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1970年代半ばまでのUK CBSプレスにはご用心 [アナログ・コレクターの覚書]

イエス(YES)の『危機(Close to the Edge)』のUKオリジナルがらみで、一昨日の記事に書いた「UK CBSはメッキ処理が下手くそで、マトが薄く流れたようになっていると、音質的にはちょっと落ちる。」という点は、音質評価に関連してとても重要なので注意したい。

アナログ・コレクター仲間と話をしていて、同じマトなのに音質評価がずいぶん違うという経験をすることは少なくない。
音質評価は、オーディオ・システムとの相性で違ってくることもあるし、ふだん聴いている音量とも関係する(音量をあげたときに、単にうるさくなるだけの盤と素晴らしい音空間が広がる盤―これを化けるという―があるのは周知のところだろう)。

これは、盤自体がまったく同じでも生じる音質評価の違いだが、アナログは、マト(つまりラッカー)が同じでも、盤自体がまったく同じというわけではない。

まず、スタンパーまでまったく同じだったとしても、1枚目にプレスされたレコードと、1000枚目にプレスされたレコードでは、溝の劣化具合が違うから、磨耗したスタンパーでプレスされたレコードの音質は当然のことながら劣化している。

それ以前に、スタンパーが違えば、メッキ処理の回数が違うから、メッキ処理に伴う溝の劣化が音質に影響する。
メッキ処理回数が少ないレコード、つまりスタンパーが若いレコードほど、音質は良い。

このメッキ処理が下手くそということになれば、メッキ処理回数が増えることによる音質劣化は、それだけ激しくなる。

たとえば、これは『危機』のUKオリジナルのマト3(スタンパーはD11)だが、その刻印は、かなり流れたように薄くなっている。


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これは光の当て方で多少マシに見えるようになっているが、実際はもっと薄い。
ラッカーに刻印されたマトの英数字が、メッキ処理の過程で、これだけ流れたように薄くなってしまうということは、音溝だって影響を受けないわけがない。
当然のことながら、音溝も、忠実にコピーされてはおらず、かなり劣化していると思われる。
つまり、本来の音質からすれば、この盤の音はかなり劣化しているのではないかと推測される。

そんなわけで、UK CBSプレスのレコードの場合、音質がいまひとつだなぁと思っても、マトが薄くなっていたら、それは本来の音質ではないかもしれない。
だから、音質評価は、このぐらいはっきりとマトの刻印が確認できる盤でしないといけないと思っている。


20220912-2.jpg


そうそう、はっきりマトの刻印が見える場合も、ホントに本来の刻印が残っているのか確認が必要なので、そこにも注意しないといけない。

たとえば、このマト3(スタンパーはC21)は、一見したところでは、はっきりとマトの刻印が残っているように見える。


20220914-02.jpg


しかし、このマト刻印は、光の当て加減でこんな風に見える。


20220914-03.jpg


つまり、もはや判別不可能なほどに薄くなってしまったので、スタンパーにあらためて刻印したのだと思う(したがって凸刻印だ)。

ただでさえ、老眼の身には、送り溝を確認するのが厳しいのに、こんなことまで見破らないといけないというのは、過酷である(涙)

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