Milt Jackson BLP 1509の謎 [Rudy Van Gelder(RVG)の仕事]
TLに誘われて、このレコードを引っ張り出して聴いた。
ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)のBLP 1509である。
もっとも、うちにあるのはオリジナルではない。
そもそも、ブルー・ノートのオリジナルなんてそんなに持っていない。
ボクがジャズのレコードを集め始めた頃は、現在ほどとんでもない価格にはなってなかったとはいえ、それでもブルー・ノートのオリジナルといえばかなり高額だった。
どうしても欲しかったものは何とかオリジナルを手に入れたが、ほとんどはLIBERTYとかUAとかの再発を買っていた。
このレコードもLIBERTY再発である。
LIBERTYやUAの再発でも、さらには♪レーベルの再発でも、送り溝にアレがあればいいんである。
そう、ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)がカッティングしたことを示す刻印だ。
しかし、このレコードの場合、確かに刻印はあるのだが、ちょっと謎なのである。
なぜなら、この刻印だからだ。
BLP 1509がリリースされたのは1955年だから、RVGは、まだこのスタンプの刻印は使用していない。
当時はRVGと手書きされていた。
つまり、このレコードも、オリジナルは手書きRVGのはずである。
ってことは、どこかの時点でなんらかの理由で、リカッティングが行われたのだ。
うちの盤、マトがA-1/B-2というのも、リカッティングが行われたことを如実に示している。
B面の数字が進んでいるのが問題なのではなく、そもそも、1500番台のオリジナルの場合、マトはA/Bで終っていて数字はつかない。
うちのLIBERTY再発は、オリジナルで使用されたラッカー由来のスタンパーではなく、リカッティングされたラッカー由来のスタンパーでプレスされたものであることは確実なのである。
では、いつ、どんな理由で、リカッティングが行われたんだろう?
Discogsを見ると、時期的には、NEW YORKレーベル時代にすでにA-1/B-2マトが登場している。
47 WEST 63rd NYCレーベル時代にはまだ登場してなさそうだ。
問題は、リカッティングした理由である。
リカッティングが必要なほど、つまり、最初にカッティングしたラッカー由来のスタンパーを使いきってしまうほど売れたんだろうか?
いやぁ、そんなことはないんじゃないかなぁ。
まったく売れなかったのなら、リカッティングもしないだろうから、それなりに売れてはいたんだと思うけど。
実際、Discogsを見ても、オリジナルのLexingtonレーベルから、47 WEST 63rd New York 23レーベルの盤、47 WEST 63rd NYCレーベルの盤、NEW YORKレーベルの盤が確認できる。
継続的に売れていたんである。
とはいえ、スタンパーを使い切るほど売れていたとも思えないのだが・・・
では、ほかにどんな理由が考えられるだろう?
このレコード、10インチでリリースされた"Wizard of Vibes"(Blue Note LP 5011)に収録されていた8曲に4曲を加えて再構成したもので、録音はRVGではない。
ジャケット裏に書いてあるように、BLP 1509のオリジナルからして、RVGのリマスターなのである。
もしかして、最初のリマスタリングに、RVG自身、何か不満があったんだろうか?
いや、不満があったとしたら、ライオン(Alfred Lion)か?
もし、そうだとすると、オリジナルよりもNEW YORKレーベル以降のレイトの音ほうが、ライオンの望んだ音だということになる。
そうだといいなー(笑)
まぁ、でも、素直に考えれば、品質を考えて、一枚のラッカーから作るスタンパーを制限していたために、スタンパーが足りなくなったってところかなぁ。
そうだとすると、ジミー・スミス(Jimmy Smith)とか、ばんばんラッカー切ってそうだよね。
それにしても、いつか、手書きRVGのオリジナルと聴き比べてみたいのである。
自分でオリジナルを買うつもりはないけどさ(笑)
ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)のBLP 1509である。
もっとも、うちにあるのはオリジナルではない。
そもそも、ブルー・ノートのオリジナルなんてそんなに持っていない。
ボクがジャズのレコードを集め始めた頃は、現在ほどとんでもない価格にはなってなかったとはいえ、それでもブルー・ノートのオリジナルといえばかなり高額だった。
どうしても欲しかったものは何とかオリジナルを手に入れたが、ほとんどはLIBERTYとかUAとかの再発を買っていた。
このレコードもLIBERTY再発である。
LIBERTYやUAの再発でも、さらには♪レーベルの再発でも、送り溝にアレがあればいいんである。
そう、ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)がカッティングしたことを示す刻印だ。
しかし、このレコードの場合、確かに刻印はあるのだが、ちょっと謎なのである。
なぜなら、この刻印だからだ。
BLP 1509がリリースされたのは1955年だから、RVGは、まだこのスタンプの刻印は使用していない。
当時はRVGと手書きされていた。
つまり、このレコードも、オリジナルは手書きRVGのはずである。
ってことは、どこかの時点でなんらかの理由で、リカッティングが行われたのだ。
うちの盤、マトがA-1/B-2というのも、リカッティングが行われたことを如実に示している。
B面の数字が進んでいるのが問題なのではなく、そもそも、1500番台のオリジナルの場合、マトはA/Bで終っていて数字はつかない。
うちのLIBERTY再発は、オリジナルで使用されたラッカー由来のスタンパーではなく、リカッティングされたラッカー由来のスタンパーでプレスされたものであることは確実なのである。
では、いつ、どんな理由で、リカッティングが行われたんだろう?
