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2ndのUKオリジナル1stプレスを特定する [Elton John]

<ハルさんからジャケットについて情報をいただいて仮説を修正する必要が生じたのと、ランブリンボーイズさんからPyeのRun-Off情報を読み解くべーじを教えていただいて加筆する必要が生じたので、まとめて加筆・修正しました。>(2019年8月26日21:00)

<他力本願児さんから、「DiscogsのPye Studiosの項目に、より研究が進んだと思われる情報がある」との情報をいただいたので、加筆修正しました。>(2019年8月28日22:10)

<なお、A2/B1マトの盤をお持ちの方が現れたので、さらなる情報提供をお願いしています。その情報をいただいたうえで、仮説に必要な修正を加える予定です。>

映画『ロケットマン』公開記念に、以前話題にしたことのあるセルフタイトルの2ndアルバム("Your Song"収録!)のUKオリジナル(DJM Records DJLPS 406)―以前の記事については、"Elton John"のカテゴリーで見てくださいませ―について、その後の調査や分析の結果を報告しておこう。

以前の記事では結論を留保していたが、その後オオヒラさんが機械打ちマトA3/手書きマトB1を入手されて、「両面手書きマトA4/B1よりも片面機械打ちマトA3/B1のほうが先ではないか」という結論を出されていた(オオヒラさんの記事については、https://geppamen.blog.fc2.com/blog-entry-466.htmlを参照)し、ボク自身も、別の角度から、機械打ちマトの盤が1stプレスだと特定するに至っている(つまり、仮にマトA2/B1が存在するとしても、それが手書きマトであれば1stプレスではない)。

その機械打ちマト問題に入る前に、オオヒラさんが指摘していたジャケット内側ロゴ下のカタログ番号問題について、ボクの立場を明らかにしておこう。

ボクの手元にあるこのレコードのUKオリジナルは、以前記事を書いたときからかわっていない。
この3枚である。


20190825-01.jpg
(手前から、それぞれ、機械打ちマトA3/手書きマトB1、両面手書きマトA4/B1でレーベルにMade in Englandなしの黒盤、両面手書きマトA4/B1でレーベルにMade in Englandありの深紅半透明盤のジャケット)

以前の記事では、ジャケットの種類は、凹凸のあるテクスチャーと和紙のようなテクスチャーの二種類としていた(いずれもE.J.Day製)。
凹凸のあるテクスチャーのジャケット2つの間には若干の違いがあるものの、それは個体差にすぎないと判断していたからなのだが、その後、この違いは意図的な変更なのではないかと考えるに至った。

もう少し、近づいてみてみよう。


20190825-02.jpg
(向かって右から、それぞれ、機械打ちマトA3/手書きマトB1、両面手書きマトA4/B1でレーベルにMade in Englandなしの黒盤、両面手書きマトA4/B1でレーベルにMade in Englandありの深紅半透明盤のジャケット)

凹凸テクスチャー(右側の二枚)と和紙様テクスチャー(一番左)の違いは歴然だと思うが、凹凸テクスチャーの2つにも、凹凸の深さに違いがあることがわかるだろうか。
機械打ちマトA3/手書きマトB1が入っていたジャケットのほうが、凹凸が深いのである。

この違いは、実は、裏ジャケットの写真にかなりはっきり現れる。
とくに目立つバーニー・トーピン(Bernie Taupin)の写真で比較してみよう。

まずは、凹凸の深い機械打ちマトA3/手書きマトB1が入っていたジャケットである。


20190825-03.jpg


とくに肌の部分に凹凸の影響が顕著に現れている。
面積が小さいので、そこまで目立たないとはいえ、肌の部分に影響が出るということは、全員の顔の部分にも影響が現れている。

「肌が汚くなる」というのは、あまり好ましい結果ではない。

これが、両面手書きマトA4/B1でMade in Englandなしの盤が入っていたジャケットになると、凹凸のテクスチャーパターンは同じだが、凹凸がかなり浅くなって、肌への影響はきわめて小さくなる。


20190825-04.jpg


当初は、これも単なる個体差だと考えていたが、最終的に凹凸なしの和紙様テクスチャーに変更されるところからしても、凹凸テクスチャー間の凹凸の深さの違いも、実は意図的な変更だったんじゃないかと思うのである。

さて、そうすると、ジャケットは、深い凹凸テクスチャー→浅い凹凸テクスチャー→和紙様テクスチャーと変遷したことになる。
<この変遷については、後述するように、ハルさんからの情報提供を踏まえて、少し考え直した。>

これを踏まえて、内側のロゴの下を見てみると、こうなっている。


20190825-05.jpg
(手前から、それぞれ、機械打ちマトA3/手書きマトB1、両面手書きマトA4/B1でレーベルにMade in Englandなしの黒盤、両面手書きマトA4/B1でレーベルにMade in Englandありの深紅半透明盤のジャケット)


ロゴの下にカタログ番号があるのは、和紙様テクスチャーのジャケットだけである。
このカタログ番号のフォントや大きさなどは、写真で確認する限り(オオヒラさんのページの写真と同じ角度からうちの実物を見て比較しました。)、オオヒラさんのカタログ番号ありのジャケットのものと同じに見える。

オオヒラさんも書いているように、いったん表記されたカタログ番号を消すというのは考えにくいし、同じものを後になって再度復活させるというのはもっと考えにくい。

そうすると、凹凸テクスチャーでカタログ番号のあるジャケットは、和紙様テクスチャーへの変更直前のものと考えるのが一番合理的だと思う。

なんと和紙様テクスチャーのジャケットでカタログ番号なしのジャケットが存在するという情報を、ハルさんからいただいた。
写真もいただいたので、掲載しておこう。


20190825-13.jpg


確かに、手前のもの、和紙様テクスチャーでカタログ番号がない!

さて、これをどう考えればいいだろうか。
ボクは、次のように考えている。

深い凹凸テクスチャーでは「肌が汚くなる」ので少し改良しようということになった。
そこで、凹凸テクスチャーはそのままに凹凸を浅くすることで対応するものと、和紙様の別のテクスチャーのものが用意された。
あるいは、爆発的なヒットによる急激な増産が必要な状況において、浅い凹凸テクスチャーの紙は特殊加工のため等の理由で十分な数が用意できず、汎用の和紙様テクスチャーの紙で代用することにした。
その結果、まず、浅い凹凸テクスチャーのジャケットと和紙様テクスチャーのいずれもカタログ番号なしのジャケットがあらわれた。
そして、最終的には、いずれの仕様のジャケットにも、カタログ番号が入れられた。


この凹凸テクスチャーのジャケットは、かなり傷みやすい一方で、爆発的にヒットしたおかげで数はやまほどあるので、中古レコードショップの在庫に何枚もたまっているときに、盤とジャケットの美品同士の合体が行われた可能性はかなり高いと思う。

美品同士を合体させて高く売ろうというより、中古市場に数が多すぎてボロい盤は商品にならなかったために、美品同士を合体させて商品とし、ボロいものは廃棄するということが、多くの中古レコードショップで行われていたんじゃないかと思うのである。

そう考えると、やはり、ジャケットの変遷は、合理的な変更かどうかという基準で考えていく必要があるんじゃないだろうか。
ってことで、ボクは、ジャケットは次のように変遷したと考えている。

1 深い凹凸テクスチャーで内ジャケロゴ下のカタログ番号なし
2 浅い凹凸テクスチャーまたは和紙様テクスチャーで内ジャケロゴ下のカタログ番号なし
3 浅い凹凸テクスチャーまたは和紙様テクスチャーで内ジャケロゴ下のカタログ番号あり
4 和紙様テクスチャーで内ジャケロゴ下のカタログ番号あり


さて、いよいよ、機械打ちマト問題である。
こちらはジャケット問題のようにややこしくない(笑)

1stアルバムである"Empty Sky"のUKオリジナル(DJM Records DJLPS 403)の1stプレスを入手したので、それとの比較である。
すなわち、"Empty Sky"の1stプレスの特徴を引き継いでいるものが、2ndアルバムの1stプレスだろうというわけだ。

まず、"Empty Sky"の1stプレスである。


20190825-06.jpg


ジャケットはテクスチャーで、見開きジャケットだが表側が一枚紙になっているものだ。
って、そこはレイトでも変わらない(もっとも、テクスチャーの具合は違う可能性があるが、ボクはレイトを持っていないのでわからない)ので、重要なのは裏側である。


20190825-07.jpg


このレコードまではMONO盤が存在する(Discogsで現物が確認できる)が、STEREO盤はMONO盤のジャケにステッカーを貼って対応したらしい。
DiscogsやEbayなどをざっと見てみると、STEREO盤が入っているジャケットでも、そもそもステッカーを貼った形跡もないもの、ボクの持っているもののようにステッカーが貼ってあった形跡のあるもの、黄色のSTEREOステッカーが貼ってあるものが確認できるが、この"MONO. DJLP 403"とフォントや大きさが同じで"STEREO. DJLPS 403"と印刷されたものは発見できなかったので、おそらく1stプレスは、すべてMONOジャケにSTEREOステッカーで対応したんだと思う。

で、このレコードの1stプレスのレーベルはこうなっている。


20190825-08.jpg


これは、機械打ちA3/手書きB1のレーベルの特徴と一致する。


20190825-09.jpg


まず、どちらも、レーベルの外周、縁に沿って凸(いわゆる凸リム)になっていない。
この頃のDJM RecordsはPye Recordsの配給で、Pye Recordsのレコード・プレス部門はTranco Limitedだった。
Disicogsによると、Tranco Limitedプレスの特徴は、凸リムと半透明盤ということだ。

この両者は凸リムでも半透明盤でもないので、Tranco Limited製ではないか、Tranco Limitedもこの時期までは凸リムでも半透明盤でもなかったかのどちらかだが、いずれであるかは断定できない。
ただ、マザーとスタンパーの付け方(3時に数字でマザー、9時にアルファベットでスタンパー)が同じなので、後者(つまり、Tranco Limitedもこの時期までは凸リムでも半透明盤でもなかった)の可能性が高いとボクは考えている。

次に、どちらも、45回転アダプターぐらいの円の外がわに窪みがある(「内堀り」と呼ぶことにしよう)。
セルフタイトルの2ndのほうは内堀りが深いので写真でもはっきりわかるのに対して、"Empty Sky"のほうは写真ではわかりにくいが、深さは半分ほどしかないものの、しっかり内堀りは存在している。
(この違いは、盤の厚さに起因するのかもしれない。重さとしては10gほど重いだけだが、2ndのほうが若干厚みを感じる。)

そして、決め手は、機械打ちマトだ。


20190825-10.jpg


"Empty Sky"は両面機械打ちマトでA2/B3である。


20190825-11.jpg


セルフタイトルの2ndの機械打ちマトと比べてみて欲しい。
同じところで刻印されたとしか思えない。

"Empty Sky"のほうの末尾の◇H、セルフタイトルの2ndのほうの末尾の*Tは、カッティング・エンジニアだろうか?
あいにくDiscogsのTranco Limitedの項目には所属していたカッティング・エンジニアの名前が出ていないのでわからない。

ランブリンボーイズさんから、PyeのRun-Off情報を解説しているページを教えていただいた。
そのページによると、◇Hの◇や*Tの*は使用したカッティング・マシン(Cutting Lathe)を、アルファベットのほうはやはりカッティング・エンジニアを表すもののようだ。
したがって、◇Hはノイマン製スカリー製のカッティング・マシンでHoward Barrowがカットしたことを、*Tはスカリー製のカッティング・マシンでTony Bridgeがカットしたことを表すのだそうだ。

他力本願児さんから、「DiscogsのPye Studiosの項目に、より研究が進んだと思われる情報がある」との情報をいただいた。
確かに、より詳細だ。
Discogsによれば、カッティング・マシンについては、Run-Off上で△◇*で表される3台が稼働していて、そのうち◇は1974年まではスカリー製レースで1974年にノイマン製レースにリプレースされたもので、*は74年まで稼働していたスカリー製レースということのようだ。
エルトン・ジョンの2ndアルバムは1970年なので、◇のカッティングマシンは、まだスカリー製レースだったということになる。


いずれにせよ、1stの”Empty Sky"が機械打ちマトで、それと同じところで刻印されたとみられる機械打ちマトの盤があれば、それが1stプレスなんじゃないか。
だとしたら、機械打ちマトA3/手書きマトB1が(機械打ちマトの盤はほかに発見されていないので)1stプレスと判断していいんじゃないかと思うのである。

