Tears For Fears, Songs from the Big ChairのUKオリジナル・ファーストプレス [アナログ・コレクターの覚書]
さて、いよいよ、UK盤(Mercury MERH 58)の初盤判定の話である。
日本盤の話もUS盤の話も、オランダ盤の些細な違いの話でさえも、ボクとしては興味深いと思って書いてきたのだが、UK盤の初盤判定の話は、その比ではない。
10倍くらい興味深い話である(個人の意見です 笑)。
US盤に関する記事で書いたように、"Songs from the Big Chair"のオリジナルがUS盤のわけがない。
だとしたら、当然のことながら、UK盤がオリジナルである。
そのUKオリジナルには、初盤判定をまどわすトラップが仕掛けられているのである。
ほら、貴方も興味が湧いてきたでしょう?
確かに、先入観さえ持っていなければ回避できるトラップではあるかもしれない。
しかし、ボクはしっかりとそのトラップにハマってしまったのであった。
では、本題に入ろう。
ここに2枚のUK盤がある。
違いは、見ての通り、ステッカーである。
一方は黄金に輝く金色ステッカー、もう一方は銀色ステッカーと言いたいところだが、これは銀色ではなく白である。
金と白、どっちが初回盤ぽいだろう?
「おまえはオリンピックに出場するアスリートにでもなったつもりか?」と言われそうだが、ボクには金色ステッカーが初回盤オーラを放っているように見えた。
おまけに、金色ステッカージャケに入っていた盤のマトはA1/B1で、両面マト1である。
それに比べて、白ステッカージャケに入っていた盤のマトはA3/B2だ。
ボクは、金色ステッカーが初回で白ステッカーはレイトと思い込んだ。
見事にトラップにハマってしまったのであった。
「木を見て森を見ず」というが、これはむしろ「森を見て木を見ず」といったところか。
ステッカーに書かれている内容をちゃんと見さえすれば、そんなトラップにハマることはなかったのだ。
白ステッカーに印刷されているのは、"Shout"、"Mothers Talk"、"Everybody Wants to Rule the World"の3曲である。
他方金色ステッカーに印刷されているのは、"Head Over Heels"を加えた4曲だ。
"Songs from the Big Chair"に収録されているシングルは、84年8月6日リリースの"Mothers Talk"、84年11月19日リリースの"Shout"、85年3月18日リリースの"Everybody Wants to Rule the World"、85年6月10日リリースの"Head Over Heels"、85年9月30日リリースの"I Believe"である。
つまり、"Songs from the Big Chair"が発売された85年2月25日の時点では、発売されていたシングルは"Mothers Talk"と"Shout"、発売が予定されていたシングルが"Everybody Wants to Rule the World"だから、初回盤に貼られたステッカーに印刷されることがあるのはこの3曲であって、6月リリースの"Head Over Heels"まで印刷されているわきゃーないんである。
つまり、初回盤に貼られていたステッカーは白ステッカーだということになる。
"Head Over Heels"まで印刷されている金色ステッカーは、おそらく5月以降に出荷されたものだろう。
では、白ステッカーなら初回盤でいいのかというと、実は白ステッカー時代にすでにレーベル変更が行われているのである。
白ステッカーというだけじゃダメなのだ。
わかりやすいSide 2の方から見てみよう。
初回盤レーベルは、楽曲クレジットがこんな奇妙なバランスになっている。
アルバムタイトルと1曲目2曲目のフォントが異様に小さい。
それに対して、変更後のレーベルは、2曲目をスピンドルホールの下に移動したので、フォントの大きさがそろっている。
初回盤レーベルは、どう考えてもミスだと思うのだが、でっかいミスを修正した結果だったんじゃないかと推測する。
日本盤に関する記事のところでも書いたことだが、Side 2のレーベル・クレジットは実にややこしい。
”Broken”のライブバージョンは"Head Over Heels"のあとにちょっとくっついているだけだから、実質4曲であるにもかかわらず、レーベル・クレジット上は”Broken(Live)”も1曲としてカウントされている。
これ、最初にレーベルを作ったとき、同じ曲が2回クレジットされているのを間違いだと勘違いしたんじゃないだろうか?
