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『ルビーの指環』初回盤と謎のアルファベット [国内盤研究]

<NJoobuさんから、謎のアルファベットUの意味について情報をいただいたので追記しました。>(2023年3月29日)

東芝EMIからリリースされたレコードの初回盤を探すのは簡単である。
発売月がわかれば、その前月プレスの盤を探せばよい。
いつプレスされたかは、送り溝のPMで判定できる。

とはいえ、見つけ方はわかっても、なかなか見つからないということはある。
たとえば、寺尾聰さんの『ルビーの指環』なんか、発売日の前月プレスの盤なんて、なかなか見つからない。

WIKIによれば、このシングル、1981年2月5日にリリースされたのだが、「発売当初はさほど売れていなかったが、発売から約1か月程経った後から徐々に売上を伸ばしていき、同年3月30日付のオリコンシングルチャートで自身初の1位を獲得した。」というのだ。
っことは、世の中に出まわったものは81年3月にプレスされたものが圧倒的に多いはずだ。
つまり、81年2月プレスでも出会う確率は低いが、81年1月プレスとなると出会う確率は相当に低くなる。

こういう場合は見本盤を狙えばいいし、実際、ボクも何度かヤフオクで競ったことがあるのだが、負けた・・・
まぁ、81年2月プレスの通常盤を持っていて、この盤で十分に満足しているので、あまり高額の入札をする気になれないせいではあるのだが。

そんな中、Cal De Rさんが、東芝EMIの謎のアルファベットについて探求しはじめた。

<下記記事をごらんください。(2021年2月19日段階)>

https://ameblo.jp/caldermusic/entry-12657111135.html

https://ameblo.jp/caldermusic/entry-12657481153.html


ボクがもっている81年2月プレスの『ルビーの指環』にはM刻印はなかったのだが、発売日前月プレスを求めて見つける度にめくっているので、『ルビーの指環』にM刻印をよく見かけることは知っていた。
で、Cal De Rさんに情報提供するとともに、とりあえず近所のHOでM刻印入りの『ルビーの指環』を一枚確保してきた。
こちらは、81年3月プレスだった。

手持ちが二枚になったのだが、そうしたら、はっきりとファースト・プレスとセカンド・プレスに区別できることを発見してしまった。
ってことで、今日はその話である。

まずは、手持ちの二枚の『ルビーの指環』を見てみよう。


20210219-1.jpg


手前がファースト・プレスで、奥がセカンド・プレスである。
違いがわかるだろうか?
そう、Akira Teraoの文字の色が微妙に違うんである。
どちらもグレーだが、ファースト・プレスは薄いグレーなのに対して、セカンド・プレスは濃いグレーになる。
ルーペで覗くと黒点の密度が違っていて、それが濃淡の違いとして現れているので、この色違いは意図的なもので間違いないと思う。

さらに決定的なのは、歌詞が印刷された裏面だ。

セカンド・プレスは、歌われている通り「くもり硝子の向うは風の街」となっているが、ファースト・プレスは、「くもり硝子の向うは風の街」と「向う」の後に「に」が入っているのである。


20210219-7.jpg
(セカンド・プレスのPSの裏)



20210219-6.jpg
(ファースト・プレスのPSの裏)



上述の通り、手持ちのファースト・プレスのPMは1-2で81年2月プレスである。


20210219-3.jpg


先日入手したセカンド・プレスのPMは1-3で81年3月プレスだ。


20210219-5.jpg


セカンド・プレスのほうのマザーはM付きである。
ETP-17114-A-U 1SM4 5と刻印されている。


20210219-4.jpg


で、肝心のファースト・プレスのほうはというと・・・


20210219-2.jpg


なんと、1S 1なんである!
もっとも、B面は1S 25で、発売当月プレス相当だけど。

PMが1-2だから、「1S 1スタンパー」は前月の初回プレスのときには使用されなかったわけだ。
「また、『ジェニーはご機嫌ななめ』みたいに、PM打たずに見本盤に使われただけなんじゃ?」という疑問を持ったあなた!
当然、ボクもそうかもしれないと思ったのである。
ってことで、こういうときに頼りになるささも教授にご協力いただいた。
見本盤のマトはこうなっている(ささも教授提供)。


ルビーの指環(見本).jpg


見本盤のマトは、「1SM 3」なのである。
PMは1-1が刻印されていたそうなので、発売日前月の81年1月プレスで間違いない。

このMは衝撃だった。
東芝EMIプレスの場合、一番目のマザーには何も打たず、二番目からSの後に2、3・・・と打っていく。
手持ちのセカンド・プレスのM4というのは、Mの意味するところは現時点では不明だが、四番目のマザーということは間違いないだろうと思っていた。

しかし、そう簡単な話ではないかもしれない。

ボクが持っている81年2月プレス盤のマトは「1S 1」でMがない。
1月プレスの見本盤のマトは「1SM 3」でMがついている。
この二つは同じマザーなのか?(一枚か二枚スタンパーを作った後に、マザーにMを追加で刻んだ。)
それとも違うマザーなのか?(一枚目のマザーは通常通り無刻印で、二枚目のマザーを作ったときにMを刻印した。)
いずれにしても、不可解である。
Mが何を意味しているのかがわかれば解明できそうだが、さっぱり思いつかない。

もうひとつの謎のアルファベット、Uについては、Cal De Rさんのマスタテープ違いという推理が当たっているかもしれない。
US盤には、マトにREが追記されていることがしばしばあって、RE-Masteringだったり、RE-Mixだったり、RE-Recordingだったり、マスタテープ違いであることを意味しているのだが、東芝EMIのUというのは、それと同じようなものじゃないかというわけだ。

<追記>
東芝EMIのマトに使用される謎のアルファベットUについて、NJoobuさんが調査してくださいました。
「現行品でなんらかの問題が生じて、作り直した場合にUをつける」というのがルールだようで、Uがついた場合には、Uがついてないものを利用して生産することを禁じるマークなんだそうです。
Uに問題があった場合は、V、Wと進んでいくとのことです。

「作り直した場合」ということなので、やはり、再録音、リミックス、リマスターが行われた場合という理解でいいんじゃないかと思います。


WIKIによると、『ルビーの指環』は、「当時、寺尾が音楽番組で同曲を歌唱する際は、レコード音源よりもキーを上げて歌うことが多かった。」という。
ってことは、「高いキー」のテイクが先に録音されていた可能性がある。

それに、ファースト・プレスのPS裏の歌詞も気になる。
「向うには」は単なる誤植だったのか?
そうではなく、最初の歌詞は「向うには」だったのを途中で「向うは」に変更したのだとすると、「向うには」と歌っている(「向うには」でもメロディにのる)テイクが先に録音されていた可能性がある。

太田裕美さんの『木綿のハンカチーフ』の歌詞が、シングル化の際に松本隆さんの要請で「君は素顔で」から「今も素顔で」に変更されたというよく知られた話を考えても、『ルビーの指環』の歌詞も松本隆さんだし、歌詞変更という線もありえないことはないと思う。

なーんて、いろいろ空想を掻き立てる「『ルビーの指環』初回盤と謎のアルファベット」なのである。

タグ:寺尾聰
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