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WARNERのCBS SONYプレスー上田知華+KARYOBIN(3) [国内盤研究]

昨日の記事で取り上げた『さよならレイニー・ステーション』が収録されている上田知華+KARYOBINのサード・アルバム(WARNER-PIONEER L-12003E)は、ワーナー・パイオニアの国内盤を研究するうえで、なかなか興味深い情報を提供してくれるものなので、良い機会だし、ここで紹介しておきたい。

このレコードをボクは二枚持っている。
一枚は発売当時に購入した通常盤、もう一枚は何年か前に入手した見本盤だ。


20210704-1.jpg


発売当時に入手した通常盤のレーベルはこうなっている。


20210704-2.jpg


一方、見本盤のレーベルはこうだ。


20210704-3.jpg


このブログの熱心な読者(なんているのか? 笑)ならすでにお気づきかと思うが、見本盤は、そのレーベル形状(とくにセンターの円の大きさ)から、CBS SONYプレスであることがわかる。

送り溝にも、CBS SONYプレスであることを示すと思われるPMが確認できる。


20210704-4.jpg


0S67と刻印されている。
CBS SONYを示すSをはさんで、その前の0は1980年を、その後の67はまず6月に使用され、次に7月に使用されたことを示すと考えられる。

「見本盤のくせに二回目のプレスかよ・・・」という不満はおいといて(笑)、このレコードの発売日は1980年7月25日なので、通常なら見本盤は当月プレスで間に合うが、何かの事情でちょっと早めにプレスする必要があり、6月末の段階で最初のプレスが行われたのだろう。

もしかしたら、それまで東芝EMIか東洋化成を利用していたワーナーがCBS SONYにもプレス委託を始めた最初のレコードのうちの一枚で、そのため早めの試しプレスが行われたのかもしれない。
ワーナーのCBS SONYプレスについては、以前記事にしことがある(下記)が、そこで取り上げた柳ジョージ&レイニーウッド『Woman and I OLD FASHIONED LOVE SONGS』(Atlantic L-6305-6A)も、1980年7月25日発売である。
つまり、上田知華+KARYOBIN(3)と同日発売なのだ。

https://sawyer2015.blog.ss-blog.jp/2021-03-06

いずれにしても、0S67は、1980年7月プレスを意味するCBS SONYのPMと考えてよさそうだ。


一方、通常盤のほうは、レーベル上の非常にわかりにくいPMなので写真は割愛するが、0T9という刻印が確認できた。
つまり、東洋化成による1980年9月プレスである。

ボクがこのレコードを何月に購入したかは、すでに40年以上前なのでまったく記憶にない。
しかし、倉田まり子さんのシングルが発売されたのが1980年9月21日なので、レッツゴーヤングに上田知華+KARYOBINが出演して『さよならレイニー・ステーション』を演奏したのは、おそらくその前後だろう。
それを観てボクはレコード店に走った(といっても、すぐさま買えたわけではなく、お小遣いを待って、場合によっては貯めて買った)わけだから、1980年9月プレスで辻褄があう。

では、初回盤がすべてCBS SONYプレスで、レイトが東洋化成プレスだったのかというと、そうではないと思う。
というのも、送り溝のレコード番号刻印については、見本盤も通常盤もまったく同じで、次のようなものだったからである。


20210704-8.jpg


これは、東洋化成プレスに見られる刻印だろう。
つまり、CBS SONYプレスも、カッティングは東洋化成で行われ、プレスのみがCBS SONYに委託されたんじゃないかと推測する。

なかなか興味深いのは、見本盤のCBS SONYプレスと通常盤の東洋化成プレスのマトの違いだ。
通常盤がマト4だったので、もっと若いのがあるんじゃないかと見本盤を買ってみたのだが、やはりマト4だった。
しかし、どう見ても4の刻印が違うんである。

比較しやすいSide 2の刻印を見てみよう。


20210704-5.jpg
(CBS SONYプレスの見本盤のマトで、4-A-3と刻印されている。)


20210704-6.jpg
(東洋化成プレスの通常盤のマトで、4-C-15と刻印されている。)

フォントが違ううえに文字の大きさも若干違うし、ハイフンの打ち方も違う。
では、CBS SONYと東洋化成がそれぞれカッティングしたのかといえば、そこまで売れたレコードではないからその必要性もなかっただろうし、そもそも、前にも書いた通り、送り溝のレコード番号刻印からして、見本盤も通常盤も東洋化成カッティングだと思われるのだ。

メッキ処理はCBS SONYと東洋化成の両方で行われたとしても、その場合、東洋化成からCBS SONYに渡されたのはマザーだろうから、ラッカー・ナンバーを示す最初の数字と、マザー・ナンバーを示す次のアルファベットまでは刻印されていたはずだ。
そう考えると、見本盤と通常盤のマトの違いは、実に不可解なのである。

その謎を解く鍵は、見本盤のSide 1のマトの刻印にある。
いや、断言はできない。
「そうなんじゃないかな?」という推測の手がかりという程度である。


20210704-7.jpg


Side 1のほうの4の刻印は、ぱっと見た感じ手書きのように見えるし、こうして拡大写真をとると、二重刻印のように見える。

つまり、東洋化成でカッティングされメッキ処理されて製造されたマザーには、確かにラッカー・ナンバーとマザー・ナンバーを示す刻印(つまり4-Aまで)はあったのだが、意図的なのか偶然なのか、その刻印が非常に薄く、CBS SONYでのメッキ処理の段階で打ちなおしが行われたんじゃないかと思うのだが、どうだろう?

何か情報をお持ちの方、ぜひご教示くださいませm(_ _)m

タグ:上田知華
コメント(2) 
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コメント 2

酒井隆志

はじめまして。いつも楽しく読ませていただいております。想也さんのレコードへのあくなき探究心には頭が下がる思いです。おかげで私も数少ない(400枚余りですが)所有レコードの送り溝の読み取りを行って、データベース化しております(コロナ禍での巣ごもり期間がいいきっかけにもなりました)。そのなかで、今ひとつわからなくなってきていることがあります。送り溝部分のスタンパー番号(記号)についてです。この記号はスタンパーに直接刻まれるのですか?そうすると、スタンパーの凸部分が最終的なレコードの音溝の凹部分になるのに、スタンパーの凹部分の記号がレコードに刻まれるというということは起こりうることなのでしょうか?このあたりのところがちょっと理解しにくいので、よろしければご教示お願いいただけないでしょうか。

by 酒井隆志 (2021-07-14 22:13) 

想也

酒井隆志さん、はじめまして。

いつもお読みいただいているとのこと、ありがとうございます(^^)

レコードはラッカー凹→マスター凸→マザー凹→スタンパー凸とメッキ処理で製造されて、スタンパーを使ってプレスされるわけですが、そのそれぞれの段階で刻印が打たれることがあります。
ラッカーやマザー段階で打たれた刻印は、送り溝には凹で刻まれていますが、マスターやスタンパー段階で打たれた刻印は、送り溝には凸で刻まれています。
凸なので刻まれるというか、浮き出ている感じですね。
スタンパー段階の刻印は浅いものが多いので、凸であるのことを判別しづらいですけどね。

by 想也 (2021-07-15 01:15) 

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