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OFF COURSE:We are [TMLの仕事]

「あの頃のわたしたち(The Way We Were)」から「僕らのいま」へ。

オフコース(OFF COURSE)『We are』(ETP-90038)を取り上げよう。


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このアルバムもTML(The Mastering Lab)でマスタリング&カッティングが行われているので、そういう繋がりもあるのだ。


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TMLでのマスタリングもさることながら、このアルバムには、ミキシング・エンジニアとしてビル・シュネー(Bill Schnee)が関わっている。
スティーリー・ダン(Steely Dan)の"Aja"やボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)の"Middle Man"なんかに関わったエンジニアである。
そんなわけで、この『We are』というレコード、音の感触は、まさに当時のアメリカのAORだ。

だから4枚ある・・・というわけではない(笑)
4枚に増えたのは最近のことで、東芝EMI盤の送り溝に製造年月表示があることを知ったせいだ。

このアルバムは発売日当日に買ったので、そのまま持っていれば、買いなおそうとは思わなかったかもしれない。
しかし、当時買ったものは、手持ちのレコードを売っては新しいレコードを買っていた大学生の頃に処分してしまった。

20年くらい前、再びアナログを集め始めたとき、すぐにこのレコードも買いなおしたのだが、そのときはとにかくジャケットの綺麗なものを買った。

このレコード、そのほとんどがたぶん押し入れに長くしまいこまれていたものであるせいか、そういうシミの目立つジャケットが多い。
真っ白なジャケットは、僅かなシミも目立つ。
どうしても、綺麗なジャケットのものを探したくなる。

それに、数年前まで、ボクは、日本のプレス技術は優秀なので、80年代の日本盤ともなれば初盤だろうがレイトだろうが音質差なんてほとんどない、と思っていた。

だから、20年くらい前に買いなおした盤が初盤である可能性はすこぶる低い(笑)

恐る恐る送り溝を確認してみると、案の定、レイトである。
刻印されていたのは3-9で、1983年9月製造であることが判明した。
このレコードの発売日は1980年11月21日だから、3年近く経っている。
送り溝を見ても、L3 30/L3 11とかなりスタンパーが進んでいる。
こりゃダメだ。

このアルバムは、「愛を止めないで」でブレイクした後、オリコン2位まで登り詰めた『Three and Two』(ETP-80107)の次の作品だから、当然のことながら、大量の初回プレスが存在するはずである。
探せば簡単に見つかるはずだ。

で、探してみたら、まず0ーY刻印の1980年11月製造盤を見つけた。
発売日の当月製造盤である。
発売日が21日だから、当月製造盤だって初回プレスだろうと思ったのだが、送り溝を見るとL 51/L 30とかなりスタンパーが進んでいる。
これはかなり微妙である。

初回から大量にプレスしただろうから、このぐらいスタンパーが進んでいるのも仕方がないかなと思う一方で、考えてみれば、大量にプレスが必要な場合、かなり前からプレスを始めるはずだから、前月製造盤も大量にあるに違いないとも思った。

そんなわけで、どこにでもゴロゴロ転がっているレコードだし、引き続き探索を続けることにした。

そしたら、すぐに0-X刻印の1980年10月製造盤を見つけることができた。
それも2枚、しかも、マトが違う(笑)


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(1980年10月製造を示す0-X刻印。)



一つはL 8/L 9、Lマトで一桁スタンパーだ。
これは初回プレスに間違いない。

もう一つは3L 17/L 12、Side 2のマトは変わらないがSide 1は3Lマトで、ラッカーが違う。
スタンパーもちょっと進んでいる。

数字だけで考えれば、L 8/L 9を買えばいいという話だが、カッティング違いというのはどうにも気になるので、両方買うことにした。
Side 1のLと3Lの間には、もう一つ違いがあったしね。


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(写真だとわかりにくいが、マトはLでスタンパーは8である。)



L 8/L 9のほうは、Side 1がTML-S刻印で、Side 2がTML-X刻印だ。


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(Side 1のTML-S刻印。)



それに対して、3L 17/L 12のほうは、両面ともTML-X刻印である。


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(Side 1のマトとTML-X刻印。)



Discogsによると、TML-Xは、TML-MやTML-Sと刻印される際に使われたスカリー製のカッティング・レースよりも後に導入されたノイマン製のレースでカッティングされたことを示すとのことである。

このノイマン製のレースをTMLがいつ導入したのかは明らかではない。
80年代のTMLカッティングにはTML-Xもザクザク見つかるが、70年代のTMLカッティングではほとんど見ないので、ノイマン製レースの導入は、おそらく70年代も終り頃だろう。

ピンク・フロイド(Pink Floyd)"The Wall"の初回盤にTML-X刻印盤が存在するので、リリース前月の1979年10月には導入されていたことは明らかだ。
とりあえず、バカ売れしたレコードではTMLでもすべてのカッティング・レースを稼働させたんじゃないかという前提で調べてみると、1978年10月にリリースされたTOTOのファーストにはTML-MとTML-Sしかなさそうなので、1978年にはまだ導入されていなかったんじゃないかと思う。
(後述するノイマン製レースの音の特徴からしても、すでに導入していたのなら、リカッティングのマト3はノイマン製レースでやってもよかった気がするし。)

そんなわけで、TMLがノイマン製レースを導入したのは1979年頃だと考えているのだが、それ以上は特定できていない。
1979年10月以前にリリースされたレコードの初回盤でTML-X刻印のあるものを発見した方は、ぜひお知らせくださいm(_ _)m

で、音については、Side 2の方はラッカーが同じでスタンパー・ナンバーにも大きな開きがあるわけではないので大差はないが、Side 1のほうはかなり違う。

TML-S刻印のマトLがダイナミックでエネルギッシュな印象であるのに対して、TML-X刻印のマト3Lでは、押し出し感が後退したぶん、繊細さを増して鳴る。
分離が良くて、個々の音色が明快なのである。
大音量で鳴らしたときの微弱音のリアリティなんかは、特筆すべきものがあると思う。
オフコースなら、こっちかなぁ。

そういや、手持ち4枚ではSide 1のLマトのみTML-Sで、Side 1の3LマトやSide 2のLマト(L3はLマトのマザー違いだと思う)はTML-Xだったが、ほかのマトも存在するのかしらん?
ご存知の方は、ぜひお知らせくださいm(_ _)m

アナログ・マニアの病気がかなり進行して、「スカリー製レースとノイマン製レースの音の違いに興味が出てきてしまった」なんていう方は、このレコード、手軽に比較が楽しめて便利だ。

あっ、中毒が深刻化しても、ボクはいっさい責任を持ちませんので、あしからず(笑)

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