(歓声が収録されているのは確認できるし)(Live)とついている方が収録されているもので、ついてないほうは実際には収録されていないんじゃないかと思って、レーベル原稿には2曲目"Broken"で4曲目”Broken(Live)”とあるのに、2曲目のほうを削除したうえでレーベルを作ってしまったんだと思うのだ。
ところが、2曲目もクレジットしないといけないということになって、スピンドルホール上の1曲だけクレジットされているスペースに無理矢理2曲をぶちこんだと。
その結果、この奇妙なバランスの初回盤レーベルが出来上がったんだと思うのである。
さて、つい先日TLで教えてもらうまでボクは気づいていなかったのだが、Side 1のほうにも違いがある。
しかも、この違いは、かなり決定的だ。
初回盤のレーベルは、3曲目"Everybody Wants to Rule the World"のパブリシャーも、ほかの曲と同じくVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.となっている。
それに対して、変更後のレーベルは、3曲目"Everybody Wants to Rule the World"のパブリシャーのみVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.にAmusements Ltd.が加えられている。
このAmusements Ltd.というのを調べてみると、どうやら、クリス・ヒューズ(Chris Hughes)が、この"Everybody Wants to Rule the World"への楽曲関与に関連して、自分の著作権管理のために立ち上げた会社らしい。
しかも、3月18日リリースのシングル盤(Mercury IDEA 9)にはまだVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.しか記載されていない。
つまり、A3のパブリシャー表記にAmusements Ltd.が加わるのはその後ということになる。
ってことで、UKオリジナル・ファーストプレスは、白ステッカーで、レーベルは、Side 1ではA3のパブリシャーがVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.のみ、Side 2では2曲目まではフォントが小さく奇妙なバランスになっているもの、ということになる。
白ステッカーでも、変更後のセカンド・レーベル盤が入っていることがあるので注意が必要だ。
マトについては、両面とも1から3まで同時に切られたんだと思う。
そう考えると、うちのA1/B1の両面マト1盤のスタンパーは1214/1226と不揃いでいかにもレイトであるのに対して、A3/B2のほうのスタンパーは131/131と揃っていて、初回盤らしい。
実際、A3/B2盤のほうがはるかに良い音がする。
もちろん、A1/B1の若いスタンパーの盤が一番気持ち良いが、マト3まで同時にカッティングされたんだとすると、音質的にマト1が優位とは限らない。
マト1からマト3まで、どれが良いかは、若いスタンパーの盤を手に入れて、実際に聴き比べてみなきゃわからないと思う。
さしあたり、ボクは、A3/B2で満足だ。
Discogsを見ると、マトA1/B3でスタンパーが111/111なんて盤が登録されている。
両面マト1なんてことにこだわっていると、鮮度の高い良音盤を見逃すことになりかねないので注意が必要である。
最後にマスタリングについて触れておくと、UKオリジナルは、アビーロード・スタジオのマスタリング部門として1980年に開設されたThe Penthouseで、Nick Webbによって行われている。
送り溝には、Penthouseの刻印とNickzというサインが確認できる。
ファーストプレスを手に入れれば、オリジナルらしい実に鮮度の高い音が堪能できるよ。
日本盤の話もUS盤の話も、オランダ盤の些細な違いの話でさえも、ボクとしては興味深いと思って書いてきたのだが、UK盤の初盤判定の話は、その比ではない。
10倍くらい興味深い話である(個人の意見です 笑)。
US盤に関する記事で書いたように、"Songs from the Big Chair"のオリジナルがUS盤のわけがない。
だとしたら、当然のことながら、UK盤がオリジナルである。
そのUKオリジナルには、初盤判定をまどわすトラップが仕掛けられているのである。
ほら、貴方も興味が湧いてきたでしょう?
確かに、先入観さえ持っていなければ回避できるトラップではあるかもしれない。
しかし、ボクはしっかりとそのトラップにハマってしまったのであった。
では、本題に入ろう。
ここに2枚のUK盤がある。
違いは、見ての通り、ステッカーである。
一方は黄金に輝く金色ステッカー、もう一方は銀色ステッカーと言いたいところだが、これは銀色ではなく白である。
金と白、どっちが初回盤ぽいだろう?