Discogsを見ると、時期的には、NEW YORKレーベル時代にすでにA-1/B-2マトが登場している。
47 WEST 63rd NYCレーベル時代にはまだ登場してなさそうだ。
問題は、リカッティングした理由である。
リカッティングが必要なほど、つまり、最初にカッティングしたラッカー由来のスタンパーを使いきってしまうほど売れたんだろうか?
いやぁ、そんなことはないんじゃないかなぁ。
まったく売れなかったのなら、リカッティングもしないだろうから、それなりに売れてはいたんだと思うけど。
実際、Discogsを見ても、オリジナルのLexingtonレーベルから、47 WEST 63rd New York 23レーベルの盤、47 WEST 63rd NYCレーベルの盤、NEW YORKレーベルの盤が確認できる。
継続的に売れていたんである。
とはいえ、スタンパーを使い切るほど売れていたとも思えないのだが・・・
では、ほかにどんな理由が考えられるだろう?
このレコード、10インチでリリースされた"Wizard of Vibes"(Blue Note LP 5011)に収録されていた8曲に4曲を加えて再構成したもので、録音はRVGではない。
ジャケット裏に書いてあるように、BLP 1509のオリジナルからして、RVGのリマスターなのである。
もしかして、最初のリマスタリングに、RVG自身、何か不満があったんだろうか?
いや、不満があったとしたら、ライオン(Alfred Lion)か?
もし、そうだとすると、オリジナルよりもNEW YORKレーベル以降のレイトの音ほうが、ライオンの望んだ音だということになる。
そうだといいなー(笑)
まぁ、でも、素直に考えれば、品質を考えて、一枚のラッカーから作るスタンパーを制限していたために、スタンパーが足りなくなったってところかなぁ。
そうだとすると、ジミー・スミス(Jimmy Smith)とか、ばんばんラッカー切ってそうだよね。
それにしても、いつか、手書きRVGのオリジナルと聴き比べてみたいのである。
自分でオリジナルを買うつもりはないけどさ(笑)
LIBERTYレーベルの真実~Herbie Hancock, Maiden Voyage [Rudy Van Gelder(RVG)の仕事]
ハービー(Herbie Hancock)の『処女航海』スペシャル・パフォーマンス@東京JAZZ、実に美しい演奏で、素晴らしかったなぁ・・・
映像もとても美しくて良かったよね。
さて、前の記事にも書いたように、うちにある"Maiden Voyage”はLIBERTYレーベルの再発ステレオ盤(BLUE NOTE BST 84195)である。
画像にも映っているように、送り溝には、もちろんVAN GELDER刻印はあるが(UAレーベル再発の最初の頃まである)、耳マークはない。
前の記事にも書いたように、うちの盤はちょっと歪みっぽいので、そのうちオリジナルのモノ盤が欲しいなぁとは思っていたのだが、内容的にものすごく好きなのに、すぐにでも手に入れようと血眼になるようなことがなかったのには理由がある。
”Maiden Voyage”のオリジナルがNEW YORKレーベルなのはわかっていたが、BLUE NOTEがLIBERTYに売却されたのは1965年である。
”Maiden Voyage”も1965年のリリースだ(リリース日が不明なのだが、65年3月17日に録音されているので、65年中にリリースされたのは確実だと思う)。
つまり同じ年なのである。
ってことは、確かにNEW YORKレーベルがオリジナルではあるものの、すぐにLIBERTYレーベルに切り換わったとすると、セカンド・レーベルとはいえ、音質的には大差ないのではないかと思った。
しかも、うちのはステレオ盤である。
1965年~66年といえば、まだモノ盤が主流で、ステレオ盤のプレス枚数はそれほど多くなかったんじゃないかと思う。
だとすると、LIBERTYレーベル初期のステレオ盤は、音質的には「大差ない」どころか「ほとんど変わらない」可能性さえあると思った。
しかし、ボクはひとつ、大きな勘違いをしていた。
どうやら、NEW YORKレーベルからLIBERTYレーベルへの切り換えは、1965年にLIBERTY傘下に入ってすぐに行われたわけではないようなのである。
世間一般には1966年に切り換えが行われたように言われていたので、1966年初頭から切り換えられたと思い込んでいたのだが、初頭どころか66年中でさえなく、もしかしたら、67年になってからかもしれない。
小川隆夫さんの『ブルーノート・コレクターズ・ガイド』(初版)によると、NEW YORKレーベルは4253まで(と4256)で、4255から(4254は80年代までリリースされなかった)LIBERTYレーベルに切り換わったとされている(改訂版で修正されてたらごめんなさい)。
実際、Discogsでも、(4256や4253や4251では確認できないが)4252や4250のNEW YORKレーベルの存在を確認することができる。
これらはいずれも1967年リリースである。
つまり、NEW YORKレーベルは、67年初頭まで使用されていたのだ。
ってことは、やっぱり、LIBERTYレーベルへの切り換えは、67年初頭だったんじゃないかと思うのである。
さて、では、うちのLIBERTYレーベルのステレオ盤はいつ頃のプレスだったのかというと、どうやら切り換わったばかりの頃のプレスのようだ。
うちのは直輸入盤に解説を付けて国内販売されたもののようだが、LIBERTYのCSに掲載されているブルーノートのレコードは、4250のホレス・シルヴァー(Horace Silver)"The Jody Grind"までだからである。
66年初頭のプレスじゃないかという期待は木端微塵に砕け散ったが、67年初頭のLIBERTY切り換え時のプレスではありそうで、ちょっとほっとしている。
