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ジェントル・ソウツのウソとビクターPMに関する続報 [国内盤研究]

ここに二枚のリー・リトナー&ジェントル・ソウツ『ジェントル・ソウツ』がある。


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1977年にリリースされた初回盤と、80年代になってから「TAKE 2」としてリリースされたものだ。
どこかで「帯以外に見分けようがないので、帯なしだと大変だ」というようなことが書いてあるのを見た記憶があるのだが、レコード番号が違っているので、見分けるのは難しくない。


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小さい文字だが、レコード番号は表ジャケの右上に印刷されていて、初回盤はVIDC-1、「TAKE-2」盤はVIDC-101である。

帯にあるダイレクト・ディスクというのは、一発録りで直接ラッカー盤にカッティングするダイレクト・カッティングで作られたディスクを意味する。
スタジオで演奏されているそのままがラッカー盤に刻まれるわけだから、鮮度抜群の音である。
リー・リトナー(Lee Ritenour)をはじめ手練れのミュージシャンがそろっているから、演奏もすごい。

初回盤も「TAKE-2」盤も素晴らしいレコードなんである。

しかし、このレコードにはウソがある。

Wikiを見ると、「ダイレクトカッティングにより録音されたLPは、プレス枚数の制約があるため、追加プレス対策として全く同じ曲順のテイク2も録音されて」いたとあるのだが、これは誤りである。
そもそも、3万枚限定でのリリースだから、追加プレス対策なんて必要ない。
まぁ、追加プレスではなく、ラッカーからマスターをとることに失敗したときの万が一を考えてって部分はあったかもしれないが、別テイクが録音された理由は、それがメインではないと思う。
なぜなら、録音されたのはテイク2だけではなく、テイク3も録音されていたからである。

なにせ一発録りのダイレクト・カッティングである。
演奏の質がどのぐらい維持されるか不明だし、エンジニア(カッティングについては、ワーナー・スタジオのボビー・ハタ(Bobby Hata)が担当したことは、送り溝のサインで確認できる。)がミスする可能性もある。
3テイク録音し、出来上がったものを比べて、一番良いものを製品化しようと考えたというのが、真相じゃないだろうか。

って、Wikiに間違いがあっても、別にこのレコードにウソがあることにはならない。

ウソがあるのは、「TAKE-2」盤の帯である。
帯にウソが書いてあったら、やはり、このレコードにはウソがあるということになるだろう。

で、何がウソかというと、「TAKE-2」というのがウソなんである。
そもそも初回盤からして「TAKE-1」だったわけじゃないのだ。

初回盤の送り溝を見ると、Side 1にはこう刻まれている。


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TAKE-3なんである。

ダイレクト・カッティングなので、TAKE-3ということは、ラッカー・ナンバーも3になる。
ビクターのマトは、数字が3つ並んだ後に※だが、最初は通常1で、2番目がラッカー・ナンバー、3番目がマザー・ナンバー、※でスタンパー・ナンバーをあらわす。
ラッカー・ナンバーが3ということは、2番目の数字が3ということだ。


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ほらね。
間違いなく、TAKE-3でラッカー・ナンバー3なんである。

Side 2にはこう刻まれている。


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TAKE-2である。

マトのラッカー・ナンバーも、もちろん2である。


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つまり、初回盤に収録されたのは、Side 1についてはTAKE-3、Side 2についてはTAKE-2だったのだ。
おそらく、3テイク中、演奏・録音ともに一番良かったのだろう。

じゃ、80年代にリリースされた「TAKE-2」盤は、どのテイクだったのか。

Side 1にはこう刻まれている。


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TAKE-1なんである。

マトのラッカー・ナンバーも、もちろん1だ。


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Side 2にはこう刻まれている。


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TAKE-3である。

マトのラッカー・ナンバーも、もちろん3だ。


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つまり、「TAKE-2」盤に収録されたのは、Side 1についてはTAKE-1、Side 2についてはTAKE-3だったのだ。
どっちもTAKE-2じゃないんである。

「待望のテイク2、いよいよ登場!」というのは、ウソだと言わざるをえない(笑)

それはそうと、Side 1についてはTAKE-2が、Side 2についてはTAKE-1が、日の目を見ていない。
これ、いつか、出てくるかなぁ?

ところで、このレコードには、ビクターPMに関連して、もうひとつ興味深いことがある。

初回盤のPMはいつも通りである。


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初回盤は1977年9月25日発売だから、HJというPMは、発売日前月の77年8月に一度使用されたスタンパーが、同年10月に再度使用されてプレスされたものであることを意味している。

ところが、「TAKE-2」盤(ホントは、TAKE-1/TAKE-3盤 笑)のPMは、こうなっている。


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これは、どう見ても、ひらがなの「い」である。

ひらがな・バージョンのPMも存在するんである。


ビクターのPMは、通常はアルファベットだ。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2020-08-31

しかし、例外的に、カタカナ・バージョンが使用されることもある。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2022-10-11

これに、さらに、ひらがな・バージョンが加わるわけだ。

それぞれ、アルファベットPM、カタカナPM、ひらがなPMと呼ぶことにしよう。
これらは、どういうルールで使用されていたんだろうか?

これから検証していかなければならないことだが、ボクは、次のような仮説を立てている。

1 通常はアルファベットPMを使用する。
2 アルファベットPMがすでに使用済み等で使用できないときは、カタカナPMを使用する。
3 カタカナPMもすでに使用済みで使用できないときは、ひらがなPMを使用する。

『Woman and I』の場合は、PMを使用している東芝EMIや東洋化成とは異なり、PMを使用していないCBS/SONYでメイン・プレスが行われる予定だったので、アルファベットPMがCBS/SONYで使用される可能性を考えて、第二順位のPMであるカタカナPMが使用されたんじゃないか。
(結果的には、CBS/SONYは東洋化成PMをアレンジしたPMを使用したので、ビクターPMを使用することはなかったが。)

発売日から2年が経過してPMが2巡目に入った場合についても、すでにアルファベットPMが使用済みなので、カタカナPMを使用するということで、上記のルール通りだ。

ひらがなPMは、カタカナPMも使用済みの場合なので、基本的には3巡目ということだろう。
問題は、カタカナやひらがなは、アルファベットよりも文字数が多いということだ。
旧字まで使用すれば、49文字あるので、4年仕様のPMも可能なのである。

アルファベットと同じ2年仕様だとすると、このレコードの場合、3巡目は1981年からである。
PM「い」は、1981年2月ということになる。

カタカナPMは4年仕様だとすると、このレコードの場合、3巡目は1983年からだ。
PM「い」は、1983年2月ということになる。

しかし、肝心の「TAKE-2」盤の発売日が、どう調べてもわからない。
かろうじてDiscogsに1983年とあるが、信じていいのかわからない。
誰か、「TAKE-2」盤の発売日を御存知の方、ぜひ教えてくださいませm(_ _)m

それから、ビクター盤のPMで、アルファベット以外のものを見つけたときは、ぜひ教えてくださいませm(_ _)m

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