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不都合な真実?~WoodstockのUSオリジナル [アナログ・コレクターの覚書]

<Discogsに「モナーク工場産レコードのレーベル形状の変化は1978年だ」という記述があるというご指摘があったので、この1978年説についての考察を追記しました。>(2019年6月23日17:00)


さて、考レコ学クイズ6の解答編である。


20190622-2.jpg


6つある選択肢から3つにしぼるのは簡単だと思う。
CotillionはAtlanticのサブレーベルなので、レーベル上に製造工場が示されている。
下部のリム沿いの記述のすぐ上に、マスター番号に続いてMOとあるのがそれだ。

MOはロサンジェルスにあったプレス工場Monarch Record Mfg. Co.(モナーク工場)を意味している。
つまり、このレコードは西海岸産である。
したがって、正解は1、3、5のいずれかということになる。

Atlanticのサブレーベルであることから、レーベルのリムの記述も同じだと推測すると、1973年の夏頃にBroadwayアドレスからRockefellerアドレスに変更、1974年の秋頃にWロゴが付くはずだ。
そうだとすると、1ならBroadwayアドレス、3ならRockefellerアドレス(年末ならWロゴ付きもあるだろうけど)、5ならWロゴ付きということになるはずである。

しかし、たぶん、この推測は間違っている。
Cotillionには、このグレイ・レーベルでRockefellerアドレスのものはないと思う。
Cotillionは、1976年にはパープル・ピンクにデザインが一新される(リムは当然、RockefellerでWロゴ付き)が、それ以前のグレイ・レーベルであればすべてBroadwayアドレスのはずだ。

そもそも、1972年から1976年までCotillionレーベルから新譜は出ていないようで、そのため、リム表記を変更したレーベルが作られなかったのではないかと思う。

つまり、画像のレーベルのリムがBroadwayアドレスだからといって、1だとは断定できないのである。
(クイズの6択には関係ないが、1976年のレーベル・デザイン一新の際に"Woodstock"も再発されているので、グレイ・レーベルであればそれ以前のプレスであるとはいえる。最初は1977年リリースまで入れて8択のクイズにしようと思ったが、さすがにゴチャゴチャしそうでやめた。)


では、どこに注目すればいいんだろう?
答えは、レーベル形状である。

画像のレーベルのように、ドーナッツ盤アダプターより少し小さいくらいの円状にスジが入っていて外周にむかってなだらかに盛り上がり二段になっているレーベルは、70年代の半ばくらいまでは、モナーク工場産レコードには登場しないんじゃないか。

たまたま、モナーク工場産で持っていたJ・ガイルズ・バンド(J. Geils Band)で確認すると、やはり1975年9月リリースの”Hotline”(Atlantic SD 18147)までは直系72ミリくらいの円状にスジが入っている一段レーベルで、翌1976年4月リリースの” Blow Your Face Out”(Atlantic SD 2-507)になると、出題画像の”Woodstock”と同じ二段レーベルになっている。


20190623-1.jpg


20190623-2.jpg


20190623-3.jpg


このレーベル形状は、スタンパー由来のはずだ。
そうだとすると、モナーク工場の場合、Runoutに刻まれるメッキ処理番号が証拠になる。

“Hotline”のメッキ処理番号は△20068、” Blow Your Face Out”のメッキ処理番号は△20600で、”Woodstock”のメッキ処理番号は△20175~△20177だ。

ビンゴ!


20190623-4.jpg
“Hotline”のRunoutに刻まれたメッキ処理番号



20190623-5.jpg
” Blow Your Face Out”のRunoutに刻まれたメッキ処理番号



20190623-6.jpg
”Woodstock”のRunoutに刻まれたメッキ処理番号


インナースリーブもこのCSだったので1975年頃のプレスで辻褄があう。


20190623-7.jpg


ちなみに、Discogsで確認すると、”Woodstock”のモナーク工場産ファースト・プレスの場合、メッキ処理番号は△14744~△14746のようだ。
今回、ボクが手に入れた”Woodstock”は、1975年頃(あるいは翌1976年か?)のレイト・プレスで間違いない。

※1976年以降、モナーク工場産のレコードが、すべて二段レーベルになったわけではなく、従来のレーベル形状の盤もプレスされている。
レーベル形状は、おそらくスタンパー成型の機械に由来するものだと思われるが、新機種の導入後、旧機種も廃棄されずそのまま使用されていたからではないかと思う。