実際、M44-7で歪みなく再生すれば、LIBERTY再発盤とはいえ、うちの盤、ホント、素晴らしい音で鳴るんだよ。
映像もとても美しくて良かったよね。
さて、前の記事にも書いたように、うちにある"Maiden Voyage”はLIBERTYレーベルの再発ステレオ盤(BLUE NOTE BST 84195)である。
画像にも映っているように、送り溝には、もちろんVAN GELDER刻印はあるが(UAレーベル再発の最初の頃まである)、耳マークはない。
前の記事にも書いたように、うちの盤はちょっと歪みっぽいので、そのうちオリジナルのモノ盤が欲しいなぁとは思っていたのだが、内容的にものすごく好きなのに、すぐにでも手に入れようと血眼になるようなことがなかったのには理由がある。
”Maiden Voyage”のオリジナルがNEW YORKレーベルなのはわかっていたが、BLUE NOTEがLIBERTYに売却されたのは1965年である。
”Maiden Voyage”も1965年のリリースだ(リリース日が不明なのだが、65年3月17日に録音されているので、65年中にリリースされたのは確実だと思う)。
つまり同じ年なのである。
ってことは、確かにNEW YORKレーベルがオリジナルではあるものの、すぐにLIBERTYレーベルに切り換わったとすると、セカンド・レーベルとはいえ、音質的には大差ないのではないかと思った。
しかも、うちのはステレオ盤である。
1965年~66年といえば、まだモノ盤が主流で、ステレオ盤のプレス枚数はそれほど多くなかったんじゃないかと思う。
だとすると、LIBERTYレーベル初期のステレオ盤は、音質的には「大差ない」どころか「ほとんど変わらない」可能性さえあると思った。
しかし、ボクはひとつ、大きな勘違いをしていた。
どうやら、NEW YORKレーベルからLIBERTYレーベルへの切り換えは、1965年にLIBERTY傘下に入ってすぐに行われたわけではないようなのである。
世間一般には1966年に切り換えが行われたように言われていたので、1966年初頭から切り換えられたと思い込んでいたのだが、初頭どころか66年中でさえなく、もしかしたら、67年になってからかもしれない。
小川隆夫さんの『ブルーノート・コレクターズ・ガイド』(初版)によると、NEW YORKレーベルは4253まで(と4256)で、4255から(4254は80年代までリリースされなかった)LIBERTYレーベルに切り換わったとされている(改訂版で修正されてたらごめんなさい)。
実際、Discogsでも、(4256や4253や4251では確認できないが)4252や4250のNEW YORKレーベルの存在を確認することができる。
これらはいずれも1967年リリースである。
つまり、NEW YORKレーベルは、67年初頭まで使用されていたのだ。
ってことは、やっぱり、LIBERTYレーベルへの切り換えは、67年初頭だったんじゃないかと思うのである。
さて、では、うちのLIBERTYレーベルのステレオ盤はいつ頃のプレスだったのかというと、どうやら切り換わったばかりの頃のプレスのようだ。
うちのは直輸入盤に解説を付けて国内販売されたもののようだが、LIBERTYのCSに掲載されているブルーノートのレコードは、4250のホレス・シルヴァー(Horace Silver)"The Jody Grind"までだからである。
66年初頭のプレスじゃないかという期待は木端微塵に砕け散ったが、67年初頭のLIBERTY切り換え時のプレスではありそうで、ちょっとほっとしている。
実際、M44-7で歪みなく再生すれば、LIBERTY再発盤とはいえ、うちの盤、ホント、素晴らしい音で鳴るんだよ。
Chet Baker, She Was Too Good To Me [Rudy Van Gelder(RVG)の仕事]
去年の秋頃、ラジオから流れてきた"Autumn Leaves"を聴いて、チェット・ベイカー(Chet Baker)の"She Was Too Good To Me”のUSオリジナル(CTI Records CTI 6050 S1)がどうしても欲しくなった。
USオリジナルといっても、70年代半ばのCTIレーベルのレコードだから、Discogsの出品を見ても、美品でも現地価格30~40ドルといったところなのだが、アメリカからの送料を考えると総額は6000~7000円になる。
これはCTIのレコードに出す金額としてはちょっと高い。
(個人の感想です 笑)
そんなわけで国内での出会いに期待していたのだが、国内に流通しているのは当然ながら圧倒的に国内盤である。
なかなかUSオリジナルにはめぐりあわない。
結局、手に入れるまでに半年ほどかかってしまった。
今回手に入れたのは、惚れ惚れするくらいの美品である。
CSの抜けさえない(笑)
しいてあげるとすれば、ジャケットの端に一か所、コーティングの浮きがあるが、もともと美品コレクターではないボクにはまったく気にならない。
ところで、このレコードのジャケット、手に入れるまでは、何か抽象的なイメージかと思っていたのだが、女性?の横顔だったのね。
チェットの哀愁にみちたトランペットが切ない”Autumn Leaves"ももちろん良いのだが、このアルバムはやっぱりタイトル曲"She Was Too Good To Me"がいいよねぇ・・・
男はいつも身勝手で、失ってはじめて、いつもそばにいてくれた彼女の大切さに気づくもの・・・
あっ、こういうのは、男に限らないか(笑)
このレコードには手持ちのカートリッジではSPU-GTが一番合ってるかなぁ?
ところで、今回入手したレコードは、両面VAN GELDER刻印なのは当然として、マトがA-4 RE/B-3 REなんである。
Discogsを見ても、これより若いマトは出ていないんだが、A-4 RE/B-3 REが初回マトでいいんだろうか?
何かご存知の方は、ぜひ教えてくださいませm(_ _)m
USオリジナルといっても、70年代半ばのCTIレーベルのレコードだから、Discogsの出品を見ても、美品でも現地価格30~40ドルといったところなのだが、アメリカからの送料を考えると総額は6000~7000円になる。
これはCTIのレコードに出す金額としてはちょっと高い。
(個人の感想です 笑)
そんなわけで国内での出会いに期待していたのだが、国内に流通しているのは当然ながら圧倒的に国内盤である。
なかなかUSオリジナルにはめぐりあわない。
結局、手に入れるまでに半年ほどかかってしまった。
今回手に入れたのは、惚れ惚れするくらいの美品である。
CSの抜けさえない(笑)
しいてあげるとすれば、ジャケットの端に一か所、コーティングの浮きがあるが、もともと美品コレクターではないボクにはまったく気にならない。
ところで、このレコードのジャケット、手に入れるまでは、何か抽象的なイメージかと思っていたのだが、女性?の横顔だったのね。
チェットの哀愁にみちたトランペットが切ない”Autumn Leaves"ももちろん良いのだが、このアルバムはやっぱりタイトル曲"She Was Too Good To Me"がいいよねぇ・・・
男はいつも身勝手で、失ってはじめて、いつもそばにいてくれた彼女の大切さに気づくもの・・・
あっ、こういうのは、男に限らないか(笑)
このレコードには手持ちのカートリッジではSPU-GTが一番合ってるかなぁ?
ところで、今回入手したレコードは、両面VAN GELDER刻印なのは当然として、マトがA-4 RE/B-3 REなんである。
Discogsを見ても、これより若いマトは出ていないんだが、A-4 RE/B-3 REが初回マトでいいんだろうか?
何かご存知の方は、ぜひ教えてくださいませm(_ _)m
タグ:Chet Baker
初盤道に触発されて・・・ [Rudy Van Gelder(RVG)の仕事]
レコード・コレクターズ10月号の発売まで10日もないこの時期になって、9月号がらみの話題である。
というのも、9月号掲載の初盤道第41回に触発されて発注したレコードが、ようやくアメリカから届いたからだ。
「初盤道第41回で取り上げられてたのはジョビン(Antônio Carlos Jobim)の"Wave"(A&M LP2002(mono)/SP3002(stereo))なんだから、そっちを買えよ」って声が聴こえてきそうだが、"Wave"については購入予定リストに入っているものの、実は聴いたことがないので、「どうしても欲しい~」モードにスイッチが切りかわらない(笑)
一方、"Wave"と双子みたいなレコードであるウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)の"A Day in the Life"(モナーク工場のメッキ処理番号を見ると、"Wave"のモノラル盤△10832→"A Day in the Life"のモノラル盤△10833→"Wave"のステレオ盤△10834→"A Day in the Life"のステレオ盤△10835となっていて、両者の製造が同時に進められたことがわかる)については、以前にもこのブログで取り上げたことがあるように(https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2019-04-29をごらんください)、ずっとボクの愛聴盤である。
ずっと愛聴盤なのだが、RVG録音&カッティングとはいえ、これをモノラル盤で聴きたいと思ったことはなかった。
しかし、紙ジャケ探検隊は、"Wave"のモノラル盤を「レコードという形態での一つの完成形」「ジャズの魂が宿っている」とまで評した。
この評に触れて、"Wave"のモノラル盤を聴いてみたくもなったのだが、どうしても聴いてみたい衝動にかられたのは、"A Day in the Life"のモノラル盤の方である。
なにせ"Wave"とは双子みたいなレコードだ。
"A Day in the Life"のモノラル盤だって、「レコードという形態での一つの完成形」で「ジャズの魂が宿っている」に違いない。
ということで、"A Day in the Life"のモノラル盤(A&M LP2001)なのである。
下にずらして裁断すれば上にステレオ表記が現れ、上にずらして裁断すれば下にモノラル表記が現れる、この頃の典型的な作りのジャケットだ。
モノラル表記が現れる下部を拡大しておこう。
このレコードにもコロンビア・カットが存在するが、ボクが手に入れたのはもちろんRVGカットである。
「レコードという形態での一つの完成形」で「ジャズの魂が宿っている」のはRVGカットの方なんだから、VAN GELDER刻印は絶対になきゃいけないんである。
まぁ、ボクが入手したのはWLPなので、たぶんRVGカットしか存在しない。
しかーし・・・
これは、どう見ても、モナーク工場のWLPではない。
レーベルは光沢がないザラっとした紙質だし、ロゴに輪郭もない。
送り溝には△10833もMR刻印もない。
送り溝に刻まれているのは、CTLP-2001 CT 2001/CTLP-2001 CT 2002という手書き文字と、Side 1に11-/Side 2に1-という手書きの数字?だけである。
西海岸のWLPがモナーク工場で製造されたとすると、これは東海岸で製造されたWLPなのか?
そう思ってセラーの住所を確認すると、コロラド州デンバーである。
ってことは中部で製造されたWLP?
いずれにせよ、この時期のA&Mのプレス工場は、モナーク工場しか頭になかったので、完全に想定外であったが、ターンテーブルに載せて聴いてみれば、出てくる音はまさにRVGのモノラル・カッティングの音である。
実に暑苦しい、ジャズの熱が伝わってくる。
「モナーク工場以外のWLPなんて、コレクションとしても、ちょうどいいか」なーんてことも思い始めた。
音がよければ、何でも受け入れてしまうのだ(笑)
でも、これって、どこの工場で製造されたものなんだろ?