「おまえはオリンピックに出場するアスリートにでもなったつもりか?」と言われそうだが、ボクには金色ステッカーが初回盤オーラを放っているように見えた。
おまけに、金色ステッカージャケに入っていた盤のマトはA1/B1で、両面マト1である。
それに比べて、白ステッカージャケに入っていた盤のマトはA3/B2だ。
ボクは、金色ステッカーが初回で白ステッカーはレイトと思い込んだ。
見事にトラップにハマってしまったのであった。
「木を見て森を見ず」というが、これはむしろ「森を見て木を見ず」といったところか。
ステッカーに書かれている内容をちゃんと見さえすれば、そんなトラップにハマることはなかったのだ。
白ステッカーに印刷されているのは、"Shout"、"Mothers Talk"、"Everybody Wants to Rule the World"の3曲である。
他方金色ステッカーに印刷されているのは、"Head Over Heels"を加えた4曲だ。
"Songs from the Big Chair"に収録されているシングルは、84年8月6日リリースの"Mothers Talk"、84年11月19日リリースの"Shout"、85年3月18日リリースの"Everybody Wants to Rule the World"、85年6月10日リリースの"Head Over Heels"、85年9月30日リリースの"I Believe"である。
つまり、"Songs from the Big Chair"が発売された85年2月25日の時点では、発売されていたシングルは"Mothers Talk"と"Shout"、発売が予定されていたシングルが"Everybody Wants to Rule the World"だから、初回盤に貼られたステッカーに印刷されることがあるのはこの3曲であって、6月リリースの"Head Over Heels"まで印刷されているわきゃーないんである。
つまり、初回盤に貼られていたステッカーは白ステッカーだということになる。
"Head Over Heels"まで印刷されている金色ステッカーは、おそらく5月以降に出荷されたものだろう。
では、白ステッカーなら初回盤でいいのかというと、実は白ステッカー時代にすでにレーベル変更が行われているのである。
白ステッカーというだけじゃダメなのだ。
わかりやすいSide 2の方から見てみよう。
初回盤レーベルは、楽曲クレジットがこんな奇妙なバランスになっている。
アルバムタイトルと1曲目2曲目のフォントが異様に小さい。
それに対して、変更後のレーベルは、2曲目をスピンドルホールの下に移動したので、フォントの大きさがそろっている。
初回盤レーベルは、どう考えてもミスだと思うのだが、でっかいミスを修正した結果だったんじゃないかと推測する。
日本盤に関する記事のところでも書いたことだが、Side 2のレーベル・クレジットは実にややこしい。
”Broken”のライブバージョンは"Head Over Heels"のあとにちょっとくっついているだけだから、実質4曲であるにもかかわらず、レーベル・クレジット上は”Broken(Live)”も1曲としてカウントされている。
これ、最初にレーベルを作ったとき、同じ曲が2回クレジットされているのを間違いだと勘違いしたんじゃないだろうか?
(歓声が収録されているのは確認できるし)(Live)とついている方が収録されているもので、ついてないほうは実際には収録されていないんじゃないかと思って、レーベル原稿には2曲目"Broken"で4曲目”Broken(Live)”とあるのに、2曲目のほうを削除したうえでレーベルを作ってしまったんだと思うのだ。
ところが、2曲目もクレジットしないといけないということになって、スピンドルホール上の1曲だけクレジットされているスペースに無理矢理2曲をぶちこんだと。
その結果、この奇妙なバランスの初回盤レーベルが出来上がったんだと思うのである。
さて、つい先日TLで教えてもらうまでボクは気づいていなかったのだが、Side 1のほうにも違いがある。
しかも、この違いは、かなり決定的だ。
初回盤のレーベルは、3曲目"Everybody Wants to Rule the World"のパブリシャーも、ほかの曲と同じくVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.となっている。
それに対して、変更後のレーベルは、3曲目"Everybody Wants to Rule the World"のパブリシャーのみVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.にAmusements Ltd.が加えられている。
このAmusements Ltd.というのを調べてみると、どうやら、クリス・ヒューズ(Chris Hughes)が、この"Everybody Wants to Rule the World"への楽曲関与に関連して、自分の著作権管理のために立ち上げた会社らしい。
しかも、3月18日リリースのシングル盤(Mercury IDEA 9)にはまだVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.しか記載されていない。
つまり、A3のパブリシャー表記にAmusements Ltd.が加わるのはその後ということになる。
ってことで、UKオリジナル・ファーストプレスは、白ステッカーで、レーベルは、Side 1ではA3のパブリシャーがVirgin Music(Publisher) Ltd./10 Music Ltd.のみ、Side 2では2曲目まではフォントが小さく奇妙なバランスになっているもの、ということになる。
白ステッカーでも、変更後のセカンド・レーベル盤が入っていることがあるので注意が必要だ。
マトについては、両面とも1から3まで同時に切られたんだと思う。
そう考えると、うちのA1/B1の両面マト1盤のスタンパーは1214/1226と不揃いでいかにもレイトであるのに対して、A3/B2のほうのスタンパーは131/131と揃っていて、初回盤らしい。
実際、A3/B2盤のほうがはるかに良い音がする。
もちろん、A1/B1の若いスタンパーの盤が一番気持ち良いが、マト3まで同時にカッティングされたんだとすると、音質的にマト1が優位とは限らない。
マト1からマト3まで、どれが良いかは、若いスタンパーの盤を手に入れて、実際に聴き比べてみなきゃわからないと思う。
さしあたり、ボクは、A3/B2で満足だ。
Discogsを見ると、マトA1/B3でスタンパーが111/111なんて盤が登録されている。
両面マト1なんてことにこだわっていると、鮮度の高い良音盤を見逃すことになりかねないので注意が必要である。
最後にマスタリングについて触れておくと、UKオリジナルは、アビーロード・スタジオのマスタリング部門として1980年に開設されたThe Penthouseで、Nick Webbによって行われている。
送り溝には、Penthouseの刻印とNickzというサインが確認できる。
ファーストプレスを手に入れれば、オリジナルらしい実に鮮度の高い音が堪能できるよ。
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