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エレクトラの赤の不思議(続報)~Judy Collins, Hard Times for LoversのUSオリジナルを聴きながら [Bernie Grundman(BG)の仕事]

エレクトラ(Elektra Records)のバタフライ・レーベルからレッド・レーベルへの変遷の詳細について、昨日の記事で、「もうちょっとちゃんと調べてみないといけない」と書いだが、書いたときには、「まぁ、そのうち、ボチボチ調べよう」という程度の気持だった。
その程度の気持だったのは何故かといえば、問題になる時期のエレクトラのレコードってあんまり持ってないからである。

ってことは、「まぁ、そのうち、ボチボチ調べよう」なんてスタンスだと、結局、調べないまま終わるだろうな。
まぁ、後は紙ジャケ探検隊に丸投げというのもアリか。

そう思ったのだが、GWのせいか、なんだか急にやる気が出てしまって、Discogs登録の地引網調査なんぞをやってしまった(笑)
とりあえず、6E128のカーリー・サイモン(Carly Simon)から6E209のピンク・レディー(Pink Lady)まで、US盤の登録画像を全部チェックして、工場ごとにどのレーベルが使用されているかをリスト化した。

時期については微妙な部分はあるが、仮説は概ね裏付けられたんじゃないかと思う。

SPプレス、PRCプレス、PRC-Wプレスの全工場でバタフライ・レーベルが使用されていたのは、6E151のキャロル・ベイヤー・セイガー(Carole Bayer Sager)、6E153のコリエル/キャスリン(Coryell/Catherine)、6E156のスウィートボトム(Sweetbottom)あたりまでだ。
発売日がわかったのはキャロル・ベイヤー・セイガーぐらいで、1978年8月15日だった。

PRC-Wプレスのみレッド・レーベルに変わるのは、6E152のアクエリアン・ドリーム(Aquarian Dream)、6E154のオレゴン(Oregon)あたりからだ。
アクエリアン・ドリームの発売日はわからなかったが、オレゴンは1978年9月のようだ(Wikiは1978年4月になっているが、どう考えても間違い)。

PRCまでレッド・レーベルに変わるのは、前の記事でとりあげた6E160のパトリース・ラッシェン(Patrice Rushen)からなのだが、実は、1978年中にリリースされたと思われる6E164のレニー・ホワイト(Lenny White)までは、PRC-Wプレスのみレッド・レーベルで、PRCプレスはバタフライ・レーベルだ。
6E166のクイーン(Queen)はカスタム・レーベルだし、6E167のジルベルト・ジル(Gilberto Gil)はPRCプレスのレーベル登録がなかったので、確実に言えるのは6E168のマーク・タナ―・バンド(The Marc Tanner Band)からだが、PRCプレスもレッド・レーベルになる。
そういったところから考えると、パトリース・ラッシェンの発売日は、案外、10月15日ではなく、12月ぐらいだったのかもしれない。
そうだとすると、PRCまでレッド・レーベルに変わるのは1978年の年末ということで、そのほうが辻褄が合いそうな気がする。

SPプレスまでレッド・レーベルに変わるのは、6E205のアクエリアン・ドリームからで、これ以降は、どの工場もレッド・レーベルだ。
6E205で、SPプレスのWLPが、バタフライ・レーベル・デザインからレッド・レーベル・デザインに変わるので、間違いない。
ピンク・レディーの発売日が1979年6月1日だから、レコード番号順に発売されるとも限らないし、1979年初夏ぐらいと考えておけばいいということになる。

ひとつ、まったく新しい発見があったのだが、実は、PRC-WプレスのWLPは、最初からずっとレッド・レーベルのデザインのホワイト・レーベルなんである。
つまり、PRC-WプレスのWLPには、バタフライ・デザインのホワイト・レーベルが使用されたものは存在しない。
通常盤は、6E156のスウィートボトムまでバタフライ・レーベルなのだが、WLPは、レッド・レーベルのデザインのホワイト・レーベルだということだ。

どういう風に確認したかを説明しておこう。

6E112のクイーン(1977年10月28日リリース)まではサンタマリア・プレスのWLPが存在する一方でPRC-WプレスのWLPは存在せず、6E113のジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)(1977年12月6日リリース)からは、逆にサンタマリア・プレスのWLPは存在しない一方でPRC-WプレスのWLPが存在するので、エレクトラ/アサイラムの西部のメイン工場が、この時点でサンタマリアからPRC-Wに変わったことがわかる。

で、それにもっとも近いエレクトラの盤は6E119のディー・ディー・ブリッジウォーター(Dee Dee Bridgewater)なので、そのWLPを確認すると、PRC-WプレスのWLPでも、レッド・レーベルのデザインのホワイト・レーベルが使用されているのである。

以上の調査結果をまとめれば、次のようになる。

1 PRC-Wが西部のメイン工場となった1977年12月時点で、WLPはすでにレッド・レーベル・デザインが使用されていたが、通常レーベルは、SPプレス、PRCプレス、PRC-Wプレス、すべてバタフライ・レーベルだった。
2 1978年9月頃からPRC-Wプレスのみレッド・レーベルに変わる。
3 1978年12月頃からPRCプレスもレッド・レーベルに変わる。
4 1979年6月頃にはSPプレスもレッド・レーベルに変わり、レーベル・デザインの移行が完了する。

