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Band on the Run:UKオリジナルのレーベルとインナースリーブ [Paul McCartney]

大晦日の深夜終了で、ヤフオクに興味深いアイテムが出品されていた。
ポール・マッカートニー&ウイングス(Paul McCartney and Wings)"Band on the Run"のUKオリジナル(Apple ‎PAS 10007)なのだが、なんとジャケットがラミネート・コーティングなのである。
こんなのが存在してるなんて聴いてないぞ(笑)

盤はマト1で、インナースリーブも初回仕様だったので、一瞬、「このコーティング・ジャケットが初回ジャケットなのか?」と思ったのだが、"Band on the Run"については発売から少し遅れて売れ始めたという経緯があるにしても、ポールのレコードともなればそれなりの枚数の初回プレスがあったはずで、それほどレアなはずもなく、少なくとも初回ジャケットの仕様がラミネート・コーティングだったということはないだろうと考えなおした。
(UKオリジナルのジャケットについては、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2019-12-21をご覧ください。)

それでも一万円以内なら欲しいかなぁと思っていたのだが、終了間際のアラートに導かれて現在価格を確認するとすでに一万円を超えている。
盤が、うちのマト1とまったく同じスタンパー(2 RM/3 GO)だったということもあって、その時点であきらめたのだが(一桁スタンパーだったら、かなりがんばったかも 笑)、後で「いくらまであがったのかな」と確認してみると落札価格は11,000円、それなら欲しかったぞ・・・
って、ボクが入札してたらもっとあがってたか(笑)

ってことで、もしこのブログをご覧になった方の中に落札者がいらっしゃいましたら、詳細を教えてくださいm(_ _)m
(オークション画像で見る限りは、ジャケットの作りは「後貼り天表記なし」に見えましたが、さて?)

さて、このオークションの関係で、"Band on the Run"のUKオリジナルに関する情報をDiscogsで確認してみたところ、UKオリジナルのコーティング・ジャケットに関する情報はなかったのだが(ちなみに、ラミネート・コーティングでヒットするのはギリシャ盤とジンバブエ盤のみだった)、同時に、レーベルやインナースリーブの初回仕様に関する情報も出ていないことを確認してしまった。

定説になってないの?σ^_^;

Discogsに出てないんじゃ、ボクが書くしかあるまい(笑)


ボクが持っている"Band on the Run"のアナログは、UK盤が2枚(マト1とマト2)、"Helen Wheels"を含む10曲収録のUS盤(Apple SO-3415)が1枚、日本盤が初回盤(Apple EAP 80951)と再発盤(Capitol EPS-80235)の2枚である。
(UK盤は、マト2で「後貼り天表記あり」(天表記は細くて小さいフォントに変更)のものも持っていたはずだが、見当たらないので処分してしまったのだろう。)


20200102-01.jpg


英米日盤を比較するといろいろ違いはあるのだが話が煩雑になるので、US盤や日本盤には必要な限りで言及する。


まずはレーベルである。

セカンド・プレスのレーベルはこうなっている。


20200102-02.jpg


どこに注目しないといけないかと言うと、3人のポートレイトの部分である。


20200102-03.jpg


これはもう、写真ではなく、写真をもとに書いたイラストにしか見えない。

それに対して、ファースト・プレスはこうなっている。


20200102-04.jpg


ポートレイトの部分を拡大してみよう。


20200102-05.jpg


ちゃんと写真なのだ。

ちなみに、US盤や日本盤は初回だけなく再発になってもちゃんと写真である。
(ちなみに、ポートレイトの並び順はSide 1とSide 2で違っているが、US盤と日本盤は、UK盤とはSide 1とSide 2が逆になっている。)

どうして、UK盤のみ、レイトになって、イラスト風に変更してしまったんだろう?
コストの削減か製造時間の節約(印刷時間がイラストにした方が短くなりそうでしょ?)か、どっちかの理由なんだろうなぁ。


次は、インナースリーブの話である。

セカンド・プレスのインナースリーブはこうなっている。


20200102-06.jpg


注目してほしいのは、黄色文字で「ここ」と書いてある部分だ。

この部分には、ピカソの最期の言葉に関するエピソードが書かれている。

B3の"Picasso's Last Words (Drink to Me)"には、「何についてでもすぐに曲が作れる」というポールに、ダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman)が、その場にあった雑誌からこのピカソの最後の言葉に関するエピソードの記事を選び、それを題材に曲を作ることを提案し、それを受けて、その場でささっと作られたという逸話がある。

そのときにダスティン・ホフマンが示した記事の内容が、インナースリーブに書かれているのである。

しかし、ファースト・プレスのインナースリーブには、このピカソの最期の言葉に関するエピソードはない(コーナーのカットの仕方も若干違う)。


20200102-07.jpg


これはUS盤も同じで、ファースト・プレスにはなく、セカンド・プレスから追加される。
もっとも、US盤の場合、掲載された場所は、最後ではなく、B3の"Picasso's Last Words (Drink to Me)"の歌詞の次だが。

