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日暮し『日暮し』の見本盤 [国内盤研究]

もう一枚、似たような見本盤を拾ってきたので、紹介しておこう。


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日暮しが1973年にリリースしたセルフ・タイトルのファースト・アルバムである。
ジョン・バエズのほうはキング・レコードのサンプル盤用汎用スリーブだったが、こちらは完全な汎用スリーブだ。


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ちょっとヤフオクで検索してみたら、1974年リリースのサード・アルバム『街風季節』の見本盤が、コロンビアの汎用スリーブ(サンプル盤用かどうかは不明)入りで出品されていた。
70年代半ばくらいまで、こういう形のサンプル盤配布というのがあったようだ。

昨日、記事を書いたあとのツイッターでのやり取りや、昨日の記事に対する阪蔵さんのコメントからすると、この種の見本盤というのは、どうやら小売店つまりレコード店に配布されたもののようである。

レコード店での店頭演奏用サンプル盤というと、以前下記記事で紹介したようなオムニバス盤のイメージが強いのだが、それはやはり、ボクが80年代のレコード店をイメージしてしまうからだろう。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2019-08-12


ちょっと想像力を働かせてみよう。

レコードというのは、昔は高級品だった。
たとえば、先日下記記事で紹介した(テストプレスだと思っていた)見本盤は、調べてみると、『クリュイタンス ラヴェル管弦楽曲全集(第3集)』というもので、当時2000円で販売されたものである。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-08-30

1963年にリリースされているのだが、1963年の国家公務員の初任給(大卒)を見てみると、17,100円だ。
つまり、レコード一枚が給料の1/10より高い価格だったんである。
いまの大卒初任給って21万くらいだっけ?
ってことは、いまだったら2万円以上って感じ?
そりゃ、買うときには、必ず視聴するよねぇ・・・

レコード店での試聴というと、カウンター脇のターンテーブルでかけて店内スピーカーで聴くって感覚だけど、50年代とか60年代とかでは、レコード店には、ちゃんとした試聴室なんてのも用意されていたかもしれない。
なにせ高級品を売るわけだから。

あるいは、顧客のお宅に見本盤をもってうかがうなんて営業も、もしかしたらあったかも。

いずれにせよ、当時は、小売のレコード店にとって、文字通り「試聴用見本」としての新譜見本盤は必須だっただろう。
で、そういう用途の見本盤としては、汎用スリーブ(場合によっては余ったスリーブ)に入れただけのものでも十分だったんだと思われる。

80年代にはそんな慣習はなくなっていたと思うが、70年代半ばくらいまでは残っていたのだろう。
この汎用スリーブ見本盤の正体は、そんなところだろうか。


さて、日暮しである。
RCサクセションがらみで名前はちょっと聴いたことがあったが、最大のヒット曲とされる『いにしえ』も聴いたことがなかったので、日暮しの音楽自体、今回初めて聴いた。

勝手に叙情派フォークというイメージを持っていたのだが、実際に聴いてみると、どちらかと言えば洋楽テイストのフォーク・ロックの趣である。
ファースト・アルバムのせいか、楽曲のクオリティにばらつきがある気がするので、通して聴くのは個人的にはちょっときついが、『名も知らぬ街角』と『赤い三輪車』の2曲はなんだか妙に気に入ってしまって、何度か繰り返し聴いてしまった。
それだけでも十分な収穫よね。

タグ:日暮し
コメント(4) 
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コメント 4

阪蔵

日本コロムビアの場合、71年までの見本盤は基本的にジャケなし無地スリーブですが、72年から無地スリーブのものとジャケ付のものが出てきます。自分の「日暮し1st」の見本盤はジャケ付ですが、初期見本盤はこの無地スリーブです。このコロムビアの見本盤用無地スリーブは73年まで使用されていましたが、74年には「街風季節」の見本盤のような薄手のインナー・スリーブ(内袋貼付タイプ)に変更になります(ジャケ付の見本盤にもこのインナー・スリーブは付属)。75年にはインナー・スリーブのデザインが変更になり、76年にはビニール製のインナー・スリーブへ、77年頃にはジャケなしで見本盤が配布されることもなくなり見本盤用のインナースリーブも廃止されたようです。
by 阪蔵 (2022-09-08 03:38) 

想也

阪蔵さん

詳しい情報ありがとうございます(^^)
やはり、ジャケ付きの見本盤もあるんですね。

by 想也 (2022-09-09 00:06) 

そろそろ処分

初めまして。
見本版の話ではないのですが、70年代初期のレコード店について。
私が住んでいたのは千葉市ですが当時一番大きなレコード店は、YAMAHA(日本楽器)でした。ジャンル、品ぞろえも豊富でレジ横にのカウンターには視聴用のプレイヤーが数台あり視聴したいレコードを持って行くと店員さんがセットしてヘッドフォンでバーカウンターのように椅子に座り視聴することができました。売り物の新品レコードを聴かせてくれるなんて今ではちょっと信じられませんが。CBSソニーだけはシュリンク包装されていたので視聴できませんでした。他のレコード店も数こそ違え大抵このようなスタイルでした。
by そろそろ処分 (2022-09-11 01:37) 

想也

そろそろ処分さん、はじめまして。
コメントありがとうございます(^^)

大型店は大学進学で東京に出てくるまで行ったことがなかったので、80年代以降のことしか知らないのですが、地方の小さなお店には、中学生になった70年代後半には通ってました。
小さなお店だったのでプレイヤーは一台しかありませんでしたが、カウンター横にあって、いつもはBGMがかかってましたが、お願いすれば試聴もさせてくれました。
ヘッドフォンではなくて、店内スピーカーでしたが。
聴かせてくれたレコードが新品レコードだったのか、見本盤だったのかは、あまり記憶にないんですが、レーベルが白かった記憶はないので、見本盤ではなかったような気もします。
大型店ということをのぞくと、そろそろ処分さんのご記憶とかなり似ているでしょうか。
おそらく、大きな変化があったのは高度経済成長期だったんじゃないかと思います。
by 想也 (2022-09-11 09:45) 

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