ということで、セルフタイトルの2ndのUKオリジナル1stプレスは、次の特徴を持ったものだというのが、ボクの結論だ。

1 機械打ちマトA3/手書きマトB1で、半透明盤ではない。
2 レーベルは、凸リムはないが内堀りのあるもので、Made in England表記がない。
3 ジャケットは、深い凹凸テクスチャーで、内側のロゴ下にカタログ番号の印刷がない。

(ちなみに、Discogs上に出ているA2/B1の盤は、半透明盤で、レーベルは凸リム/Made in England表記ありで、和紙様テクスチャー・ジャケットなので、明らかにレイトである。)

タグ:Elton John
コメント(7) 

コメント 7

他力本願児

ご報告

家に有るのはイギリス盤と日本盤各1枚。
で、イギリス盤ですが

手書きマトA2/B1不透明盤。
レエベルはENPTYと同じかな?微妙で、Made in England表記無し。
ジャケは3の特徴そのまま。
「60 years on」は50秒、フェードイン。

因みに日本盤、音工ECR(赤盤)「60 years on」は30秒、フェードインだったりします。
以上
by 他力本願児 (2019-08-26 00:59) 

想也

他力本願寺さん

情報ありがとうございます(^^)
A2/B1をお持ちとはうらやましいです。

これは前の記事で問題にしたことですが、機械打ちA3/手書きB1のB1と、両面手書きB1は、筆跡が違って別物なんですよね。
で、A2/B1のB1はどっちと同じなのかが気になってるんですが、お近くにA4/B1(これはいくらでも転がってるので)を持ってる方とかがいて、確認できたりしますかね?

日本盤の"60 Years On"は、「イントロなげーよ」って切っちゃったんですかね?σ^_^;

by 想也 (2019-08-26 10:41) 

想也

あっ、B1の比較の件、実物比較が難しかったら、下記の私の前の記事に掲載の写真で判定していただけますか?
406の6がかなり違うんで可能かと・・・


https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2017-04-08
by 想也 (2019-08-26 10:46) 

他力本願児

只今比較中……

B1イントロ、「キイキイとうぜえなあ、誰だよ、ばっくますたあってのはよお?」
「主役の邪魔だよ」ちょきん!でしょうかね?

比較終了。

以前の記事中の画像で比較しました。たぶん上の方、A3と同じかと。
画像と同じ様に「DJLPS」の後ろと「B1」の後ろにドットが書かれていますので機械打ちA3/手書きB1のとおなじかと。
只恐ろしい事にA面、ドットが無いんですよねえ~。字体はB面と同じ様に見えるんですがはてさて。

序に。
◇や*の事ですが、DiscogsのPye Studiosの項目で見るとカッティング、時期により2ないし3系統有る上に
ある時期からマシンが変わっている様な記述がされている様に思えます、以下の様に。

△ = Westrex/Scully stereo suite until 1967, then replaced by Neumann VMS/SX68. 
♢ = Westrex/Scully stereo suite until 1974, then replaced by Neumann VMS/SX74. 
✳ = Westrex/Scully stereo or mono suite until ca. 1974. 

参考になりますでしょうか?
by 他力本願児 (2019-08-27 01:12) 

想也

他力本願児さん

ありがとうございます。
ドットの有無だけでは、第3のB1の可能性もσ^_^;
406の6の部分の筆跡も同じですかね?

Pye Studiosのマシンの件、ありがとうございます!
見落としてましたー
そうか!Pye Studiosで検索すればよかったのか!

昨日見たページではちょっと腑に落ちないところもあったので、スッキリしましたー
◇も74年まではスカリーだったんですね。今夜にでも修正しときます。
by 想也 (2019-08-27 08:38) 

他力本願児

筆跡、字体、同一に見えます。
6の他Bの上下部の丸み、長さとかも同じ。
因みにスタンパー記号?、B-1,F-1です。
by 他力本願児 (2019-08-28 03:15) 

想也

他力本願児さん

ありがとうございます。
ツイッターでも、A2/B1をお持ちの方がいて確認していただき、さらに実物のRun-Off画像もご提供いただいて、私自身の目でも確認しました。
A3/B1のほうのB1と同じで間違いないと思います。

一桁スタンパー、いいですねぇ。
うちのA3/B1は両面とも二桁スタンパーです~
A4/B1のほうは一桁スタンパーですが(意味がない~)w

by 想也 (2019-08-28 22:22) 

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