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Elton John A2/B1の謎について [Elton John]

エルトン・ジョン(Elton John)の2ndアルバムのUKオリジナル(DJM Records DJLPS 406)について、前の記事でボクは、「仮にマトA2/B1があるとしても、それが手書きであればファーストプレスではない」と断言した。

しかし、それは、両面手書きマトA2/B1のB1が、両面手書きマトA4/B1のB1と同じだという前提で考えていたからである。
それが、機械打ちマトA3/手書きマトB1のほうのB1と同じだということになれば、話は違ってくる。
(A3/B1のB1とA4/B1のB1が違うものであることについては、こちらhttps://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2017-04-08をご覧ください。)

で、実際、話が違ってきてしまったσ^_^;

このブログにコメントをくださった他力本願児さん、ツイッターで交流があるマイクさんが、A2/B1の盤をお持ちで、そのB1は、A3/B1のほうのB1と同じだという。
マイクさんからは画像もご提供いただいたので、ボク自身の目でも確認してしまった。
ご覧の通りである。
レーベル形状的にも、このA2/B1はA3/B1と同じだ。


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(A2/B1のSide1のRun-Off)



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(A2/B1のSide2のRun-Off)



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(A3/B1のSide2のRun-Off)



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(A4/B1のSide2のRun-Off)



さて、では、このA2/B1をどう考えればいいんだろう?
これがファーストプレスだと考えればいいんだろうか?

ボクは違うと思っている。
いや、正確には、このA2/B1もファーストプレスだが、A3/B1もファーストプレスだと思っている。

最終的な結論は、ボク自身がA2/B1を手に入れてから下すとして、ここでは、さしあたり考えていることをメモしておきたい。

まず、機械打ちA3は、前の記事を書いたあとにいろいろご指摘いただいてはっきりしたように、パイ・スタジオ(Pye Studios)でのカッティングである。
パイ・カッティングでは1976年まで機械打ちのマトで、その後手書きマトになるという。
だから、A3/B1はSide1がパイ・カッティングで、Side2は別のスタジオでのカッティングということになる。

Discogsには1976年以前のパイ・カッティングにも手書きマトがありそうなことが書いてあるが、仮にあるとしても、カッティング・マシンを表すマークとカッティング・エンジニアのイニシャルも彫られていないといけないので、いずれにせよ、このエルトン・ジョンのレコードの手書きマトはパイ・カッティングではない。

では、どこのスタジオでのカッティングなのか?
一番可能性が高いのは、トライデント・スタジオ(Trident Studios)だと思う。
トライデントは、このレコードの録音が行われた場所だからだ。

Discogsを見ると、トライデントのマスタリング・エンジニアは1970年からの所属になっている。
これはおそらく、トライデントにカッティング・マシンが導入されたのが1970年だからだろう。

トライデントがカッティングまで始めたのが1970年だとすると、話が微妙になってくる。
カッティング・ルームが開いた時期によっては、1970年4月リリースのエルトン・ジョンのセカンドには間に合わない可能性が出てくるからである。
そして、その微妙さゆえに、逆に、そこには手書きマトB1が二種類ある謎を解く鍵が隠されている気もする。

もう少し詳しく話そう。

エルトン・ジョンのセカンドは1970年4月10日のリリースだが、録音されたのは1969年11月から1970年1月にかけてである。
トライデントのカッティング・ルームが稼働を始めたのが正確にいつなのかわからないが、1970年でも早い時期であればあるほど、まだ稼働していなかった可能性が高くなる。
つまり、エルトン・ジョンのセカンドが、ミックス・ダウン後すぐにトライデントでカッティングされた可能性はかなり低い。

まだトライデントのカッティング・ルームが稼働していなければ、DJMはパイでカッティングしていたから、当然、マスターはパイ・スタジオに送られ、カッティングにまわされる。