とりあえず、素性が知りたいと思う今日この頃なのである。
というのも、9月号掲載の初盤道第41回に触発されて発注したレコードが、ようやくアメリカから届いたからだ。
(二枚写っているが、一枚は以前から持っていたステレオのプロモ盤。)
「初盤道第41回で取り上げられてたのはジョビン(Antônio Carlos Jobim)の"Wave"(A&M LP2002(mono)/SP3002(stereo))なんだから、そっちを買えよ」って声が聴こえてきそうだが、"Wave"については購入予定リストに入っているものの、実は聴いたことがないので、「どうしても欲しい~」モードにスイッチが切りかわらない(笑)
一方、"Wave"と双子みたいなレコードであるウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)の"A Day in the Life"(モナーク工場のメッキ処理番号を見ると、"Wave"のモノラル盤△10832→"A Day in the Life"のモノラル盤△10833→"Wave"のステレオ盤△10834→"A Day in the Life"のステレオ盤△10835となっていて、両者の製造が同時に進められたことがわかる)については、以前にもこのブログで取り上げたことがあるように(https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2019-04-29をごらんください)、ずっとボクの愛聴盤である。
ずっと愛聴盤なのだが、RVG録音&カッティングとはいえ、これをモノラル盤で聴きたいと思ったことはなかった。
しかし、紙ジャケ探検隊は、"Wave"のモノラル盤を「レコードという形態での一つの完成形」「ジャズの魂が宿っている」とまで評した。
この評に触れて、"Wave"のモノラル盤を聴いてみたくもなったのだが、どうしても聴いてみたい衝動にかられたのは、"A Day in the Life"のモノラル盤の方である。
なにせ"Wave"とは双子みたいなレコードだ。
"A Day in the Life"のモノラル盤だって、「レコードという形態での一つの完成形」で「ジャズの魂が宿っている」に違いない。
ということで、"A Day in the Life"のモノラル盤(A&M LP2001)なのである。
下にずらして裁断すれば上にステレオ表記が現れ、上にずらして裁断すれば下にモノラル表記が現れる、この頃の典型的な作りのジャケットだ。
モノラル表記が現れる下部を拡大しておこう。
このレコードにもコロンビア・カットが存在するが、ボクが手に入れたのはもちろんRVGカットである。
「レコードという形態での一つの完成形」で「ジャズの魂が宿っている」のはRVGカットの方なんだから、VAN GELDER刻印は絶対になきゃいけないんである。
まぁ、ボクが入手したのはWLPなので、たぶんRVGカットしか存在しない。
しかーし・・・
なんじゃこりゃぁ!?
これは、どう見ても、モナーク工場のWLPではない。
レーベルは光沢がないザラっとした紙質だし、ロゴに輪郭もない。
送り溝には△10833もMR刻印もない。
送り溝に刻まれているのは、CTLP-2001 CT 2001/CTLP-2001 CT 2002という手書き文字と、Side 1に11-/Side 2に1-という手書きの数字?だけである。
西海岸のWLPがモナーク工場で製造されたとすると、これは東海岸で製造されたWLPなのか?
そう思ってセラーの住所を確認すると、コロラド州デンバーである。
ってことは中部で製造されたWLP?
いずれにせよ、この時期のA&Mのプレス工場は、モナーク工場しか頭になかったので、完全に想定外であったが、ターンテーブルに載せて聴いてみれば、出てくる音はまさにRVGのモノラル・カッティングの音である。
実に暑苦しい、ジャズの熱が伝わってくる。
「モナーク工場以外のWLPなんて、コレクションとしても、ちょうどいいか」なーんてことも思い始めた。
音がよければ、何でも受け入れてしまうのだ(笑)
でも、これって、どこの工場で製造されたものなんだろ?
とりあえず、素性が知りたいと思う今日この頃なのである。
Wes Montgomery, A Day in the LifeのUSオリジナル [Rudy Van Gelder(RVG)の仕事]
さて、考レコ学クイズ5の解答編である。
正解は、3の「1968年にカリフォルニアのモナーク工場で製造されたセカンド・プレス」だ。
まぁ、レーベル画像だけでは、1968年産であることまでは判定できない(1968年~1973年の間に製造されたものであることまでしかわからない)のだが、択一問題だからいいのである(笑)
では、解説にうつろう。
まず、このブログの読者であれば、A&Mロゴの大きさからモナーク工場産であることを導けるはず(わからない方は、「Carpenters, Now & ThenのUSオリジナル」の記事https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2019-02-10をご覧ください)だから、答えは1か3に限定される。
問題は、ファースト・プレスかセカンド・プレスかである。
このレコードには、MONO盤(A&M Records LP-2001)もあるが、リリースされたのが1967年の後半のこと(リリース月までわからないのだが、録音は6月に行われている)なので、MONO盤にもセカンド・プレスがあるかどうかはわからない。
少なくともDiscogsには1968年以降に製造されたセカンド・プレスは掲載されていない。
一方、STEREO盤(A&M Records SP-3001)のほうは、1974年にレーベルがシルバー・グレイに切り替わるまでのブラウン時代でも、少なくともサード・プレスまでは区別する必要があるので、厄介だ。
