SSブログ

Karla Bonoff, Restless Nightsをめぐるあれこれ(2)ーUS盤 [Bernie Grundman(BG)の仕事]

さて、では、カーラ・ボノフ(Karla Bonoff)"Restless Nights"のUSオリジナルの話である。
実は、前の記事より先に書き終えていたのだが、記事数を見たら998だったので、どうせなら1000記事めはこのブログらしい検証記事のこちらにしようと、順番を入れ替えた(笑)


20211223-01.jpg


手前3枚がUS盤(Columbia JC 35799)だが、ジャケットの外観については、微妙な差はあるものの個体差にすぎないと思う。
歌詞インナースリーブも現時点では違いを発見していない(日本盤に付属しているものともレコード番号が違う以外は同じで、切り込みや紙質の違いぐらいしかない)。

しかし、この3枚の素性は明らかに違う(笑)

最初に入手したUS盤は、こんなレーベルで、マト1B/1Aのサンタマリア工場プレスだった。


20211223-08.jpg


1A/1Aのほうが気持ちが良いが、1B/1Aでも悪くはない。

それに、この通り、送り溝の文字の中には、「る」に見える「3」が確認できるので、バーニー・グランドマン(Bernie Grundman)=BGの筆跡で間違いない。


20211223-09.jpg


音質的にも、低域が沈み込んでボーカルが浮かびあがり、前後に空間が広がる感じで、音量を上げれば上げるほど、日本盤より好ましく響く。

だから、この盤で満足していたのだが、たまたま1A/1Aの盤を見つけてしまった(当然、サンタマリア工場プレス)。
当然だが、これも、送り溝の筆跡から、BGのカッティングで間違いない。


20211223-10.jpg


まぁ、でも、音質的には大差ないだろうと思いきや、けっこう違う。
ラッカー違いの差というより、スタンパーのなまり具合に起因する鮮度感の違いである。
送り溝のスタンパーらしき記号を確認すると、1A/1A盤はB5/A2で、1B/1A盤はA12/A7だ。
大きな差があるわけではないが、違いはある。

いや、それよりも、こっちのほうが違いとしては大きい。


20211223-11.jpg


1A/1A盤のほうのレーベルには、下部に"Produced by Kenny Edwards"のクレジットがないんである。
こういうクレジットは、あったものを後から削るというのは考えにくい。
それに、再発のPCプリフィックスの盤をDiscogsで確認すると、しっかり"Produced by Kenny Edwards"がクレジットされている。

つまり、初回盤は、レーベルに"Produced by Kenny Edwards"のクレジットがなかったんだと推測されるのである。
そうだとすれば、1B/1A盤と1A/1A盤は、プレス時期に違いがあったということになる。

さて、もう1枚のUS盤は、ジャケットにTiming Stripが貼られていないが、裏ジャケットに金文字スタンプが押してあるWLPである。


20211223-12.jpg


このWLPのレーベルにも、"Produced by Kenny Edwards"のクレジットはない。


20211223-13.jpg


やはり、初回盤は、"Produced by Kenny Edwards"クレジットなしで間違いないと思う。

確認のため、DiscogsのUS盤の登録を一応全部チェックしたら、リイシュー盤として登録されているものに、"Produced by Kenny Edwards"クレジットがあるからリイシューだとしているものがあった。
どうやら、一部では認識されている事実らしい。
もっとも、後述するように、このクレジットの追加はリリース後それほど間を置かずに行われたと考えられるので、これをリイシューと言うのには違和感があるが。

そうそう、Discogsには「ジャケットにバーコード無し」で登録していて画像も載せてないのがあるが、あれは間違いだと思う。
このアルバムがリリースされた79年の9月だと、コロンビアはすでにジャケットにバーコードを印刷するようになっている。

さて、音質だが、テレホートのくせにWLPがもっとも鮮度の高い音がする。
マトは、テレホートなんで1K/1Eなのだが、やっぱり同時に切ったラッカーの間には音質差はほとんどないことが多いようだ。
つまり、スタンパーのなまり具合によって生じる音質差のほうが大きいということである。

まぁ、WLPと1A/1A盤は微妙な違いなんだけどね。
レイトの1B/1A盤は、聴き比べると、かなりはっきり違うよ。

ってことで、このアルバムが好きな人は、"Produced by Kenny Edwards"クレジットのないUSオリジナルを探してくださいませ。

ちなみに、US盤のリリースからそれほど遅れずリリースされた日本初回盤(解説の脱稿日が1979年9月となっているので、たぶん、1~2か月後かな?)にはすでに"Produced by Kenny Edwards"がクレジットされているので、US盤にクレジットが追加されたのも、それほど時間が経ってからではなく、リリース後わりとすぐだったんじゃないかと思う。
そんなわけで、"Produced by Kenny Edwards"クレジットなしの盤もそんなに珍しくないものの、市場にはクレジットありの盤も多いので、テキトーに買うとレイトを掴むことも多いかもしれないよ。

タグ:Karla Bonoff
コメント(4) 
共通テーマ:音楽

コメント 4

kaori E

私はお待ちしてましたよ笑
手持ちの白はピットマンで 1H/1Cです。
Cの刻印も個性的で面白いですね。
http://imepic.jp/20211225/163630
http://imepic.jp/20211225/163850


ご存知かもしれませんが
余命幾ばくも無いケニーと共に歌われるこの映像。
涙を抑えられないJ.Dの姿に言葉もありません。
https://youtu.be/-UyXioR547o
by kaori E (2021-12-25 04:38) 

想也

kaori Eさん

お待ちいただきありがとうございます(笑)
ピットマンのWLPは良いですねぇ。
いままでCの特徴には気がついてませんでしたが、確かに、そのCは個性的ですね。

この映像は初めて見ました・・・
いま泣きそうになってます・・・
日付を見ると、亡くなる2か月前ですね。
これが最後の舞台だったのでしょうか。
ケニーは闘病生活のすえに亡くなったようなので、これがいっしょに立てる最後の舞台と思ったら堪えきれなかったんでしょうね。
しかも、The Water Is Wide・・・
ケニーは、決して行き来のできない広い川の向こう岸に行ってしまおうとしているのですから。

by 想也 (2021-12-25 10:11) 

koss

想也 さん
ステッカーが貼ってあるUSオリジナル盤を手に入れました。
"Produced by Kenny Edwards"のクレジットなしで、
XT PAL 35799-1N
T PAL 35799-1E でした。これはどこのプレスですかね?かなり進んでいますよね~?

確かに想也さんのおっしゃる通り日本盤も頑張っていますね。
聴き比べると 音量を上げるとUS盤の方が中低音が豊に鳴っていますね。日本盤はカラットした音ですね。
これは意外でした。

また アナログの楽しみを教えていただいて、ありがとうございました。

by koss (2022-01-23 10:06) 

想也

kossさん

ステッカー付きでも、Kennyクレジットなしでしたか。
Tは中部のテレホート工場ですし、XTというのは別工場で使われてたスタンパーがテレホートに送られた場合に使われるようなので、プレス工場はテレホートで間違いないと思います。
アルファベットの進み具合からみても、時期的にはちょっと後っぽいのに不思議ですね。
いずれにしても、貴重な情報、ありがとうございました!

by 想也 (2022-01-23 11:36) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント