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やっちまったなーテレホート~No SecretsのUSオリジナル [Carly Simon]

<Discogsに登録されていないマト末尾情報をご提供いただいたので、追記しました。また、Discogs情報と手持ち盤情報やご提供いただいた情報を区別するため色分けをしてみました。>(2022年5月8日22:30追記>


さて、考レコ学クイズ11の解答編である。


20220507.jpg


選択肢は次の4つだった。

1 レーベル上のSide 1とSide 2の表記を逆にしてしまった。
2 表ジャケットに"NO SECRETS”のタイトルを入れ忘れてしまった。
3 インナースリーブに歌詞を印刷するのを忘れてしまった。
4 バタフライ・レーベルではなく、69年から70年にかけて使用されたレッド・レーベルを使ってしまった。

Discogsにも、現物が登録されていないどころか、手がかりさえないので、ボクが持ってるのと同じものを持っている(少なくとも見たことがある)人にしか正解がわからない難問である。
ただ、問題文の中に、このブログの熱心な読者であれば(そんな人はいない 笑)正解に辿り着けないこともないヒントを埋め込んではある。

そのヒントとは、「紙ジャケ探検隊に、『想也さんとこには変なもんばっかり集まってくるよねー』とよく言われる」というところだ。
正解は1つだが、選択肢の4つとも、ミスそれ自体は、すべてボクのところに集まって来た「変なもん」の特徴で、不正解の3つについては、すでにこのブログで紹介済みのものなのだ。

つまり、選択肢のうち、まだ紹介されていないミスに該当するものが正解ということになる。

順に見ていこう。

1の「レーベル上のSide 1とSide 2の表記を逆にしてしまった」というミスは、Led Zeppelin IIのUS盤にそういうミスがあって、下記記事で紹介している。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2018-07-17

2の「表ジャケットに"NO SECRETS”のタイトルを入れ忘れてしまった」というミスは、井上陽水『氷の世界』に、(タイトルの方ではなくアーティスト名のほうだが)そういうミスがあって、下記記事で紹介している。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2019-09-14

4の「バタフライ・レーベルではなく、69年から70年にかけて使用されたレッド・レーベルを使ってしまった」というミスについては、レーベル変更したばかりの頃に残余レーベルを使用するという例(ボクはこれについては新説を唱えているが 笑)がUS盤に多いことは周知のところだが、変更後かなりの時間が経過した後に残余レーベルを使用する例(これは明らかなミスだろう)もあまり多くはないものの存在していて、下記記事で、デビー・ブーン(Debby Boone)"You Light Up My Life"について、変更後1年半ほど経過した後の残余レーベル使用の例を紹介している。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2018-12-17

ってことで、これまで紹介したことがないミスに該当するのは、3の「インナースリーブに歌詞を印刷するのを忘れてしまった」ミスということになる。


20220508-1.jpg


ジャケットから引っ張り出して、インナースリーブだけで並べたほうがわかりやすいが、ピットマン工場のやつとサンタマリア工場のやつが、どっちがどっちだったかわからなくなりそうなので(一応、紙に若干光沢のあるほうがピットマン工場のやつという違いはあるが)、ジャケットに入ったままでご容赦を。

テレホート工場産のこの歌詞なしインナースリーブ、「ミスではなくて歌詞が入るまえのプロトタイプだったんでは?」と思った貴方、確かにその可能性もないわけではないが、低いと思う。
なぜなら、このインナースリーブ、初回盤のインナースリーブと若干違っているからである。


20220508-2.jpg


歌詞が印刷されている(はずの)面とは反対のカーリーの写真がある面の右下のクレジット部分が、初回盤のインナースリーブは3行スペース2行スペース6行の11行だが、歌詞なしインナースリーブ(向かって一番右)も11行ではあるもののスペースがなく、最後の"The Mastering Lab"の後に"Los Angeles"が追加されている。
("PRODUCED BY RICHARD PERRY"のフォントも違っている。)

該当部分をクローズアップしてみよう。


20220508-3.jpg


このスペースなし11行"Los Angeles"追加のデザインは、翌年リリースされた4ch盤の見開きジャケットの内側で採用されたもので、その後、いつからかはわからないが、通常盤のインナースリーブもこのデザインに変わる(Discogsに登録されているSP工場プレスやAR工場プレスの明らかなレイトプレスに付属しているインナースリーブがこのデザインである)。

もちろん、最初からどちらのデザインも存在していて、4ch盤の見開きジャケットの内側で、最初ボツになったほうのデザインが使われてしまい、その後レイトでも使われたという可能性もないわけではないだろうが、低いだろう。
やはり、デザイン変更があって、レイトプレスのインナースリーブは、スペースなしの11行になったと考えておくのが無難である。
そうすると、歌詞なしインナースリーブは、レイトプレスのものということになる。
(出題の際に、1枚はオリジナルと言っていいかどうか微妙だと言ったのはこういうことだ。)

とはいえ、盤の方は、テレホート工場産もオリジナルと変わらない。
まずレーベルがWロゴなしのバタフライ・レーベルである。


20220508-4.jpg


マト的にもA3/B6なので、初回盤のバリエーションだと思う。

マトといえば、出題の際に書いたことだが、このアルバムのUSオリジナルについては、探求が頓挫している。
このレコードのマトには、REがついているものと、REがついていないものがあるのだが、それをどう考えればいいのか、よくわからないのである。

ボクが持っている盤のマトは、次のようなものだ。

ピットマン工場プレス(CP)ーWLP
Side A : EKS 75049 A6 RE6 CP
Side B : EKS 75049-B1 CP

サンタマリア工場プレス(CSM)―通常盤
Side A : EKS 75049 A5 RE CSM
Side B : EKS 75049 B5 CSM

テレホート工場プレス(CTH)ー通常盤
Side A : EKS 75049-CTH-A3
Side B : EKS-75049-B6 CTH


工場からわかるように、この頃のエレクトラはコロンビア・プレスである。
だとすると、マトもコロンビア方式だろう。
Discogsに登録されている初期盤のマトをざっと見てみても、概ねコロンビア方式に一致しているのだが、一致していないものがいくつかあるのが厄介だ。

コロンビア方式というのは、複数のラッカーを工場ごとに振り分けるもので、たとえば、A1/B1~A6/B6まで両面6枚づつラッカーを切り、A1/B1~A2/B2をピットマン工場、A3/B3~A4/B4をサンタマリア工場、A5/B5~A6/B6をテレホート工場に送る、というものだ。

Discogsに登録されている情報とそれ以外にご提供いただいた情報をマト末尾だけ工場ごとに書きだしてみよう。
(Discogsの情報は誤入力の可能性があるので、手持ち盤情報とご提供いただいた情報は青字にしておく。)


ピットマン工場
Side A : 1、RE6
Side B : 1、6

サンタマリア工場
Side A : 4RE、5RE
Side B : 45、5RE

テレホート工場
Side A : 2、3、3RE
Side B : 2、3、6


ピットマンに1と6、サンタマリアに4と5、テレホートに2と3が、概ね送られているとは言えるのだが、6はピットマンだけでなくテレホートにもあるし(ちなみに1もピットマンとテレホートの両方にあるが、テレホートの1は1 CPなので、ピットマンにあったスタンパーがテレホートに送られたものであるのに対し、6は6 CPと6 CTHが存在するのだ)、3と3RE(テレホート工場のSide A)、5と5RE(サンタマリア工場のSide B)が存在するというのも、ちょっと不可解である。

いや、まぁ、REがリミックスあるいはリマスターなら、同じ数字を使ってもいいといえばいいのだが、それなら他の数字にもREがついてるものとREがついてないものがあってもよさそうじゃないか。
どうにもよくわからないのである。

おそらくコロンビア・スタジオでカッティングされていればこんな混乱は起こらなかったと思うのだが、インナースリーブに明記されているように、このレコードの初回盤は、TMLでダグ・サックス(Doug Sax)がカッティングしている。
それで、マト末尾の番号のふり方に混乱が生じているんじゃないかと推測する。

ってことで、マト末尾の番号のふり方の混乱自体はあまり気にしていないのだが、REがついているものとREがついていないものの違いはとても気になるのである。

うちの盤は、Side BについてはすべてREがついていないし、Side Aについては、ピットマン工場プレスとサンタマリア工場プレスがREつきで、テレホート工場のみREなしである。
で、Side AのREつきとREなしを比べると、かなり音が違う。
REなしは低域が軽いかわりに高域が綺麗に伸びるポップスの風情であるのに対して、REつきは低域が重く俄然ロックっぽく鳴る。
詳細に聴き比べれば、単にマスタリング違いなのか、ミックス違いまであるのか、判別できるのかもしれないが、ボクにはまだわからない。

そもそも、このレコード、ミックス段階でかなりいろいろあったみたいだよね。
インナースリーブの例の11行のところを見ても、いきなりリミックスのクレジットになっている。

おそらく、ロンドンのTrident StudiosでRobin Cableによって録音が行われた後、ミックスダウンもそこで行われた。
ところが、その後、ロサンジェルスのSound LabsでBill Schneeがミックスをすべてやり直した。
ただ、たぶん何曲か(あるいは一曲?―「うつろな愛」のコーラスにミック(Mick Jagger)が参加した経緯と何か関係あるのかしらん?)について、追加録音があって(録音技師としてMark Berryがクレジットされている)、その録音を加えた追加のリミックスが、ロンドンのAir Studiosで再びRobin Cableによって行われた(もしくは、Robin CableによるもともとのミックスダウンがAir Studiosで行われていて、そのミックスにMark Berryによる追加録音が加えられた曲が何曲か(あるいは一曲?)あり、差し替えられた)。

例の11行クレジットのところからは、そんな経緯が浮かびあがる。

このあたりの経緯が、マト末尾のREなしとREつきに現れているのかもしれないと思うのだが、よくわからない。

だれか、詳細を御存知の方、ぜひ教えてくださいませ。

あるいは、菅沼さん、調査して教えて~

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