ボクは、20年くらい前に、まず、ロックのオリジナル盤を集め始め、しばらく経ってからジャズのオリジナル盤にも手を出し始めたのだが、最初は、レーベルとMatrixしか気にしていなかった。
だから、このサード・プレスもオリジナルだと思って買ったんである。
ブラウン・レーベルでMatrix末尾は両面P1だ。
(これはSide 1のRunoutだが、Side 2も同じくMatrix末尾はP1である。)
しかし、「ブラウン・レーベルでマト1なんだからファースト・プレスに違いない」なんていうのは浅はかな思い込みにすぎない。
これは間違いなくサード・プレスである。
別にサード・プレスでも音が良けりゃいいんだが、このレコードは、サード・プレスじゃダメなんである。
このブログの読者であれば、ボクが最初に手に入れたのが、レーベルのA&Mロゴの大きさとP1というMatrix末尾から、コロンビア・レコードのピットマン工場プレスだということはすぐにわかったかと思うが、別にピットマン工場産だからダメというわけではない。
確かに、A&Mは西海岸の会社だから、モナーク工場産が良さそうだが、別にピットマン工場産でもアレがあればいいのだ。
しかし、このサード・プレスには、アレがないんである。
(サード・プレスの内ジャケットから、RVG録音であることのクレジット。)
そう、オリジナルがRVG(Rudy Van Gelder)録音でRVGカッティングである以上、レイトプレスで満足するにしても、最低限VAN GELDER刻印がRunoutになきゃいけないのだが、このMatrix末尾両面P1盤のRunoutにはVAN GELDER刻印がないのだ。
もうこれは絶対にダメである。
それに、ジャケットも違うのだ。
このレコードのオリジナル・ジャケットは、艶消しラミネート・コーティングされていて、吸い殻画像ともあいまって何とも雰囲気のある風情なのだが、このサード・プレスはラミネート・コーティングされていないのである。
ジャケットの内側も、オリジナルはカーキ色なのだが、サード・プレスは真っ白だ。
何もかもダメである。
ブラウン・レーベルだから1973年までのプレスであること(ゴールドマインの簡易レーベルガイドによる)は間違いないのだが、もう73年ギリギリのプレスに違いない。
そう思ってCSを見ると、住所がBeverly Hills, California 90213になっている。
A&MがBeverly Hillsに本拠を移転したのは1973年なので、ほら、やっぱり1973年産じゃないか。
そんなわけで、これはもう聴く前からダメなことがわかる。
実際、聴いてみても、RVGらしく鳴らないという以前に、マスターの劣化をひしひしと感じるもので、とうてい満足できるものではないのだ。
だから、すぐさまVAN GELDER刻印のある盤を探した。
A&Mは西海岸の会社だから、二枚目ということもあるしモナーク工場産がいい。
売れたレコードなので、VAN GELDER刻印のあるブラウン・レーベルでモナーク工場産、艶消しラミネート・コーティングのジャケットという限定で探しても、簡単に見つかった。
(クイズの出題に使ったレコードである。)
(ジャケットの表裏は艶消しラミネート・コーティングが施されている。)
(内ジャケットはカーキ色だ。)
(これはSide 1のRunout。Side 2のRunoutには、3002-3とある。)
Matrix末尾は4/3と微妙だが、VAN GELDER刻印はしっかりある。
音もRVGらしく鳴るし、悪くない。
(Side 1のRunoutにあるVAN GELDER刻印。Side 2にも、もちろんある。)
ってことで、この考レコ学クイズ5の出題に使ったレコードも、ファースト・プレスのバリエーションだと信じて、ずっとこれで聴いてきたのである。
しかし、他のA&Mのレコードを掘っている過程で、ボクはこのレコードがセカンド・プレスであることに気づいてしまった。
気づいてしまうと、やはり、ファースト・プレスが欲しくなる。
で、ebayで探してみたら、運よくモナーク工場産のWLPが出ていたので買ってみた。
もちろんVAN GELDER刻印ありで、Matrix末尾は2-RE/1と若い。
(メッキ処理番号も、4/3が△11031だったのに対して、WLPは△10835と若い。)
(Side 1のRunout。Side 2のRunoutには、3002-1とある。)
ジャケットは、艶消しのラミネート・コーティングで、内側はカーキ色だ。
裏側にはプロモ盤であることを示す”AUDITION RECORD”のスタンプがある。
「ちょっと待て。WLPだったら、レーベルが違うのは当たり前だろう。」と思った貴方。
貴方は正しい(笑)
まず、レーベル上のどこに注意しなければいけないかだが、A&Mのロゴの中、右下の角のところ、トランペットのベルのすぐ下のあたりである。
A&Mのブラウン・レーベルは、ここにRが付いていないものから、Rが付いたものへと変遷する。
もっとも、WLPのホワイト・レーベルでは、Rが付く時期がずれていて、通常レーベルではR付きがファースト・プレスになっても、WLPではあいかわらずR無しだったりする。
だから、WLPのホワイト・レーベルがR無しだからといって、通常レーベルもR無しがファースト・プレスということにはならない。
"A Day in the Life"の通常レーベルR無し盤は持ってないので、とりあえず状況証拠として手持ち盤を引っ張り出すと、SP-3005のナット・アダレー(Nat Adderley)”You, Baby”がR無しである。
SP-3001の”A Day in the Life”のファースト・プレスもR無しがあるはずだ。
CSを見てみると、WLPに付属していたCS上のA&MロゴはR無しである。
やはり、通常レーベルのファースト・プレスもR無しと考えてよさそうだ。
って、このアルバムの通常レーベルR無し盤て、別にレアでも何でもないので、Discogsで検索してもebayで検索しても、ざくざくと画像がひっかかる(笑)
"A Day in the Life"のファースト・プレスは、レーベル上のA&MロゴにRが付いていないものだと断定してよい。
