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Toto, HydraのUSオリジナル [Bernie Grundman(BG)の仕事]

Toto, HydraのUS盤には気になるレイト・プレスがある。

1979年10月1日にColumbiaからリリースされたこのアルバムのUSオリジナルは‎FC 36229であるが、後にPC規格で再発された。
気になるレイト・プレスとはそれだ。

Discogsを見るとPC規格もFC規格と同年にリリースされたように書いてあるが、79年のリリース時はFC規格であり、PC規格でリリースされたのは80年代半ばである。
この手の間違いはDiscogsにはすこぶる多い。

で、このPC規格での再発盤、ただの再発なら別に気にもならないのだが、Columbiaマトの数字部分が進んでいて、カッティングがTML(The Mastering Lab)で行われているのである。
ちょっと気になるじゃないか。

そんなわけで、しばらく前からPC規格盤を探していたのだが、なかなか出会わなかった。
なにせ500円ぐらいでゴロゴロしている盤である。ネットで買う気には到底なれない。
必然的にレコード屋で探すことになるのだが、この手の安レコって、別に探してないときにはいくらでも見かけるのに、いざ探しているときには案外見つからないのである。

ってことで、探し始めてから、今回入手するまでに1年くらいの時間が流れていると思う(笑)

まあ、でも見つかったからいい。
しかも、FC規格盤である。


20181215-01.jpg
<そんなわけで手元のUS盤は3枚になった。>



「おまえ、なに言ってんだ?」って声が聞こえてきそうだが、実は、PC規格盤も同時に見つけたんである。
どっちも、TMLカッティングだったのだが、FC規格盤のほうはオリジナルのインナースリーブ付きでマトも若かった(数字のほうは2で同じなのでアルファベットのほうね)のに対して、PC規格盤のほうはプレーンの白いインナースリーブでマトも進んでいて(なんと再発盤のくせに片面は2AAでアルファベットが2桁!)、いかにも廉価盤再発の風情だった。


20181215-02.jpg
<FC規格のTMLカッティング盤。インナースリーブも付属している。>



そう、Discogsの限られた情報では、PC規格でTMLのリカッティングが行われたように見えるが、実は、その前に、つまりFC規格のレイト・プレスで、すでにTMLのリカッティングが行われていたわけである。


20181215-03.jpg
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<RunoutのTML刻印は、A面がTML-Mで、B面がTML-Xだった。>



ボクが欲しかったのはTMLカッティングの盤なわけで、それがFC規格ですでに存在するならそっちがいいに決まっている。

TMLによるリカッティングは、おそらく84年の5thアルバム”Isolation”のカッティング時に行われたのではないかと思う。 Totoのアルバムは、3rd、4thとSTERLINGカッティングだったが、5thでTMLカッティングに戻る。 この5thのカッティングの際に、2nd”Hydra”のリカッティングも行われたのではないかと思うのである。
この推理は間違っていました。詳細は下記をご覧ください。(2019年3月16日追記)

https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16


で、TMLカッティングの”Hydra”はどうだったかというと、これがなかなかに面白い。

確かに、鮮度的にはファースト・プレスのほうが断然良い。
しかし、音作りという点から言うと、ファースト・プレスもTMLカッティングも、どちらも明確な思想があって、ボクには甲乙つけがたい気がする。

ファースト・プレスは、低域がぐっと引き締まり、ふんわりと空間が広がる音場感が秀逸だ。
これは西海岸のAORの音である。

それに対して、TMLカッティングの音は、低域が重い。音場全体がタイトに引き締まり、ぐいっと迫ってくる感じだ。
これはハードロックの音である。

ちなみに、今回入手したTMLカッティング盤は、中部テレホート工場産のMatrix末尾2F/2Eというものだったが、ファースト・プレスの音との間には、工場やMatrix(アルファベットの方ね)の違いによる微妙な差とは明らかに違う大きな差があるので、TMLカッティングの盤であれば、どこの工場のどんなMatrixの盤でも、AOR的なファースト・プレスの音とは違う音が楽しめると思う。

まぁ、でも、AORも大好物のボクとしては、どちらかを選べと言われれば、鮮度感にも優れているファースト・プレスを選ぶ。
ジャケットやインナースリーブにクレジットはないのだが、マスタリング&カッティングはBernie Grundmanじゃないかと思う。

A面のRunoutの筆跡は、完全にBernie Grundmanの特徴に一致している。


20181215-05.jpg
<[る]に見える[3]と、[5]をひっくり返したように見える[2]。>



B面のRunoutの筆跡は、[2]の特徴が違うのだが、実はこっちが本来のBernie Grundmanの[2]で、丁寧に書くと[5]をひっくり返したようになるんじゃないだろうか。
[る]に見える[3]は同じだしね。


20181215-06.jpg
<[る]ん見える[3]と雑な[2]。>



ってことで、Bernie Grundmanだと鑑定してしまうのである。
っていうか、このAOR的な音作りは、彼の得意な音作りだ。

さて、もう一つ、おそらくファースト・プレスの特徴じゃないかと思うことがあるので、指摘しておこう。

手元にはMatrix末尾1A/1Dの盤(西部サンタマリア工場産)、Matrix末尾1C/1AA(西部サンタマリア工場産)の盤、Matrix末尾2F/2E(中部テレホート工場産)の盤があるのだが、Matrix末尾1A/1Dの盤が入っていたジャケットのみ、内側まで表側とまったく同じ光沢があった。
老眼の身には少しわかりづらくて最近まで気づかなかったのだが、光源を映してみると、わりとはっきりわかる。


20181215-07.jpg
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<ファースト・プレスのジャケットの表側と内側。>



20181215-09.jpg
20181215-10.jpg
<レイト・プレスのジャケットの表側と内側。>



ファースト・プレスを探すときには、ちょっと注意が必要かもしれない。

コメント(6) 
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コメント 6

ニブ

こんにちは

些細な事ですが、マト1は、B1のみ別MIXの部分がありますよ。
大した違いではないですけど。
by ニブ (2018-12-17 15:31) 

想也

ニブさん

貴重な情報ありがとうございます(^^)
B面は聴き比べてませんでしたー
帰宅したらチェックしてみますので、具体的に、どう違うが教えてもらえますか?
by 想也 (2018-12-17 17:05) 

ニブ

2コーラス目に入る前のイントロと同じフレーズの部分です。
ギター、シンセ、ガヤの声が違ってます。

by ニブ (2018-12-17 19:14) 

想也

ニブさん

ありがとうございます。
確かに違うんですが、マスタリングが違いすぎて、MIXの違いなのかよくわかりませんでしたσ(^_^;)

by 想也 (2018-12-17 22:02) 

ニブ

想也さん

わからなかったですか(笑
一番違うのは、CDだと1分40秒あたりからですが、マト2以降にあるリードギターが全く入っていないのがマト1です。
私の推測ですが、「All Us Boys」は、一発録りに少しだけダビングして仕上げたものなので、出来上がったミックスを聞いて、ちょっと直したくなったのではないでしょうか? マト2は低音も盛り気味ですよね?
国内盤LPは最初からマト2のほうですが、リイシューLPにマト1のテイクがあるし、国内盤CDでもマト1の方のがあるようです。

by ニブ (2018-12-18 01:36) 

想也

ニブさん

わかりました〜
確かにマト1は間奏の最後に奥でちょっと鳴るギターが入ってませんね。
音数少ないのにマト1のほうが派手に鳴るので、幻惑されました(笑)

いろいろ情報ありがとうございます。
全然知りませんでしたー

by 想也 (2018-12-18 02:18) 

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