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TML刻印の変遷 [TMLの仕事]

<kaori Eさんからいただいた情報に基づいて、若干修正しました。>(2022年3月13日19:30)
<TML-Xの開始時期について新たな情報を得たので修正しました。>(2023年1月22日21:00)

ジョージ(George Harrison)の"Living in the Material World"に関する記事でUS盤のTML刻印のことを問題にしたのだが、そういえば、この手書きのTML刻印て珍しいよねぇ。

TML(The Mastering Lab)は、1967年12月にダグ・サックス(Doug Sax)とシャーウッド・サックス(Sherwood Sax)の兄弟によってハリウッドで設立されたマスタリング・スタジオだが、当初は、送り溝への刻印は行っていなかった。
それが、手書きのT.M.L.刻印→スタンプのTML刻印→カッティング・レースによって区別されたTML-MとTML-S→TML-MとTML-SにTML-Xが追加と変遷するのだが、具体的にはそれぞれいつ頃変更されたんだろう?
気になったのでちょっと調べてみた。

当初は送り溝への刻印を行っていなかったということについては、ザ・フー(The Who)の"Who's Next"(Decca DL 79182)を思い浮かべる人も多いんじゃないかと思う(関連記事として、https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2015-11-01をどうぞ)。
つまり、1971年8月の時点では、まだ刻印がなかったわけだ。
じゃ、いつまでなかったんだろう?

つまり、いつから手書きT.M.L.刻印が現れるのかだが、"Living in the Material World"(Apple Records SMAS-3410)が最初期ではないかと思う。
"Living in the Material World"は1973年5月30日リリースだが、その前月リリースのイーグルス(Eagles)”Desperado”(Asylum Records SD 5068)にはまだ刻印がないからである。
ってことで、手書きT.M.L.刻印の開始は、カッティングはリリースの前月と仮定して、1973年4月からとしておこう。

前の記事に載せた"Living in the Material World"のT.M.L.刻印はちょっとボケていたので、あらためて載せておく。


20220313-1.jpg


次に、手書きT.M.L.刻印からスタンプのTMLへの変更だが、これは以前、バーブラ・ストライサンド(Barbra Streisand)"The Way We Were"(Columbia PC 32801)の記事で触れたことがある(https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2019-12-28をどうぞ)。

スタンプTMLの画像だけ、あらためて載せておこう。


20191228-05.jpg


少なくとも、このレコードがリリースされた1974年1月時点では、すでにスタンプTMLに変更されていたわけだが、では、スタンプTMLの使用開始はいつだったんだろう?
調べてみたところ、ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)の"For Everyman"(Asylum Records SD 5067)までは遡ることができた。
このレコードのリリースは1973年10月だから、とりあえず、スタンプTMLの使用開始は、前月の1973年9月としておきたい(たまたま見つかったのがここまでなので、もちろん、もっと遡ることができるかもしれない)。

kaori Eさんから、Kris Kristofferson & Rita Coolidgeの"Full Moon"(A&M Records SP-4403)がスタンプTMLだという情報をいただいた。
このレコードは1973年9月リリースなので、カッティングは前月だとすると、スタンプTMLの使用開始は8月まで遡る。
kaori Eさん、ありがとうございました!

では、カッティング・レースによって区別してTML-MとTML-Sを使用するようになったのはいつか?
確認できたのは、ジャクソン・ブラウン"Late for the Sky"(Asylum Records 7E-1017)が最初である。
このレコードがリリースされたのは1974年9月なので、とりあえず、TML-MとTML-Sの使用開始は、前月の1974年8月としておこう。

"Late for the Sky"にはTML-M刻印のカッティングもTML-S刻印のカッティングもあるが、TML-M刻印のほうを載せておく。


20220313-2.jpg


TML-Xの使用開始は、ノイマン製のカッティング・レースが導入されたときなわけだが、すぐに思い浮かぶのはピンク・フロイド(Pink Floyd)”The Wall”(Columbia PC2 36183)で、これは1979年11月リリースだ。
ってことで、使用開始は、その前月の1979年10月としておこう。

まとめると次のようになる。

①1973年4月まで ― 刻印なし
②1973年4月から ― 手書きT.M.L.刻印
③1973年9月8月から ― スタンプのTML刻印
④1974年8月から ― スタンプのTML-M刻印とTML-S刻印の使用開始
⑤1979年10月5月から ― スタンプのTML-Xの使用開始(但し、当初はTML-M刻印に手書きで-X追記)


以上は、リリース月が確定できるもので調べただけなので、③④⑤については、それぞれもう少し使用開始時期は早いかもしれません。
何か関連情報をお持ちの方はぜひお知らせくださいませm(_ _)m


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