いやぁ、地引網的に大量の画像をチェックしたが、テレヴィジョン(Television)とカーズ(The Cars)をのぞけば、持っているのは、6E171のジュディ・コリンズ(Judy Collins)と6E192のリー・リトナー(Lee Ritenour)ぐらいである。
リー・リトナーの方は以前記事にしたことがあるので(https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2021-01-22 今回の記事に合わせて少し修正しました。)、ジュディの方を聴きながら、この記事を書いている。


20230506-01.jpg


うちのはSPプレスのバタフライ・レーベルなのだが、1979年2月リリースなので、すでに、PRC-Wプレスだけでなく、PRCプレスも、レッド・レーベルが初回である。
しかも、このレコード、カリフォルニア録音で、マスタリング&カッティングもA&Mスタジオでバーニー・グランドマン(Bernie Grundman)が行っているから、PRC-Wプレスのほうがオリジナルなんじゃないかという気がしないでもない。
と思ったら、これの西部プレスのWLPってアライド(Allied Record Company)・プレスなのね・・・
まだ、本格的にアライドには移行してない段階だと思うのだが、不思議だ。
いずれにせよ、見つけたら買ってみよう。

それはともかく、昔は、「レッドはレイトで、初回はバタフライだろー」って信じて疑ってなかったんだけどなー

でも、そんなことに関係なく、ジュディには癒されるよね。
"Desperado"もやってるしさ。

タグ:Judy Collins
コメント(10) 
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コメント 10

No Name

The Carsのデビュー作(6E-135)は1978年6月発売でDiscogsでもざっと見てレッドレーベルしか確認できないのですが?
国内盤は1980年のセカンドまではバタフライで、サードはカスタムレーベルでした。1982年には日本でもレッドに切り替わったと記憶しております。
by No Name (2023-08-05 08:28) 

想也

匿名さん

TelevisionのセカンドとThe Carsのファーストが事の発端で、いずれも本来ならレッド・レーベルではない時期なのに、レッド・レーベルしかないのです。
このあたりのことは、レコード・コレクターズ2023年5月号の初盤道をご覧ください(私も資料提供で協力しています)。

で、「本来の変遷はどうなっていたのか」を明らかにしようというのが、この調査の目的です。

日本盤のレーベルの変遷については、米本国とはズレているので、今回の調査の対象にはなっていません。

by 想也 (2023-08-05 12:05) 

No Name

返信いただきましてありがとうございます。レコード・コレクターズ初盤道は未読でした。
ご指摘の2枚の近辺のアルバムにレッドレーベルらしきプロモ盤を見つけております。
リー・リトナーのThe Captain's Journey(6E-136)はデザインがレッドレーベルなのでこの時期レッドあると思っていました。
https://www.discogs.com/ja/release/8015226-Lee-Ritenour-The-Captains-Journey/image/SW1hZ2U6MjE1NTI3MzI=
by No Name (2023-08-05 17:02) 

No Name

連投失礼いたします。
カーリー・サイモンのBoys In The Trees (6E-128)のプロモも同じです。

https://www.discogs.com/ja/release/15982211-Carly-Simon-Boys-In-The-Trees/image/SW1hZ2U6NDkwMTcxNzI=
by No Name (2023-08-05 17:08) 

想也

匿名さん

えっと、WLPが通じてなかったんでしょうかね?σ^_^;
WLPは、White Label Promoの略で、ホワイト・レーベルのプロモ盤のことです。

記事中に書いたように、PRC-W(中部のPRC工場が新しく西部のコンプトンに作った工場)がエレクトラの西部のメイン工場になった1977年12月時点で、PRC-WプレスのWLPつまりプロモ盤はすでにレッド・レーベル・デザインが使用されていました。
この時点では、通常盤レーベルは、SPプレス、PRCプレス、PRC-Wプレス、すべてバタフライ・レーベルでした。

ですから、The Captain's JourneyもBoys In The Treesも、通常盤のファースト・プレスは、どこの工場のプレスでも、バタフライ・レーベルです。
PRC-WプレスのWLPだけが、レッド・レーベル・デザインなんです。

by 想也 (2023-08-05 17:48) 

No Name

きちんと記事を読んでおりませんで大変失礼いたしました。
プロモ盤のレッド・レーベル・デザインは1972年12月時点であったのですね。
The Carsは新人、Televisionは新世代でレーベル・デザイン変更で苦情の入らないアーティストだと踏んで実験してみた、なんてことがあったら面白そうですね。


by No Name (2023-08-05 18:11) 

想也

匿名さん

The CarsのファーストとTelevisionのセカンドにレッド・レーベルが使用された理由については、ぜひ初盤道の探検隊の仮説も参考に、考えてみてくださいませ(^^)
by 想也 (2023-08-05 23:38) 

想也

もう一人の匿名さん?

Lenny Whiteの6E121は、PRC-Wプレスのバタフライ・レーベルがありそうですが、ebayで探しても見つかりませんね。
もしかしてと思って、Dee Dee Bridgewaterの6E119もPRC-Wプレスのバタフライ・レーベルは存在しないのかもと探してみたら、やっぱりなさそうです。
PRC-Wがアサイラム/エレクトラのプレスを始めた当初は、レッド・レーベルを使ってたのかもしれません。
もうちょっと調べてみます。

情報ありがとうございました。

by 想也 (2023-08-05 23:53) 

No Name

返信いただきましてありがとうございます。
初盤道の探検隊さんの仮説は機会を見つけて確認してみます。
ご説明いただきましてありがとうございました。
by No Name (2023-08-06 08:51) 

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