初盤道クイズ~残余レーベル使用をめぐる新説(あるいは珍説? 笑) [考レコ学クイズ]
(レコード・コレクターズ2019年1月号とDebby Boone, You Light Up My LifeのUSオリジナル(BS 3118))
レコードコレクターズ2019年1月号掲載の初盤道第21回を読んで、次の問題に答えなさい。
(初盤道の記事から得られる情報だけでは解けません。他にいくつかの基礎知識を必要とする応用問題です。)
次の写真の中には間違いが一つあります。その間違いとは何でしょうか?
(Debby Boone, You Light Up My LifeのUSオリジナルのレーベル)
答えは、レーベル下部のリム表記部分で、住所表記の郵便番号のところが間違っている。
ここの郵便番号が91505だったのは1975年までで、1976年に入ると91510にかわる。
少なくとも、1976年3月19日リリースのThe Doobie Brothers, Takin' It to the Streets(BS 2899)は、すでに91510である。
Debby Boone, You Light Up My Life(Warner Bros. Records BS 3118)のリリースは1977年8月16日なので、下部リムの郵便番号表記が変更されてから、すでに1年以上が経過している。
つまり、どう考えても、郵便番号は91510でなければならないのに、91505なのである。
(下部リムを拡大した写真)
US盤では、こうした残余レーベルの使用がしばしば見られるのだが、考えてみると、実に不可解である。
確かに、単純に、「レーベル切り替え期に、旧レーベルが残っていると使用してしまうことがあった」ということもないとはいえない。
おそらく、そういう理解で、「残余レーベルを使用したものは初期盤」と言われるのだろう。
しかし、ボクは、この考え方には、ずっと疑問を持っている。
まぁ、今回の出題のような「郵便番号違い」程度の変更であれば「余ってるから使っちゃえ」というのもあるだろうが、たとえば、初盤道で取り上げられていたLittle Feat, Down On The Farmのように、レーベル・デザインをすっかり変更しようというとき、「余ってるから使っちゃえ」と残余レーベルを使うものだろうか?
それに、このDebby Booneにせよ、Little Featにせよ、レーベル変更から実に1年以上が経過している。
(Down On The Farmがリリースされたのは1979年11月だが、1978年の夏ぐらいまでにはワーナーのレーベルはパームツリーから白地ノートに変更になっていた。)
どう考えても、1年以上「余ってるから使っちゃえ」が続いていたというのはありえないだろう。
ってことで、ボクは、この「余ってるから使っちゃえ」説を信じていない。
せっかくレーベルを切り替えたのに、いくら余っているからといって、旧デザインのレーベルを使うとは思えないのである。
ボクは、むしろ、この残余レーベル使用にはルールがあって、そのルールに従う限り、広く行われていたんじゃないかと思っている。
なぜなら、残余レーベルを使うことに、まったく違和感も抵抗感もない場合があるからだ。
そう、旧譜の追加プレスの場合である。
旧譜は、旧レーベルでプレスされていたものだから、新レーベルに移行したからといって、必ずしも新レーベルを使用する必要もない。
残余レーベル使用にはうってつけである。
この残余レーベルの使用は、新レーベルに移行する前の通常使用と区別ができないから、わからないだけで実は、かなり広く行われていたんじゃないだろうか。
そう考えると、新譜に対する残余レーベルの使用というのは、旧譜の追加プレスにしか使えないものを新譜のプレスにも使ってしまった「ミス」ということになる。
(つまり、「余ってるから使っちゃえ」といういい加減さの結果ではない。)
こうしたミスが起きやすいのは、おそらく、新譜の初回プレスのときではなく、ある程度時間が経った追加プレスのときだ。
とすると、「残余レーベルを使用したものは初期盤」というのも、あやしいということになる。
まぁ、初期でもミスがあったかもしれないが、そうじゃない場合も多かったんじゃないかと思うのである。
むしろ、初盤に残余レーベルが使用される可能性はきわめて低いということになる。
さらに、ボクの仮説では、中部のプレス工場のように、追加プレスがあんまり発注されないところでは、いつまでも残余レーベルが残っていることになるから、「レーベル切り替え後一年以上経ってからの残余レーベル使用」なんてことが起きてしまうことも、無理なく説明できると思う。
(細々と、残余レーベルによる旧譜の追加プレスが続いていたというわけだ。)
さて、こういう明らかな残余レーベル使用とは違って、残余レーベル使用なのかそれともそれがオリジナルレーベルでいいのか判別が難しい場合もあったりするのだが、その話はまた別の機会に。
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