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CSの迷宮~太田裕美『木綿のハンカチーフ』 [国内盤研究]

太田裕美『木綿のハンカチーフ』のスタンパー情報は、その後、さっぱり集まってこない。
もう少し集まれば何か見えてきそうな気もするので、自分でも少し買ってみたのだが、そしたらこんなになってしまった。


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もう買いたくない~(笑)

って、まぁ、スタンパー情報だけが目的で買ったわけではないのである。

ノイさんが「中古レコードのタチバナ」さんに取材に行って手に入れた情報は、スタンパー情報だけではなかった。
CSが三種類あり、そのうち「ヒット全曲集」CSに入っていたものが、スタンパーも若く、ダントツで音も良かった、という情報もあった。
つまり、CSが初回盤を探す手がかりになる可能性がある。

それからもうひとつ、このブログの記事にコメントを寄せてくれたいまさんから、CBS SONYのCSには製造年月のようなものが印刷されているとの指摘があった。
まったく気づいていなかったが、確認すると確かにある。
これで、CSが初回盤を探す手がかりになる可能性がさらに高まった。

そんなわけで、CSを手掛かりに、何枚か『木綿のハンカチーフ』を買ってみたのである。


では、『木綿のハンカチーフ』のCSについて情報を整理してみよう。

ノイさんが「中古レコードのタチバナ」さんで確認したものの中で、もっともレイトだと思われるCSは、この白いCSだった。


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もちろん、ボクが持っているこの白いCSは『木綿のハンカチーフ』が入っていたものではない。
これには、山口百恵『横須賀ストーリー』が入っていた。
1976年6月21日にリリースされたシングルだ。

で、このCSの製造年月のようなものは、このようになっている。


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M272が何を意味するのかわからないが、その後の7603 YSは、(YSの部分は謎だが)76年3月だとすると辻褄があう。
もっとも、この(M272)7603 YSと記載されている白いCSは80年代になっても使われているので、7603というのも、英DECCAのCSのような製造年月を示すものではなさそうだ。

では、この(M272)7603 YS、何を示しているのだろうか?
ボクは、この白いタイプのCSの型番号のようなもので、使用開始年月が型番号に埋め込まれているんじゃないかと思うのだがどうだろう?
少なくとも製造年月ではなさそうなので、とりあえず型番号と呼ぶことにしよう。


『木綿のハンカチーフ』に一番多いCSは、この青いCSだと思う。


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このCSの型番号はこうなっている。


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(M26)75 7 YSである。
75 7が75年7月であって使用開始年月を示しているとすると、『木綿のハンカチーフ』のリリースは75年12月21日だから、初回盤にもこのCSが使われていた可能性はある。
しかし、「ヒット全曲集」CSが初回盤に使用されたとすると、青の汎用CSは使用が停止されていた可能性もある。

ってことで、「ヒット全曲集」CSがいつから使用されたのかということが問題だ。

では、「ヒット全曲集」CSを確認しよう。


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しかし、このCSには年月に該当するようなものは印刷されていない。


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汎用CSとは異なり、このように(M246)だけなのである。
つまり、手がかりは、この「ヒット全曲集」が発売されたのが1975年11月1日だということしかないわけだ。

まぁ、でも、普通に考えれば、こういうCSは発売予告のために使用されるものだろう。
そうだとすれば、1975年9月遅くとも10月には使用が開始されたと考えられる。
ちょっと調べてみると、山口百恵『ささやかな欲望』(1975年9月21日発売)が、きわめて高確率で「ヒット全曲集」CSだ(ヤフオクで検索してチェック)。
やはり、「ヒット全曲集」CSは、1975年9月から使用されたことは間違いなさそうだ。
そうだとすると、『木綿のハンカチーフ』初回盤のCSは、やはり「ヒット全曲集」CSだということになる。

これでもうCSについては決着がついた気がしていたのだが、ヤフオクの出品を見ていると、緑のCSなのに「ヒット全曲集」CSではないものが付属しているものがあるのだ。

実は、青のCSの前の汎用CSは緑だった。
たとえば、太田裕美『雨だれ』(1974年11月1日発売)は、こんなCSだ。


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このCSの型番号は、こうなっている。


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(M26) 7402 KYである。
M26とKYが謎だが、7402が74年2月を意味しているとすると、このCSが『雨だれ』に使用されているのは辻褄が合うが、『木綿のハンカチーフ』に使用されているのは不可解である。
すでに75年7月には青いCSに切り替わっているはずだからである。

最初の一枚を見つけたときは、単に、どっかで入れ替わったんだろうという程度にしか思っていなかった。
しかし、もう一枚見つけると不安になってきた。
さらにもう一枚見つけたときには、即決だったこともあり、思わず落札ボタンを押してしまっていた・・・


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『雨だれ』のCSよりは少しくすんだ色だが、これは単に汚れとか経年劣化とかのせいか、そうでなくても個体差にすぎないだろうと思った。

しかし・・・


20210223-12.jpg


へ?
(M26)75 7 YS?

そう、『雨だれ』のCSとではなく、青い汎用CSの方とまったく同じ型番号なのである。

これはいったいどういうことなんだろう?


中に入っていたレコードのスタンパーを見てみよう。

すでに報告したように、最初に買った「ヒット全曲集」CS付きはA2/B1というマト2盤だった。
2枚目に買った「ヒット全曲集」CS付きは、A1/B1のマト1盤で、スタンパーは、Side 1が1A7、Side 2が1A13だった。
そして緑の汎用CS付きは、なんと、A1/B1のマト1盤で、スタンパーは、Side 1が1A7、Side 2が1A13、つまり、2枚目に買った「ヒット全曲集」CS付きとまったく同じスタンパーだったのである。
スタンパーが同じだけあって、音のほうも、大きな差はない。

これでは、まったく前後関係が推測できない。
ってことで、CSの迷宮に入り込んでしまったのである。

果たしてこの迷宮から抜け出せる日は来るのだろうか?

タグ:太田裕美
コメント(8) 
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コメント 8

いま

こんにちは

調べていくと色々と謎が増えるのは
レコード調査あるあるですね。

(M26)75 7 YSの緑のスリーブ
(緑というより74年版より薄く、退色したような感じ。どちらかというと抹茶色)
ですが、私の所持しているレコードでも1枚ありました。
タイトルはキャンディーズ「その気にさせないで」です。

この曲は1975年9月1日リリースとなっているので
このスリーブは初期リリースではと思いますが、
A面とB面マザー、スタンパーはB 16、B 13だったので
最初期プレスではなさそうです。


あくまで見た印象からの推測になってしまいますが
緑と青のスリーブの(M26)75 7 YSの文字は同じと思いますので
青色変わりの前にこの日付などが入ったスリーブが誤って
緑スリーブのまま刷られてしまったのではないでしょうか。

また、これらに直接関係ないですが、同じ緑色で
M-26-KY-7504
と入ったスリーブを発見しました。

上記の75 7のスリーブと書き方が異なるのも気になりますが
75年4月使用開始と仮定して、僅か3か月後に青色の
スリーブへ変更になったのでしょうかね?
KY-7504用の緑スリーブに誤って75 7の刻印を打たれたのか?

謎ですね






by いま (2021-02-25 17:17) 

阪蔵

60年代から70年代のソニーの緑色のCSは年代によって何パターンかあり、数字は製造年月ではなく製造開始年月です。
青色のCSやヒット全曲集広告のCSはごく短期間しか使用されませんでした。
ソニーのCSは他のメーカーより年代特定しやすいのですが、大手の中古レコード店では中古のCSをメーカーごとにストックして中古盤のCS差し換えは珍しくありません。メーカーは合っているけど時期違いのものも結構売られていますので注意が必要かもしれません。
by 阪蔵 (2021-02-25 21:48) 

想也

いまさん

キャンディーズの『その気にさせないで』はドンピシャですね。
この時期のキャンディーズで、そのスタンパーなら初回プレスに含まれるんじゃないですかね?