それじゃ、SP-3005の後、どこまでR無しがファースト・プレスかというと、これはジャケット上のA&Mロゴで判断できるんじゃないかと思う。
ジャケット上のA&Mロゴは、ファースト・プレスのときからレイトになってもずっと変わらないのだ。
”A Day in the Life”のジャケット上のA&Mロゴは、ずーっとR無しのままである。
(サード・プレスのコーティングのないジャケットでも、A&MロゴはR無しのままだ。)
だから、逆に、ジャケット上のA&MロゴにRが付いていれば、レーベル上のA&MロゴにもRが付いていたと考えるのが合理的だと思う。
Discogsでジャケット上のA&MロゴのRの有無を確認すると、ロゴにRが付くのは1968年だ。
SP-3009のSoul Flutes , Trust In MeまではR無しで、SP-3010のRichard Barbary, Soul MachineからRが付く。
おそらくレーベル上のA&MロゴもSP-3010以降がR付きだろう。
(ただし、レコードは必ずしもカタログ番号順にリリースされたとは限らないので、おおよその目安とお考え下さい。)
ってことで、”A Day in the Life”も、レーベル上のA&MロゴにRがついているのは、1968年以降のプレスということになる。
ちなみに、ボクの持っているものを1968年産と特定したのは、付属していたCS(もちろん掲載されているロゴもR付き)にSP-4141のLiza Minnelliまでしか出ていないからだ。
(R付きのA&MロゴとSP-4141のLiza Minnelliの部分の拡大。)
こうして、クイズの答えは、3の「1968年にカリフォルニアのモナーク工場で製造されたセカンド・プレス」ということになるわけである。
音の方は、マトが若いからなのか、WLPだからなのか、ファースト・プレスだからなのかはわからないが、同じようにRVGらしく鳴るといっても、やはり鮮度感が違う。
厄介なことに、ちょっとどころじゃなく違う(笑)
セカンド・プレスしか持っていない人は、とりあえずファースト・プレスを買って聴いてみるべきだと思うよ。
正解は、3の「1968年にカリフォルニアのモナーク工場で製造されたセカンド・プレス」だ。
まぁ、レーベル画像だけでは、1968年産であることまでは判定できない(1968年~1973年の間に製造されたものであることまでしかわからない)のだが、択一問題だからいいのである(笑)
では、解説にうつろう。
まず、このブログの読者であれば、A&Mロゴの大きさからモナーク工場産であることを導けるはず(わからない方は、「Carpenters, Now & ThenのUSオリジナル」の記事https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2019-02-10をご覧ください)だから、答えは1か3に限定される。
問題は、ファースト・プレスかセカンド・プレスかである。
このレコードには、MONO盤(A&M Records LP-2001)もあるが、リリースされたのが1967年の後半のこと(リリース月までわからないのだが、録音は6月に行われている)なので、MONO盤にもセカンド・プレスがあるかどうかはわからない。
少なくともDiscogsには1968年以降に製造されたセカンド・プレスは掲載されていない。
一方、STEREO盤(A&M Records SP-3001)のほうは、1974年にレーベルがシルバー・グレイに切り替わるまでのブラウン時代でも、少なくともサード・プレスまでは区別する必要があるので、厄介だ。
ボクは、20年くらい前に、まず、ロックのオリジナル盤を集め始め、しばらく経ってからジャズのオリジナル盤にも手を出し始めたのだが、最初は、レーベルとMatrixしか気にしていなかった。
だから、このサード・プレスもオリジナルだと思って買ったんである。
ブラウン・レーベルでMatrix末尾は両面P1だ。
(これはSide 1のRunoutだが、Side 2も同じくMatrix末尾はP1である。)
しかし、「ブラウン・レーベルでマト1なんだからファースト・プレスに違いない」なんていうのは浅はかな思い込みにすぎない。
これは間違いなくサード・プレスである。
別にサード・プレスでも音が良けりゃいいんだが、このレコードは、サード・プレスじゃダメなんである。
このブログの読者であれば、ボクが最初に手に入れたのが、レーベルのA&Mロゴの大きさとP1というMatrix末尾から、コロンビア・レコードのピットマン工場プレスだということはすぐにわかったかと思うが、別にピットマン工場産だからダメというわけではない。
確かに、A&Mは西海岸の会社だから、モナーク工場産が良さそうだが、別にピットマン工場産でもアレがあればいいのだ。
しかし、このサード・プレスには、アレがないんである。
(サード・プレスの内ジャケットから、RVG録音であることのクレジット。)
そう、オリジナルがRVG(Rudy Van Gelder)録音でRVGカッティングである以上、レイトプレスで満足するにしても、最低限VAN GELDER刻印がRunoutになきゃいけないのだが、このMatrix末尾両面P1盤のRunoutにはVAN GELDER刻印がないのだ。
もうこれは絶対にダメである。
それに、ジャケットも違うのだ。
このレコードのオリジナル・ジャケットは、艶消しラミネート・コーティングされていて、吸い殻画像ともあいまって何とも雰囲気のある風情なのだが、このサード・プレスはラミネート・コーティングされていないのである。
ジャケットの内側も、オリジナルはカーキ色なのだが、サード・プレスは真っ白だ。
何もかもダメである。
ブラウン・レーベルだから1973年までのプレスであること(ゴールドマインの簡易レーベルガイドによる)は間違いないのだが、もう73年ギリギリのプレスに違いない。