日本盤は、再発盤になっても追加されない(笑)


以上、UKオリジナル・ファースト・プレスは、レーベル上のポートレイトがちゃんと写真になっていて、インナースリーブはピカソの最期の言葉に関するエピソードが掲載されていないもの、ということになる。

これで間違ってないと思うんだが、ホントに定説になってないの?σ^_^;

このレーベルとインナースリーブの変更が同時に行われたのか違う時点で行われたのか、その変更とマト1からマト2への移行時期とがどのように重なるのかについては、よく知らない。

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Band on the Run:UKオリジナルの初盤ジャケット [Paul McCartney]

先週の記事で、ポール・マッカートニー&ウイングス(Paul McCartney & Wings)"Band on the Run":UKオリジナル(Apple Records PAS 10007)の初盤ジャケットについて、「前貼り天表記あり」だと断定してしまったが、考えてみると、これが定説なのかどうかをボクは知らないσ^_^;

15年くらい前に、探求の結果、初盤ジャケットは「前貼り天表記あり」だと確信した(ただし、後述するように、製造ミスで「後貼り天表記なし」も存在する。)だけなのだった。

ツイッターで、「初盤ジャケットは天表記なしだと思っていた」というレスをいただいたということもあるし、よい機会なので、何故「前貼り天表記あり」が初盤ジャケットだと言えるのかについて、説明しておくことにしよう。


ここに二枚の"Band on the Run"がある。
どちらもUK盤で、一枚は両面マト1、もう一枚は両面マト2だ。


20191221-01.jpg


一方のジャケットは、「前貼り天表記あり」である。


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もう一方のジャケットは、「後貼り天表記なし」である。


20191221-04.jpg
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両面マト1は「前貼り天表記あり」のジャケットに、両面マト2は「後貼り天表記なし」のジャケットに入っていた。
しかし、単純に、だから「前貼り天表記あり」が先だと言いたいわけではない。
というのも、「後貼り天表記なし」のほうが、ジャケットの作りとしては古いからである。

「後貼り天表記なし」のジャケットは、背表紙の上端と下端が押しつぶされたようになっている、俗に「背絞り」と言われるジャケットなのだ。


20191221-06.jpg


「後貼り天表記なし」ジャケットが、この「背絞り」ジャケットであるがゆえに、こちらのほうが先、すなわち、初盤ジャケットではないかという説が出てくる。

しかし、そうではないのである。
これは、仕様が「前貼り天表記あり」に変更されたのにもかかわらず、間違えて従来のジャケットの作り方で裁断し組み立ててしまったものなのだ。

その証拠に、「後貼り天表記なし」ジャケットの裏ジャケット上端には、非常に微かにではあるが、天表記の白文字の残存が確認できるのである。


20191221-07.jpg


これは、実物でさえ目を凝らさないとわからないので、写真では気のせいだと思う人もいるかもしれない。
しかし、こちらなら、はっきりわかるだろう。


20191221-08.jpg


これは"Band on the Run"(1973年12月5日リリース)のちょっと前に出たジョン・レノン(John Lennon)"Mind Games"(Apple Records PCS 7165)のUKオリジナル(1973年10月29日リリース)で、ジャケットの作りは「背絞り」ありで「後貼り天表記なし」だが、裏ジャケットの上端には天表記の黒文字の残存が、とてもはっきり確認できる。

つまり、こういうことだ。

"Band on the Run"のUKオリジナルの初盤ジャケットは、次のような版下であり、この一種類しか存在しない。


20191221-09.jpg



この版下は、このように裁断して組み立てなければならない。


20191221-10.jpg



しかし、従来のジャケットの作り方では、次のように裁断される。


20191221-11.jpg



この裁断をして、後貼りで組み立てると、当然、天表記は跡形もなく消え去る。

しかし、ここで裁断が次のように微妙にずれると、裏ジャケット上部に天表記の残存が確認できるようになる。
こうして、はっきりと裏ジャケット上部に天表記の残存が確認できる"Mind Games"のようなジャケットが生まれるわけである。


20191221-12.jpg



というわけで、初盤ジャケットは、仕様上は「前貼り天表記あり」なのである。
もっとも、製造ミスで「後貼り天表記なし」のジャケットも存在し、これまた初盤ジャケットである。

当初のほうが間違いがたくさん起きたんだとすれば、「後貼り天表記なし」のほうが初盤ジャケットには多いということは言えそうだ。
しかし、裁断や組み立てについて、当初は明確な指示があったはずなので、最初はきちんと「前貼り天表記あり」で作っていたけれども、そのうちだんだん指示が行き渡らなくなって間違いが増えたという推測も可能なんじゃないかと思う。

どちらが真相なのかはわからないが、少なくとも仕様上は「前貼り天表記あり」が、初盤ジャケットで間違いないと思うのである。

"Band on the Run"のUKオリジナル・ファースト・プレスには、インナースリーブとかレーベルとか、ほかにもいろいろレイトとは異なる特徴があるが、たぶんすでに定説になってるよね(笑)

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