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Hello, my friend [音楽が奏でる情景]

Hello, my friend



あれが恋だったのかは定かではないけれど


好きな音楽の話や好きな映画の話で意気投合した10年前の夏から


最後に会った7年前の夏まで


いろんな思い出がよみがえってくる。



いっしょに観た映画


いっしょに聴いた音楽


いっしょに行ったライブ


いっしょに過ごした時間


ぼくたちはいつも笑っていた。



切なくて、苦しくて、涙があふれた。






淋しくて 淋しくて 君のこと想うよ

離れても 胸の奥の 友だちでいさせて


悲しくて 悲しくて 君のこと想うよ

もう二度と会えなくても 友だちと呼ばせて



♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪


タグ:森恵
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夢を見た [音楽が奏でる情景]

夕べ、夢を見た。

朝起きたときに鮮明に覚えていたから、夕べではなく、明け方に見た夢だったのかもしれない。

それは、逢うこともなくなって久しい彼女の夢だった。


彼女のことが好きだった。

それが恋だったのかどうかは、いまだに定かではないが、とてもとても好きだった。

僕たちは恋人ではなかったが、うまく説明することができない、なんだか少し特別な関係だった。


夢の中の彼女は、最後に逢ったときから確実に歳を重ねているように見えた。

外見も、物腰も、話し方も。

それでも夢の中の僕たちは、あの頃と少しも変わらない関係で、たわいもない話で笑い合った。


そこには、あの頃と同じ関係がまた始まるんじゃないか、と思わせる空気が流れていた。

少なくとも、僕はそう感じていた。


僕たちは、彼女に誘われるままに、彼女の部屋に向かった。

あの頃と同じ関係ではなく、あの頃とは違う新しい関係が始まるのか?

僕は少しドキドキしながら、彼女と並んで歩いた。


彼女の部屋にはすぐに着いた。

鍵がかかっていないらしく、彼女はそのまま玄関のドアをひく。

すると、奥から声が聴こえた。

「おかえり。」

男の声だ。

「ただいま。」

彼女は奥にそう応えたあと、

「どうぞ。あがって。」

僕に向かって、そう言った。


リビングでは、彼女と同い年ぐらいの男が、立ち上がって僕らを迎えた。

男の顔には困惑があった。

僕を見たあと、説明を求めるように彼女を見た。


「この人は、私にとって特別な人なの。あなたと結婚しても、ずっと特別な人なの。だから、あなたに紹介しておかなきゃいけないと思ったの。」

男がどんな顔をしていたかはわからない。

僕はただ、彼女の真剣な顔にみとれていた。

凛とした彼女は、とても綺麗だった。


あの頃と同じ関係で、あの頃とは違う関係を、彼女は始めたいのだ。

あぁ、そうか。

それが僕の望んでいた関係だったのか。


いつの間にか夢からさめていた僕は、ぼんやりとした頭で、そう思った。






♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪

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羊の声で [音楽が奏でる情景]

”あなたでも本気で怒ることってあるの?”

お酒が入って少し陽気になった彼女がそう訊いた。

”そりゃ、僕だって怒るときは怒るさ。でも、狼の血筋じゃないから、吠えるとしても羊の声でだけどね。”

”なにそれ?”

なにやらツボにはまったようで、彼女はケラケラと笑い出した。

僕と彼女は「Mr.Childrenが好き」というので意気投合したのがきっかけで親しくなった。
だから、当然通じると思ったのだが、どうやら『SUPERMARKET FANTASY』はあまり聴きこんでいないらしい。

”ミスチルに、「羊、吠える」って曲があるんだけど、知らない?”

”どんな曲だっけ?”

僕はポケットから取り出したiPodで「羊、吠える」を再生して、彼女に渡した。
彼女はイヤホンを耳に挿し込んで、じっと聴いている。
ときどきクスリと笑いながら。

聴き終えた後、まっすぐに僕の目を見ながら、彼女は笑った。

「馬鹿みたい」
ではなく、
「あなたらしい」
と言ながら。





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タグ:Mr.Children
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ささやかなシアワセ [音楽が奏でる情景]

”買っちゃった!”

学食の端っこでぼんやりしていた僕に、彼女はそう言いながら『君に読む物語』のブルーレイを見せた。

彼女とボクは、1年ほど前だったか、好きな映画と音楽の話で盛り上がったのがきっかけで親しく話をするようになった。

良い映画や素敵な音楽に出逢うと、僕は真っ先に彼女に知らせたくなる。
それは、彼女も同じなんじゃないかと思う。

でも、僕たちはそれだけの関係だった。

”これまで何度観たかわからないけど、これからもきっと、ことあるごとに観るんだろうなと思って。”

”やっぱり、その映画みたいに愛されることを夢見てたりするわけ?”

”まさか!”
”現実には起こらないってわかってるから、映画の中で夢を見るの。”

彼女は、笑いながら続けた。

”現実の私は、ささやかなシアワセで満足するのです。”

”ささやかなシアワセって?”

”まず、映画を観ることでしょ。それから、好きな音楽を聴くこと。”

”それは、まったく同感。”

”あと、おいしいものを食べること!”

”くいしんぼ!”

僕は、そう言って笑いながら、心の中でつぶやいた。

”僕にとっては、こうして君に逢っている時間が、一番シアワセなんだけどな。”

少し意味ありげな顔をして微笑んだ僕を見て、彼女が、不思議そうに、微笑を返した。





♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪

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大切にすること [音楽が奏でる情景]

ランダム再生のカーオーディオから、moumoonの"Dream in Paris"が流れてきた。





     ♪ たいせつなものと たいせつそうなもの
     ♪ きみを想うと よく見えるの


「わたしのことを想うと、本当に大切なものがよく見える?」
助手席の君が、いたずらっぽく笑いながら、そう訊いた。


「君のことを想うと、”大切に思うこと”と”大切にすること”の違いについて考える。」

「何それ?」

「遠く離れていても、大切に思うことはできるけど、近くにいなきゃ、大切にすることはできない。」

「うん。」

「大切に思ったことは、僕の記憶には残るけど、大切にしなきゃ、君の記憶には残らない。」

「うん。」

「ずっと大切に思ってはいたんだよ。」

黙ったまま何も答えない君の姿が、やがて霞んで、そして消えた。
そこに残っていたのは、空っぽの助手席だけだった。



「あの頃それがわかってたら、違う今があったのかもね。」

どこからか君の声が聞こえた気がした。


♪「音楽が奏でる情景」は、好きな音楽にインスパイアされて書きとめた(たぶん 笑)フィクションです♪


タグ:moumoon
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