すサインは、Side 1からSide 3までにはあるが、Side 4にはないのである。
一応書き出しておくと、送り溝のサインは次のようになっている。

Side 1 PORKY
Side 2 DELTA PORK
Side 3 PECKO
Side 4 サインなし

これは何を意味しているのだろうか。
「単にペカムがサインを忘れただけだろー」と淡い期待を抱きたい人もいるかもしれないが、ペカムがサインを忘れた例というのは記憶にない。

実際、Side 4はペカムのカッティングではなく、日本独自カッティングなのである。

さきほどPMのことを話題にしたが、PMの形式から、このレコードが東芝(当時は東芝音工)プレスであることがわかる。
自社工場を持たないワーナーは、東芝や東洋化成にプレス委託をしていたが、このレコードについてはメッキ処理からプレスまで東芝で行われている。
そして、Side 4のカッティングもおそらく東芝で行われている。

東芝では、輸入ラッカーの場合は、ラッカー・ナンバーにLがつく。
このレコードの場合も、Side 1からSide 3までのラッカー・ナンバーはLである。
ちなみに、うちの盤のSide 1からSide 3までのマト(スタンパーまで含む)は次の通りだ。

Side 1 L-A-10
Side 2 LーAー6
Side 3 LーAー6

Side 3のマトの画像を載せておこう。


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それに対して、Side 4のラッカー・ナンバーにはLが使用されていないのである。


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Side 4のマト(スタンパーまで含む)は、1ーAー11だ(光の加減でスタンパー・ナンバーの11が見えにくいが、間違いなく11である)。
Lではなく1が使用されているというのは、輸入ラッカーではないということである。
それが東芝のマトのルールだ。

実際、Side 4の音には、ペカム・カッティングのSide 1からSide 3までに聴くことができるような、うなる低域や分厚い中域が感じられない。
つまり、Side 3までは日本盤でいい(プレスの良さを考えれば、むしろ日本盤がいい)のだが、Side 4については、ペカムがカッティングしている("Peckie"というサインがある)UK盤(ドイツ盤でも良い)で聴かないとダメなのである。

面倒なんだけどね(笑)


それにしても、何故、Side 4だけ輸入ラッカーが使用されなかったのだろう?
送ってもらったものの、なんらのトラブルでダメにしちゃったんだろうか?
このあたりのことは、当時の内部事情を知っている人にしかわからないよねぇ。


2024年2月10日追記

「何故、Side 4だけ輸入ラッカーが使用されなかったのか?」について、すろはん先輩が、当時の内部事情を知っている方に取材して、Twitter(現X)で報告してくださいました。
1年近く経ってしまいましたが(ツイートは2023年2月27日)、すろはん先輩の許可を得て、転載させていただきます。
(しばらくしたら転載させていただこうと思っていたのですが、すっかり忘れてしまっていました。すみませんm(_ _)m)


【ライヴ・イン・ジャパン/カッティングの真実】


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昨年夏に想也さんから出された宿題に関し、昨年晩秋に知人である元ワーナーパイオニア洋楽ディレクターの佐藤晃彦氏に事の経緯のリサーチ」をお願いしておりました。

そして10日前に佐藤晃彦氏の主宰による同盤の特別視聴会が『下北沢/アナログ天国』にて開催された際、催事開始時間の前に、お願いしていた「事の経緯リサーチ」の取材をさせて頂きました。


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1972年当時、ワーナーパイオニアのパープル担当ディレクターは折田育造氏で(日本グラモフォンでZEP担当だった事で有名ですね。)、サブ担当が加藤正文氏だったとの事。
折田氏は既に逝去されていたので、佐藤氏の先輩にあたる加藤氏へヒアリング。

1972年パープル来日~『ライヴ・イン・ジャパン』製作/発売当時は折田氏が全てを統括していた為「正確な状況確認」は無理だったが、洋楽担当ディレクターとして「何故にSIDE.4だけ日本国内カッティングとなってしまったか?」は推測出来るとの事。

70年代後半までは本国レーベル側から指定ラッカー盤が送付される事は何件もあったが、時としてその中の一部に外周溝から音溝部分に繋がってない/針が進まないのが検知される、又は傷迄では無いが、音に出そうな突起発覚のラッカー盤があったとの事。

この盤のSIDE.4に関しては、十分にそのケースが考えられるとの事。その様な事故発覚ケースを想定し、レーベル本国からは指定ラッカー盤と伴にコピーマスター・テープが必ず同送されており、そこから諸調整して日本側でカッティングした事は何度もある。

折田育造氏が逝去されてるので完全な真実解明には至りませんでしたが、元ワーナーパイオニア洋楽担当ディレクター諸氏の見解は、ほぼコレが真実に近いと思われるとの事でした。
何故にSIDE.4にだけGeorge Peckhamのサインが無いのか?は、これが真実?


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SIDE.4日本国内カッティング時は、統括ディレクターだった折田氏が立ち合ったと思われます。又日本のカッティング・エンジニアは、海外(特に米国)カッティング・エンジニアよりもピークメーターのレッドゾーンを特に意識して作業にあたっていたとの事。

日本がピークメーターのレッドゾーンを其処まで意識していた理由は、日本のレコードの品質保全意識にあったとの事。それは、当時の日本のレコード業界に於ける返品制度の存在も非常に大きかったとの事。逆に返品制度の無い米国のカッティング・エンジニアは、レッドゾーン無視の傾向があったとの事。

また本国レーベルから指定ラッカー盤と伴にコピーマスターが必ず同送されてた事は、先程の様な事故案件の想定以外に「増産プレスが多くなり、リカッティングのラッカー盤が必要になる」or「後々にリカッティングして再発する」事も想定されてたとの事です。


すろはん先輩、ものすごく貴重な情報をありがとうございました!

タグ:DEEP PURPLE
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『透明な』(合唱バージョン) [Kitri]

新曲『透明な』のMVが公開されると聴いたときには、「映画のシーンに演奏シーンを織り込んだもの」なんだろうなと思った。
映画の公開に合わせたものだし、普通はそういう手法でMVを作るだろうなと。

ただ、告知のツイートには、「これまでにない撮影で、心に残る時間でした。」というコメントがついていた。
それで、もしかしたら、ありきたりの手法で作ったMVではないのかも・・・とは思っていたのだが・・・





こうきたかー

元合唱部Hinaちゃんの本領発揮だね。

この合唱バージョン、オリジナルのもつ涼やかさを倍増させて、心地良さがハンパないのである。

タグ:Kitri
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