レーベル的にはファースト・プレス(モナーク工場産だけどね)だが、実は5年も後のレイト盤だというのは、下記記事で書いた残余レーベル使用に関するボクの新説を根拠づけるものでもある。

https://sawyer2015.blog.so-net.ne.jp/2018-12-17


この新説、簡単に言えば、こういうことだ。
追加プレスの際には、追加プレスの時点で使われるようになっていた最新のレーベルではなく、オリジナルのときに使われたレーベルを使用することが、一般的に行われていた。
だから、追加プレスの際には、間違えて、オリジナルより一つ前のデザインのレーベルを使ってしまうというミスがしばしば起きた。

そうだとすると、残余レーベル使用の盤(本来使われるべき最新のデザインのレーベルではなく、一つ前のデザインのレーベルが使用された盤)は、初期プレスのことももちろんあるだろうが、追加プレスの盤である可能性も高いということになる。
さらに、この新説、レーベルだけ見るとオリジナルでも、実はレイト盤だということが多々存在するということも意味している。

この新説が仮に正しいとすると、レコード・ショップにとってもオリジナル盤コレクターにとっても、実に厄介である。
(つまり、自分の首をしめる新説なのだ! 涙)

さて、この新説、不都合な真実を明らかにするものなのか?
それとも、たんに人騒がせな妄想にすぎないものなのか?

その答えは、風に吹かれている(笑)


<以下、1978年説について考察した追記である。>

記事を書いたあと、ツイッター上で、「DiscogsのMonarch Record Mfg. Co.の項目中ではレーベル形状の変化が起こったのは1978年だと書いてあるよ」というご指摘をいただいた。

確かに、そう書いてある。
しかし、この記述、にわかには信じられない。

第一に、Cotillionは1976年にはレーベルのデザインをパープル・ピンクに一新し、その際に、この"Woodstock"も再発するが、このレーベル・デザインの変更は、休眠レーベルを再稼働させようという動きの一環であり、そうだとすれば、このレーベル・デザイン一新の後に、旧レーベルのグレイ・レーベルでのプレスが行われたとは考えにくい。
グレイ・レーベルであれば、少なくとも1976年以前のプレスのはずであり、そこに二段レーベルが現れる以上、二段レーベルは1976年以前から存在したと考えざるをえない。

第二に、レーベル形状の変化は、1978年の工場移転がきっかけだということで、同時に伝統的なMR刻印も手書きMRに変わったということだが、今回出題に使用した二段レーベルの"Woodstock"のRunoutには、手書きではなく、伝統的なMR刻印がしっかり刻まれている。
伝統的なMR刻印から手書きMRへの変化が1978年の工場移転の際に起こったとすれば、伝統的なMR刻印が刻まれた二段レーベルの存在は、二段レーベルが1978年以前から存在していたことの証となる。

第三に、メッキ処理番号である。
二段レーベル盤のメッキ処理番号△20175~△20177は、1975年から1976年にかけての時期にメッキ処理が行われたことを示しており、二段レーベルがスタンパー由来であるとすれば、1976年以前から存在していたはずである。

というわけで、モナーク工場において二段レーベルが登場してきたのは、1975年から1976年にかけてぐらいの時期だとボクは考えている。

さて、では、どうして1978年だと考えられたのか。
これは、やはり、1978年くらいまで、新譜に一段レーベルが存在するからだと思う。
レーベル形状の変化がスパッと一気に全部切り替わったという前提に立つと、新譜に一段レーベルが存在する間は、まだ切り替わっていないと考えてしまうのは当然である。

しかし、これは前提が間違っている。
本文にも書いたように、スタンパー成型の機械は、おそらく旧機種と新機種とが同時稼働していたんだと思う。
つまり、一段レーベルの盤と二段レーベルの盤が、同時に製造されていたんじゃないだろうか。

そして、1978年の工場移転に際して、旧機種は廃棄されたため、それ以降は二段レーベルのみとなった。

以上の推論の正しさを裏付ける証拠として、1978年リリースのアレサ・フランクリン(Aretha Franklin)の"Almighty Fire"(SD 19161)のモナーク工場プレスがある。

Discogsで確認できるが、旧形状の一段レーベルで、メッキ処理番号が△23322となっている。
出題に使用した"Woodstock"は新形状の二段レーベルだが、メッキ処理番号は△20175~△20177とはるかに若い。
二段レーベルの盤が製造されるようになっても、相変わらず一段レーベルの盤も製造され続けていたのである。

というわけで、ボクの結論は次のとおりだ。

・モナーク工場で二段レーベルの盤が登場するのは、1975年から1976年にかけての頃である。
・モナーク工場で一段レーベルの盤が製造されなくなり、二段レーベルの盤の製造だけになるのは、工場移転があった1978年以降である。

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