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羊の声で [音楽が奏でる情景]

”あなたでも本気で怒ることってあるの?”

お酒が入って少し陽気になった彼女がそう訊いた。

”そりゃ、僕だって怒るときは怒るさ。でも、狼の血筋じゃないから、吠えるとしても羊の声でだけどね。”

”なにそれ?”

なにやらツボにはまったようで、彼女はケラケラと笑い出した。

僕と彼女は「Mr.Childrenが好き」というので意気投合したのがきっかけで親しくなった。
だから、当然通じると思ったのだが、どうやら『SUPERMARKET FANTASY』はあまり聴きこんでいないらしい。

”ミスチルに、「羊、吠える」って曲があるんだけど、知らない?”

”どんな曲だっけ?”

僕はポケットから取り出したiPodで「羊、吠える」を再生して、彼女に渡した。
彼女はイヤホンを耳に挿し込んで、じっと聴いている。
ときどきクスリと笑いながら。

聴き終えた後、まっすぐに僕の目を見ながら、彼女は笑った。

「馬鹿みたい」
ではなく、
「あなたらしい」
と言ながら。





♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪

タグ:Mr.Children
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ささやかなシアワセ [音楽が奏でる情景]

”買っちゃった!”

学食の端っこでぼんやりしていた僕に、彼女はそう言いながら『君に読む物語』のブルーレイを見せた。

彼女とボクは、1年ほど前だったか、好きな映画と音楽の話で盛り上がったのがきっかけで親しく話をするようになった。

良い映画や素敵な音楽に出逢うと、僕は真っ先に彼女に知らせたくなる。
それは、彼女も同じなんじゃないかと思う。

でも、僕たちはそれだけの関係だった。

”これまで何度観たかわからないけど、これからもきっと、ことあるごとに観るんだろうなと思って。”

”やっぱり、その映画みたいに愛されることを夢見てたりするわけ?”

”まさか!”
”現実には起こらないってわかってるから、映画の中で夢を見るの。”

彼女は、笑いながら続けた。

”現実の私は、ささやかなシアワセで満足するのです。”

”ささやかなシアワセって?”

”まず、映画を観ることでしょ。それから、好きな音楽を聴くこと。”

”それは、まったく同感。”

”あと、おいしいものを食べること!”

”くいしんぼ!”

僕は、そう言って笑いながら、心の中でつぶやいた。

”僕にとっては、こうして君に逢っている時間が、一番シアワセなんだけどな。”

少し意味ありげな顔をして微笑んだ僕を見て、彼女が、不思議そうに、微笑を返した。





♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪

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大切にすること [音楽が奏でる情景]

ランダム再生のカーオーディオから、moumoonの"Dream in Paris"が流れてきた。





     ♪ たいせつなものと たいせつそうなもの
     ♪ きみを想うと よく見えるの


「わたしのことを想うと、本当に大切なものがよく見える?」
助手席の君が、いたずらっぽく笑いながら、そう訊いた。


「君のことを想うと、”大切に思うこと”と”大切にすること”の違いについて考える。」

「何それ?」

「遠く離れていても、大切に思うことはできるけど、近くにいなきゃ、大切にすることはできない。」

「うん。」

「大切に思ったことは、僕の記憶には残るけど、大切にしなきゃ、君の記憶には残らない。」

「うん。」

「ずっと大切に思ってはいたんだよ。」

黙ったまま何も答えない君の姿が、やがて霞んで、そして消えた。
そこに残っていたのは、空っぽの助手席だけだった。



「あの頃それがわかってたら、違う今があったのかもね。」

どこからか君の声が聞こえた気がした。


♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪


タグ:moumoon
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月の綺麗な夜に [音楽が奏でる情景]

月が綺麗な夜だった。

僕と彼女はベランダに出て、満天の星の海にぽっかりと浮かぶ満月を見上げた。

「ねぇ、ワイン飲もうよ。」

彼女は、そう言うが早いか、すぐさま階下に駆け出してゆく。

いつだってそうだ。彼女は思い立ったらすぐに行動にうつす。僕の意思なんか確かめもしない。

でも、それでいい。

それがいい。

僕だって、反対のときには、ちゃんとストップをかける。

彼女にしたら、「ストップをかけられないってことは賛成よね。」って思っているのかもしれないが、実はちょっと違う。

いや、違わないのかな?

