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Rickie Lee Jones, The Magazineのこと [TMLの仕事]

前回の記事からの流れで、今回はリッキー・リー・ジョーンズ(Rickie Lee Jones)のファースト・アルバムが取り上げられるに違いないと思っていた方も多いかもしれない。
(「そもそもブログの読者自体が多くないだろ!」というツッコミは無しね 笑)

実際、何年も前から掘ってはいるのだが、これがまた、一筋縄ではいかない部分があって、仮説の裏付けがなかなかできないんである。
ってことで、ファースト・アルバムについてはもうしばらく探求させていただくとして、今回はサード・アルバム"The Magaine"のことを取り上げよう。


20180807-1.jpg


前回の記事で紹介したように、この作品は1984年リリースなので、日本盤は従来のノートレーベルのままだが、USワーナー盤は新しい透かしレーベルに切り替わっている。


手持ちのUS盤(Warner Bros. Records ‎9 25177-1)のMatrixを見てみると、次のように刻印されている。

Side 1: 1-25117-A-SH3 @ B-19480-SH3 TML-M SLM △7358
Side 2: 1-25117-B-SH4 @ B-19681-SH4 TML-S SLM △7358-X

@(実際には筆記体の小文字のaを模した独自のロゴだが、ここでは@で代用する)とTML-M/TML-Sは機械刻印だが、それ以外はすべて手書きである。

TMLは、Doug Saxが設立したカリフォルニアにあるマスタリング・スタジオ、The Mastering Labにおけるマスタリングを示すもので、TML-MとTML-Sはカッティング・レースによる違いだ。
もっとも、このレコードの場合は、Doug Saxではなく、Ron Lutterがカッティングを行っている(インナースリーブに書いてある)。

1-25117がレコード番号だから、そのあとのB-19480(Side 1)とB-19481(Side 2)はマスター番号だろう。
SH3/SH4がMatrix末尾なので、Side 1が3番目に切られたラッカーでSide 2が4番目に切られたラッカーということになるが、この時期、まぁ、このぐらいは初回に切られたラッカーだと思う。

SLM △_ _ _ _/ SLM △_ _ _ _-Xは、Sheffield Lab Matrixでメッキ処理が行われたことを示すものだ。
Sheffield Lab Matrixの工場は、西海岸ではカリフォルニアに、東海岸ではペンシルベニアに存在していたが、このレコードは当然カリフォルニア工場で処理されたと思われる。

@は、カリフォルニアにあるプレス工場Allied Record Companyのロゴのことなので、Allied Record Companyでプレスされたものであることがわかる。

ワーナーはもともと西海岸の会社だし、Matrix末尾SH1でないところに多少の不満は残るものの、西海岸産の手持ち盤もオリジナル初回盤と判定して良さそうだ。


さて、次は日本盤(Warner Bros. Records P-13023)の話である。
というのも、このレコードの日本盤、輸入メタルを使ってプレスされているからである(まぁ、セカンドの"Pirates"からそうなんだけどね)。

カッティングについては???ということも多いが、プレス品質と盤の材質については、日本盤は世界に誇ることができるほど優れている。
つまり、輸入メタルの日本盤は、音質的には本国盤オリジナルを越えることもあるのだ。
80年代はとくにそうである。

では、この"The Magazine"はどうなのか?
Runout情報を読み取っていこう。

当然ながら、日本盤のレコード番号の刻印はある。
見慣れた機械刻印だ。


20180807-4.jpg


そして、輸入メタルであることを示す手書きの刻印がある。


20180807-5.jpg


少し見にくいかもしれないが、"1-25117-A-INTL SET 5"とある。
おそらくINTLは国外向けを示すもので、その5番目のカッティングということだろう。
実は、写真に撮り忘れたが、このほかに"JAP"とも刻まれている(ちなみにSide 2は"JAPAN")。

TML刻印も、もちろんある。


20180807-6.jpg


Side 1は、"TML-M"だ(ちなみにSide 2はTML-X)。

Matrix末尾が若干進んでいるものの、本国盤オリジナルを凌駕する音質への期待がムクムクと湧き上がってくる。

しかーし、実際に聴いてみると、残念ながら本国盤オリジナルは超えていない。
輸入メタル使用なんで日本盤も良い音ではあるのだが、やはり本国盤オリジナルに分があるのだ。

それは、もしかしたら、これのせいかもしれない。


20180807-3.jpg


そう、手持ちの本国盤オリジナルは透けるのである(笑)
(USオリジナルがすべて透けるのかは知らない。)

いや、でも、むしろ、帯にしっかり書いてある、こっちの理由のほうが大きいか。


20180807-8.jpg


そう、日本盤は、Side 2におさめられた組曲"Rorschachs"の"Theme For The Pope"が、フランス語のヴォーカル入りバージョンなのである。
US盤は、歌詞のない「ララ~ラララ~ラ~」というバージョンだ。

このせいで、US盤の歌詞付インナースリーブと日本盤の歌詞付インサートは少し違っている。


20180807-2.jpg


"Theme For The Pope"の歌詞がないぶん、US盤のインナースリーブのほうには、スナップショットなどが掲載されているのだ。

ってことで、日本盤はUS盤とはバージョン違いの曲が収録されているわけだが、問題はどっちが先に作られたかということだ。

Side 2のMatrixを見てみよう。


20180807-7.jpg


少し見にくいかもしれないが、"1-25117-B-RE1-INTL 6"となっている。
"RE1"が付いてるってことは、後から作ったのね・・・

そうそう、日本盤にももちろんSLM刻印があるのだが、US盤が△7358だったのに対して、日本盤は△7382である。
メッキ処理も、ちょっと後で行われたのね・・・

そんなわけで、"The Magazine"日本盤は、輸入メタルなれど「本国盤オリジナルを凌ぐ音質の日本盤」の仲間入りはできなかったのであった。

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