「緑から青への切替時に誤って少数が緑で刷られた」という仮説は私も考えました。
ヒット全曲集CSが緑なんで間違えたのかなと。

また、間違いではなく、「ヒット全曲集CSとの関係で、意図的に緑と青と二種類作った」という仮説も考えました。
色で時期を区分することを考えると、ヒット全曲集CSまでは緑、その後青のほうが混乱しないかなと。

後者の仮説だと、青CSはヒット全曲集CSの後まで使用されないことになります。
とりあえず、この線で、何か裏付けになるものがないかなーと探しております。

M-26-KY-7504は気になりますねぇ。
これも、ちょっと気にして探してみたいと思います。

貴重な情報ありがとうございました(^^)

by 想也 (2021-02-25 23:43) 

想也

阪蔵さん

私の推測が当たっていたようでよかったです(^^)

確かに、中古レコード店でのCS入れ替えの可能性は常に注意しておく必要がありますね。
中古レコード店では、盤とジャケットとインナースリーブなどの付属品の美品を合体させて、美品の完品として高い価格で売るなんてことも普通に行われていましたから、CSの入れ替えなんて、きっと日常茶飯事だったでしょう。

by 想也 (2021-02-25 23:54) 

いま


こんにちは
お返事ありがとうございました


後者の仮説だと、青CSはヒット全曲集CSの後まで使用されないことになります。
とりあえず、この線で、何か裏付けになるものがないかなーと探しております。


>なるほど。であれば75年7月から9月あたりにリリースされた
CBSソニーのシングルを調べていくのが一つの方法ですかね

品番でいうとSOLB-284
(池上季実子・あなたなら 7/21リリース)あたりから
SOLB-319(山口百恵・ささやかな欲望 9/21リリース)
になるかと思います


参考までに、この時期リリースのある程度ヒットしたと
思われるビックネームのタイトルは以下です。

郷ひろみ・誘われてフラメンコ
(75年7月21日リリース、オリコン最高2位)
太田裕美・夕焼け
(75年8月1日リリース、オリコン最高37位)
山口百恵・ささやかな欲望
(75年9月21日リリース、オリコン最高5位)

ヤフオクなどで検索してみましたが、スリーブは7402の方と
思われる退色していない緑のが多く見られましたが
実物をみないと刻印はわからないですね。。

by いま (2021-02-26 11:56) 

想也

いまさん、どうも。

山口百恵『ささやかな欲望』は、記事中にも書いてありますが、ほとんどヒット全曲集CSですね。
いまヤフオクでCSが確認できる出品を確認すると、ヒット全曲集12枚、白1枚、青2枚、緑1枚でした。
太田裕美『夕焼け』になると、緑CSのみで、ヒット全曲集CSもはっきりと確認できたのは一枚もありませんし、青CSもありません。
緑CSはどっちなのか確定できませんが。

まぁ、ボチボチと探ってみたいと思います。

by 想也 (2021-02-26 17:04) 

阪蔵

肝心の木綿のハンカチーフのCSですが、初回盤はヒット全曲集のCS、もしくは緑のCSのどちらかだと思います。
見本盤と同じくヒット全曲集のCSと考えるのが妥当だと思いますが混在していた可能性も否定はできません。

74〜76年頃のソニーのCSは、緑の型番号7402、緑の型番号7402(同じ型番号で上部両角を丸くカットしたタイプ)、緑の型番号7504、緑の型番号75 7、青の型番号75 7、白の型番号7603の順番で使われていました。
これに加えてヒット全曲集のCSはエピック・ソニーの浅田美代子、麻生よう子も含め企画盤のヒット全曲集(75年版)が発売されているアーチスト専用のカスタムスリーブで、宣伝用に75年秋頃から使用されたもののようです。

CSの型番号はおそらく版の製作年月で、新タイプCSに切り替える際には旧タイプCSの在庫をある程度使いきる必要があるため実際に使用開始されるまでには数ヶ月タイムラグが生じたはずです。クラウンは残余の旧タイプCSを見本盤用として使用していましたが、CBSソニーの場合は基本的に見本盤もレギュラー盤と同じCSが使用されていました。
ちなみに76年4月21日発売の浜田省吾のシングルは見本盤も初回盤も青のCSなので、白の型番号7603のCSはまだ使用開始されていなかったのだと思われます。
by 阪蔵 (2021-02-26 18:32) 

想也

阪蔵さん

貴重な情報ありがとうございます。

『木綿のハンカチーフ』の初回盤CSは、ボクも、基本的にはヒット全曲集CSだったけれども、緑のCSも少し混在していたんじゃないかと推測してました。

緑の型番号7402に二種類あるのはまったく気づいてませんでした。
というか、うちにはそれに気づくほどありませんσ^_^;
タイムラグのお話も興味深かったです。

また、いろいろ教えてください。

by 想也 (2021-02-26 22:48) 

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