彼女が喜ぶことなら、賛成ってだけなのだけれど。



「こんなに月の綺麗な夜は、やっぱりこれよね。」

振り返ると、いつの間にか戻った彼女が差し出していたのは、クーラーの奥にしっかりと隠しておいたはずのワインだった。

「そっ、それは・・・・」

「1990年のBAROLO。こんな良いワイン、いつ手に入れたの?」

僕は、思わず黙り込む。

「これを一人で飲もうなんて、絶対ずるいっ!」

「いや・・・一人で飲もうなんて、思ってなかったけど・・・」

「あっ、この前の私の誕生日のために用意してたのに、忘れちゃったの? だったら、今飲んじゃお! 来年の誕生日まで待てないっ!」

彼女はまっすぐに僕を見つめている。僕は、再び黙り込む。



<・・・そのワインはさ、君が僕のプロポーズを受け入れてくれたときのために用意したんだよ・・・>



僕は、黙ったまま、満天の星の海に浮かぶ満月を見上げた。

「ダメなら、ダメって言えばいいのに・・・」

背後で、彼女がつぶやく声が聴こえた。



「そのワインをあけたらさ・・・・」

僕は振り返って、彼女の目を見つめる。

「オレの嫁さんにならないといけない。」



彼女は一瞬、目を丸くしたあと、いつもの笑顔にもどって、

「いいよ。」

と言った。



月を眺めながら、二人でワインをあけていると、彼女がふっと歌いだした。

 ♪ Desperado,
 ♪ Why don't you come to your senses?
 ♪ come down from your fences, open the gate.
 ♪ It may be rainin', but there's a rainbow above you.
 ♪ You better let somebody love you.
 ♪ You better let somebody love you...ohhh..hooo
 ♪ before it's too..oooo.. late.

「手遅れになる前に、愛してあげる。」

歌い終えたあと、彼女が笑いながら言った。

「オレは、ならず者かよ?」

「ならず者になっても、愛してあげる。」

僕は彼女の肩をそっと抱き寄せる。

「ならず者にはならないさ。ならず者になったら、君を幸せにできないからね。」


ワイングラスに浮かんだ月が、僕たちにウインクするように、少し、揺れた。





♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪


<この記事は、旧ブログ「君がいる風景」から加筆修正のうえ転載しています。>

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Happy or Unhappy? [音楽が奏でる情景]

”アリスに出てくる「なんでもない日おめでとう」って、Unhappy Birthdayだっけ?”


”Happy Unbirthdayだよ。Unhappy Birthdayじゃ、惨めな誕生日になっちゃう・・・”


”惨めな誕生日~”


そう言うと、彼女は吹き出した。

ケラケラケラとお腹を抱えている。

どうやら、ツボにはまったらしい。


”ところで、今日ってオレの誕生日なんだけど?”


”知ってる。Unhappy Birthday♪”


”オマエなぁ・・・・・”


”私にお祝いしてもらえなかったら、惨めな誕生日でしょ?”


そう言いながら、彼女はまたケラケラケラとお腹を抱えた。



そこで・・・・・目が覚めた・・・・・



ベッドから起き出して、僕はコーヒーを淹れる。
モカの香りが部屋を満たした。

コーヒーを飲みながら、いつもは使わないマグカップを一つ、食器棚から取り出す。
それにコーヒーを入れて、サイドボードの上の、彼女がまだ元気だった頃に二人で撮った写真の前に置いた。


写真の中と外、アリスをあしらった同じマグカップが並んでいた。


Inspired by JUJU/奇跡を望むなら





♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪

<この記事は、旧ブログ「君がいる風景」から加筆修正のうえ転載しています。>

タグ:JUJU
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