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緑の日々 [思い出]

史上最多のメダルを獲得して大いに盛り上がったリオ・オリンピックも、まもなく終わる。
錦織選手の銅メダル獲得もうれしかったが、昨日の400メートル・リレーの銀メダルには本当に感動した。

今朝の朝日新聞の一面記事は、こんな言葉で締めくくられていた。

10秒を切れていない4人が、偉業を達成した。

「個人の力量」だけでなく、バトンパスという「力を合わせる技術」が大きなウエイトを占めるリレーという競技のおもしろさを、実に的確に伝えている。


リレーといえば、オリンピックとはまったく関係がないが、とても心に残っている思い出がある。
その思い出をつづった以前のブログの記事があるので、転載しよう。
「緑の日々」と題した2007年6月4日の記事だ。
(少しだけ加筆修正しています。)


**********以下、転載**********


7年間暮らした賃貸マンションから今の一戸建てに引っ越したのは2005年の師走も末のことだから、ここでの暮らしも、もう1年半になる。

家を建てることが夢だったわけじゃない。むしろ、一生、賃貸マンション暮らしのほうが楽でいいと思っていたくらいだった。
離婚してユウと二人暮らしになったときから、ボクは何となく他人とのかかわりを避けるようになっていた。小さな地方都市とはいえ、駅周辺はそれなりに発展していて、そこに暮らす人々も流動的だったから、ボクにはマンション暮らしのほうが気楽な気がしていた。

ボクの心に大きな変化が訪れたのは、2005年春、ユウの小学校最後の運動会のときだった。

運動会最大の呼び物といえば、クラス対抗リレーなのだけれど、あいにくユウの通っていた小学校はとても小さくて、普通学級は1学年1クラスしかなかった。そこで企画されたのが、クラスを4組にわけた全員参加のリレーだった。
その「全員」の中には、重度の知的障害をともなう自閉症のため特別支援学級に所属しているユウも含まれていた。

担任の先生からユウもリレーに参加させると聞いたときは、正直なところボクはとても驚いたし、実際、ユウには無理だと思った。でも、「やれるところまでやってみて、無理なようなら参加をとりやめる」という話だったから、ボクはすべてを先生に任せることにした。

運動会当日、いよいよ最後の種目、6年生のリレーが始まった。結局、ユウも参加することになっていた。
本当にちゃんとやれるのか、ボクはかなりの不安を抱きながら見守った。

そのリレーは、ちょっと変わっていた。子供それぞれ走る距離が違うのだ。
トラックを一周する子もいれば、半周の子も1/4周の子もいる。
それぞれが走る距離は、それぞれの能力に応じて決められたらしい。

猛烈な速さで駆け抜けてゆく俊敏な子がいる。
運動が苦手そうな、ドタドタと遅い子がいる。
幼い頃に交通事故にあって、片足に少しハンディを抱えた子も一生懸命走っている。

そしてユウも、バトンを受け取り、1/4周を走り、次のランナーにバトンを渡した。
レースは抜きつ抜かれつのデッドヒートだった。

ユウがリレーに参加して、ちゃんと役目を果たした!

もともと涙もろいボクは、それだけでも目頭が熱くなってきて、涙をこらえるのに必死だった。

「このリレー、全部、子供たちが自分達だけで考えたんですよ。ホントに良い子たちばかり。」

隣で見ていたユウの担任の先生が言った。その瞳からは、いまにも涙が落ちそうだった。

もう、こらえきれなかった。涙があふれた。

気づかれないようにぬぐったつもりだったけれど、
「ホントに良い子たちばかりですね。」
そんな風に答えたボクの声も震えていたから、先生はきっと気づいていただろう。


1クラスとはいえ40人近い子供たち。その全員が、同じような優しさや思いやりを持っているのかどうか、ボクにはわからない。
ただ、ユウと同じ保育園で、その後も同じ学童保育に通っていた10人ほどの子供たちの顔が思い浮かぶ。
その10人ほどの子供たち以外にも、ユウの世話をやいてくれていた何人かの子供たちの顔が思い浮かぶ。
幼い頃から、ユウが隣にいることを当たり前のように受け入れてくれていた子供たちの顔だ。

あの運動会の日から、ボクの心は、この土地でずっと暮らしていこうという気持ちに、少しづつ固まっていった。

そして1年半ほど前、ボクたちはここに引っ越してきた。ユウの通っていた小学校にも、今通う中学校にも、徒歩で10数分のところにある。ボクの職場へも、徒歩で30分弱、車なら5分ほどのところだ。

それまでのマンションは、ここから車で15分ほどのところにあって、ユウも学区外通学をさせていたから、これで名実ともに地域の一員になれたわけだ。

ここは、とても緑豊かなところ。ボクが生まれ育った土地に似ている。

そんな自然の生命の息吹を毎日感じているからか、ガーデニングになんかまったく興味がなかったボクも、1年ほど前から、小さな庭の手入れを始めた。
芝をはったり、小さな花壇を作ったり、プランターに花を植えてみたり。リビングには、観葉植物を並べたりもしている。

ボクを一番癒してくれるのは、何よりユウの笑顔だけれど、小さな庭の緑や色とりどりの花たちも、リビングの観葉植物たちも、たまに慌しい毎日が続いて擦り切れそうになった心を、そっと優しく癒してくれる大切な同居人になっている。

**********以上、転載終わり**********



20160821-2.jpg
小学生の頃のユウ@近所の海岸にて



sa-saraさんがつい先日YouTubeにアップしていたインスト曲が、記事にピッタリな気がしたので貼り付けてしまおう。



Love Songs for the Earth _ scene 4 / sa-sara


癒されるなぁ・・・

タグ:sa-sara
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