そう思ってCSを見ると、住所がBeverly Hills, California 90213になっている。
A&MがBeverly Hillsに本拠を移転したのは1973年なので、ほら、やっぱり1973年産じゃないか。
そんなわけで、これはもう聴く前からダメなことがわかる。
実際、聴いてみても、RVGらしく鳴らないという以前に、マスターの劣化をひしひしと感じるもので、とうてい満足できるものではないのだ。
だから、すぐさまVAN GELDER刻印のある盤を探した。
A&Mは西海岸の会社だから、二枚目ということもあるしモナーク工場産がいい。
売れたレコードなので、VAN GELDER刻印のあるブラウン・レーベルでモナーク工場産、艶消しラミネート・コーティングのジャケットという限定で探しても、簡単に見つかった。
(クイズの出題に使ったレコードである。)
(ジャケットの表裏は艶消しラミネート・コーティングが施されている。)
(内ジャケットはカーキ色だ。)
(これはSide 1のRunout。Side 2のRunoutには、3002-3とある。)
Matrix末尾は4/3と微妙だが、VAN GELDER刻印はしっかりある。
音もRVGらしく鳴るし、悪くない。
(Side 1のRunoutにあるVAN GELDER刻印。Side 2にも、もちろんある。)
ってことで、この考レコ学クイズ5の出題に使ったレコードも、ファースト・プレスのバリエーションだと信じて、ずっとこれで聴いてきたのである。
しかし、他のA&Mのレコードを掘っている過程で、ボクはこのレコードがセカンド・プレスであることに気づいてしまった。
気づいてしまうと、やはり、ファースト・プレスが欲しくなる。
で、ebayで探してみたら、運よくモナーク工場産のWLPが出ていたので買ってみた。
もちろんVAN GELDER刻印ありで、Matrix末尾は2-RE/1と若い。
(メッキ処理番号も、4/3が△11031だったのに対して、WLPは△10835と若い。)
(Side 1のRunout。Side 2のRunoutには、3002-1とある。)
ジャケットは、艶消しのラミネート・コーティングで、内側はカーキ色だ。
裏側にはプロモ盤であることを示す”AUDITION RECORD”のスタンプがある。
「ちょっと待て。WLPだったら、レーベルが違うのは当たり前だろう。」と思った貴方。
貴方は正しい(笑)
まず、レーベル上のどこに注意しなければいけないかだが、A&Mのロゴの中、右下の角のところ、トランペットのベルのすぐ下のあたりである。
A&Mのブラウン・レーベルは、ここにRが付いていないものから、Rが付いたものへと変遷する。
もっとも、WLPのホワイト・レーベルでは、Rが付く時期がずれていて、通常レーベルではR付きがファースト・プレスになっても、WLPではあいかわらずR無しだったりする。
だから、WLPのホワイト・レーベルがR無しだからといって、通常レーベルもR無しがファースト・プレスということにはならない。
"A Day in the Life"の通常レーベルR無し盤は持ってないので、とりあえず状況証拠として手持ち盤を引っ張り出すと、SP-3005のナット・アダレー(Nat Adderley)”You, Baby”がR無しである。
SP-3001の”A Day in the Life”のファースト・プレスもR無しがあるはずだ。
CSを見てみると、WLPに付属していたCS上のA&MロゴはR無しである。
やはり、通常レーベルのファースト・プレスもR無しと考えてよさそうだ。
って、このアルバムの通常レーベルR無し盤て、別にレアでも何でもないので、Discogsで検索してもebayで検索しても、ざくざくと画像がひっかかる(笑)
"A Day in the Life"のファースト・プレスは、レーベル上のA&MロゴにRが付いていないものだと断定してよい。
それじゃ、SP-3005の後、どこまでR無しがファースト・プレスかというと、これはジャケット上のA&Mロゴで判断できるんじゃないかと思う。
ジャケット上のA&Mロゴは、ファースト・プレスのときからレイトになってもずっと変わらないのだ。
”A Day in the Life”のジャケット上のA&Mロゴは、ずーっとR無しのままである。
(サード・プレスのコーティングのないジャケットでも、A&MロゴはR無しのままだ。)
だから、逆に、ジャケット上のA&MロゴにRが付いていれば、レーベル上のA&MロゴにもRが付いていたと考えるのが合理的だと思う。
Discogsでジャケット上のA&MロゴのRの有無を確認すると、ロゴにRが付くのは1968年だ。
SP-3009のSoul Flutes , Trust In MeまではR無しで、SP-3010のRichard Barbary, Soul MachineからRが付く。
おそらくレーベル上のA&MロゴもSP-3010以降がR付きだろう。
(ただし、レコードは必ずしもカタログ番号順にリリースされたとは限らないので、おおよその目安とお考え下さい。)
ってことで、”A Day in the Life”も、レーベル上のA&MロゴにRがついているのは、1968年以降のプレスということになる。
ちなみに、ボクの持っているものを1968年産と特定したのは、付属していたCS(もちろん掲載されているロゴもR付き)にSP-4141のLiza Minnelliまでしか出ていないからだ。
(R付きのA&MロゴとSP-4141のLiza Minnelliの部分の拡大。)
こうして、クイズの答えは、3の「1968年にカリフォルニアのモナーク工場で製造されたセカンド・プレス」ということになるわけである。
音の方は、マトが若いからなのか、WLPだからなのか、ファースト・プレスだからなのかはわからないが、同じようにRVGらしく鳴るといっても、やはり鮮度感が違う。
厄介なことに、ちょっとどころじゃなく違う(笑)
セカンド・プレスしか持っていない人は、とりあえずファースト・プレスを買って聴いてみるべきだと思うよ。