その一方で、カッティング・ルームを作ったばかりのトライデントとしては、「カッティングも是非うちで」という働きかけを行ったことだろう。
1970年の1月からすでにカッティング・ルームを稼働させていたとすれば、エルトン・ジョンのセカンドについても最初から強い働きかけがあったかもしれない。
ミックスダウン時点で間に合っていなくても、パイ・スタジオがカッティングに手間取っていれば、「うちでも試してみて」という働きかけがあったとしてもおかしくない。
場合によっては、「無料でお試しサービス」なんてのもあったりして?
(こういう営業の実体は全く知らないけどさ 笑)

エルトン・ジョンのレコードが、このセカンド以降手書きマトになり、おそらくトライデントでのカッティングになったのだと考えると、仮にA2/B1のカッティングに問題があったり、スタンパー不足の状況が生じたとしても、トライデントに追加のカッティングを依頼するのが基本だろうから、やはり、最初のカッティングがトライデントだったとは考えにくい。
要するに、最初にトライデントでカッティングした後に、パイでリカットされるという事態は、想定しにくいのである。

ちなみに、手書きのほうは2で機械打ちのほうは3で、数字が若いから手書きが先という推理は、基本的に間違っていると思う。
カッティング・スタジオが違えば、それぞれ数字は1から打たれるだろう。
手書きの2はトライデントでの2番目のカッティングであり、機械打ちの3はパイでの3番目のカッティングであって、両者の間に前後関係はないはずだ。

問題は、パイでのカッティングが先だったか、トライデントのカッティングが先だったかであり、それは、上記の理由から、パイでのカッティングだろう思うのである。

また、A2/B1がB面だけ機械打ちでA3/B1が両面機械打ちということなら、トライデントで試したものの問題があったのでやはりパイでやり直したという可能性が高いことになると思うが、実在するのはA2/B1が両面手書きでA3/B1がA面だけ機械打ちなのだ。
パイのカッティングに「問題があった」か「手間取っていた」かで、「トライデントでやり直した」あるいは「トライデントにも依頼した」という推理が、もっとも合理的だと思う。

で、パイ・カッティングのB面はボツになった。
そうして、ファースト・プレスの段階で存在したのは、A面については手書きのA2と機械打ちのA3、B面については手書きのB1のみということになった。
だから、A2/B1もA3/B1もファーストプレスなんである。

さて、もう一つの謎、B1が何故二種類あるかだ。
もちろん、最初のB1と後のB1は別のスタジオでカッティングされたという可能性(つまり、パイのカッティングに問題があってどこかのスタジオでリカッティングされ(A2/B1)、その後、大ヒットしてスタンパーが足りなくなり、さらにカッティングが必要になったときに、トライデントでカッティングが行われた(A4/B1)ということだ)もあるが、どこか別のスタジオが使われたことを示す手がかりはまったくないし、A2/B1とA4/B1のRun-Offの風情は同一スタジオでカッティングされたことをうかがわせる(かなり直感によるけど 笑)。

では、何故B1が二種類あるのか。
ボクは、A2/B1もA4/B1もどちらもトライデントでのカッティングだが、ファースト・プレス段階のトライデント・カッティングは、カッティング・ルーム・オープン記念の、いわばお試しカッティングみたいなものだったんじゃないかと妄想している(笑)

で、大ヒット後の追加カッティングは、本格稼働後の正式な依頼に基づくもので、だから両面とも最初からカッティングしなおした。
そんなわけで、B1が二種類あるという事態が生じたんじゃないかと思うのである。
いや、まさに妄想だけどさ(笑)

というのが、ボクの現時点での推理(と妄想 笑)なのだが、さらなる真相の解明は、ボク自身がA2/B1を手に入れた後でおこなうことにしよう。

タグ:Elton John
コメント(2) 
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コメント 2

他力本願児

探している内にきっと出てくるんですよ、A1/B1が!
by 他力本願児 (2019-08-31 01:07) 

想也

他力本願児さん

あー
A1/B1のテストプレスとか、なんか資料つきで出てきたら、一気に解明できそうですよね。
でも、映画効果で、バカ高くなってたら、買えません・・・

by 想也 (2019-08-31 01:32) 

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